第四話 シスコンとか妹萌
何歳まで親と一緒にお風呂に入っていたか。
その質問に対して大概の人が、小学校まではと答えるだろう。しかし彼女の、皐月光璃の場合は少し変わる。
皐月光の時なら早々に一人で入りだした。反抗期にあたる男の子は親と入るのを嫌がったりする。
光はそこまで反抗期はなかったが、妹の明がいたために一人で入りだした。
しかし、光璃という女の子になってからは、母親と何度か強制的に入らされた。女性の体の洗い方講習として。
だからこそ、小学校から入らなくなったが中学校でまた入ったという、奇妙な状態になった。
そしていま光璃は頭を抱えてる。それはなぜか。
(新しくできた)双子の弟とお風呂に入らされそうになっているからである。
どうしてこうなったどうしてこうなったどうしてこうなったっ!
夕飯後の机で頭を抱える。その目の前には満面の笑みの明がいる。
「行かないの?」
「…………」
「お背中流しに来ましたぁ~って行かないの?」
「行かないよ!?」
慌てて顔を上げる。明は相変わらず憎たらしい笑顔をしている。
「え~、せっかくお兄ちゃんがお風呂入ってるのに突撃しないの?」
「しないよ!?」
そう。夕飯が終わった後明が光瑠を先にお風呂へ行かせたのだ。理由は明白。
「いくら兄弟だからってこの年でお風呂はないよ」
「えー、でも私お姉ちゃんとなら一緒に入れるよ?」
「男女の差ぁ~」
上げていた顔も、再度項垂れてしまう。
どうして、こうなのだろう。お母さんといい、明といい、柊お姉ちゃんといい、私をどうしたいのだろうか。
あぁ、女の子らしい女の子にしようとしてましたね。はい。
私としては、あまり気乗りがしないんだけどね。いくらちゃんとした女の子にはなったといえ、男だった時のことは覚えているわけで、でも男の人に体を見られるのはずかしいわけで、男の人が恋愛対象かと言われると違うような、でもでも……
「なんだ、悩み事か? 相談なら受け付けるぞ」
「いや、悩み事ってほ……ど……じゃ……、え?」
聞こえた声に後ろを振り向く。と、そこには上半身裸のイケメンが。
「にょわわゎゎゎゎぁぁぁぁあああああっっっっ!?!?!?!?!?!?……あいたっ!」
イスから転げ落ちた時に机の縁で頭を打ちました。とても痛い。
「にょわわああ……って、ぷぷっ、何その声?」
「………………っっっっ、くくっ」
うぐっ、嫌なとこを見られた。というか、
「うるさいっ、明! そして、光瑠もいつまで笑ってんだぁっ!」
確かに、私も笑うかもだけどさぁ。でも、ちょっとひどいよ。思わず言葉遣い荒くなっちゃったじゃん。
「ごめんごめん。風呂出たから言いに来ただけだから」
そう言うと光瑠は手に持っていたシャツを着始めた。
「う~~、もうお風呂行ってくるっ!」
私は、勢いよく立ち上がり部屋を出る。
さっさとお風呂入って寝なきゃね? もうすぐ高校も始まるし、朝早く起きられるようにしておかなきゃね?
え? 違うよ? 逃げたんじゃないよ? ホントだよ?
◇◆◇◆
ガチャン、という生易しくはない音で扉が閉まると、思わずふっと、息を吐いた。
「なになに、お兄ちゃん。どうしたの?溜め息なんかついちゃって」
明が、机から身を乗り出して訊いてくる。
「いや、なんと言うか……明以外の女の子がいる状況に馴れなくてな。」
「さっきは、口説いてたくせに」
「くっ、口説く!? どこがだよ!?」
なんてこと言い出すんだ、この妹は。
というか、双子の妹を口説く兄がどこにいる?普通はいない。いや、普通じゃなくてもいないと思うんだが。
そもそも、シスコンとか妹萌なんてものは、実際に妹がいないやつが言い出したもので、そういうやつと物語の中でしかいない。
さらに言えば、俺の場合はもとは同一人物だ。それでそういう感情を抱くとか、ナルシストかっての
。いや、今はもう別人として確立しているが。
「いやいや~、女の子が悩んでいることに気付いて尚且つ、相談に乗るよ?ってもう! どうしたの? お兄ちゃん、しばらく見ないうちにかっこよくなっちゃってさ」
くねくね体をくねらせるな。妹の行動だと思うと余計に気持ち悪い。
「なによその目は」
「別に」
この妹いつの間にか鋭くなっていらっしゃる。誰に似たんだ?
「別にいいけどね~」
言いながら明は椅子から立ち上がった。
「? どこに行くんだ?」
「お風呂~。お姉ちゃんもうすぐ出る頃だし」
あれ? そんなに早く出たっけかな? と時計を見上げた。
あらま、意外と時間たってましたよ。びっくりだな。というか、
扉の前の明を見てみる。
ちゃんと見ていたのか。時間とか。
ドヤ顔が腹立つが、母さん似のこれについては無視を決め込む。
「じゃ~ね~、お兄ちゃん。早く寝ないとだめだよ?」
扉を閉めた後、再度ドアを開けた。
なんだ、忘れ物か?
「お風呂上がりのお姉ちゃんにヘンなことしちゃ、ダメだよ?」
「するかっ!!」
危うく息を詰まらせかけた。
が、変な誤解を生む前にさっさと部屋に上がるか。
新品の歯ブラシを使用済みにして、居間を出ようとノブに手w……
ガチャ。
目の前にバスタオル姿の女の子、もといもう一人の自分である光璃がいた。
湯上りの蒸気してほのかに赤く染まった頬、雫は垂れないものの水気を帯びた艶のある髪。タオルに隠されてはいるが、小さくともはっきりとその存在を主張する二つのふくらみ。男のそれとは違うすらりと伸びた細い腕と足。太もも。
え? あれ? パジャマはどこに持ってんだ?
俺はそんなことなんかを思っていた。
てか、部屋一緒じゃんっ。




