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6月12日



6月の初めごろに、その予兆はあったんです。その時点で私たちは判断をして、優人を休ませるべきでした。でもそれをしなかった、だから、幼稚園で風邪が本格的にはやり始めると、優人も風邪をうつされたんです。

 病気の影響があったのかどうかはわかりません。病気のせいで少しずつ体力が減っていて、そのせいでうつされたのかもしれないし、全く関係ないかもしれません。まあ、それはわからないです。


 一週間で風邪は治りました。でも、お医者さんとも相談して、もう、幼稚園にはいかないことになりました。


 優人は普通に朝食を食べています。



 優人が「ロケットパーーーンチ!」と言いながらバスに乗り込んで振り返り、ドアの閉まり際の隙間から見える笑顔のこの記憶が更新されることは、一生、ありません。

 優人は幼稚園に行きたがっていたと思います。りっくんにも会いたがっていたと思います。でも、優人に、もう幼稚園にはいかないことになったと伝えたとき、

「ふーん」

 と言っただけで「なんでなんで」と聞いてきたりはしませんでした。私たち夫婦は、正直、「助かった」という思いでした。

 自分だけが、もう幼稚園には行かないんだということを、優人がちゃんと理解しているのかはわかりません。


 私は2人より少し遅れて椅子に座ります。


  お椀の中、静かなみそ汁のみそは、そっと置かれた塊のように浮いていて、何かの形を作りたいような、意思があるような、でもそれはあまりにも頼りなく、ワカメをつまんだだけで揺れ動き、そして大崩壊。


「ふう……」


 私の心がため息をつく。私は私の心を、何に重ねているんだろう。自分で少し呆れます。


 これからはずっと優人と一緒です。お昼ご飯も優人と一緒です。うれしくはありません。うれしいわけありません。ただ、冷たい幸せを、全力で抱きしめて、温めていきたいです。


 優人の笑顔を一秒でも増やしたい。そのために私が邪魔なのであれば、私はいりません。




 優人は鮭が好きで、おいしそうに食べています。

 夫は皮まで食べます。


 私は味のりが好き。





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