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5月19日



「大丈夫。………………………、ロボギガマンが守ってくれる」




 今度、死んじゃう子の母です。



 あの子は何も知りません。

 息子にはその事を隠していますから。


 お医者さんは「あと1年」と言いました…。それが3ヶ月前。今が5月で、9ヶ月後には……。


「ママ嫌ーーい!」


 息子の優人です。

「もう、なんでそんなこと言うの?」

「だってママは、うるさいし、間違えて買ってくるし、すぐ怒るし…最近はあまり怒らないけど…、ごはん失敗してべちょべちょになるし、すぐ泣くし、データ消しちゃうし、スキップ気持ち悪いし、野球を空振りするし、もっといっぱい。全部ダメだから。だから嫌い!!」

 カーペットの端をめくって、体に巻き付けるというふざけた体勢で言われました。

 昨日、優人が花瓶を倒して濡らしたカーペットです。わざと倒したような気もしました。だから、怒った方がいいのかもしれませんが、「大丈夫?花瓶割れたら危ないから気をつけてね」と言って、結局怒りませんでした。

 テレビの音量も30で大きいのに45にしていました。それも怒らなかった。

「反抗期なのかな?……」

 怒らなきゃいけないんです。あの子の将来のために………将来の。


「わーい!わーい!ママのウンコマーーン!わーい!」

「そんなこと言っちゃダメでしょ。優人」

 少し怒ってみます。

「あはははははっ!やったー!僕もお母さん嫌いだよー!嫌い嫌い嫌い!大嫌いー!わーい!」


◇◆◇


 その日の夜。


「うう……私はどうしたらいいの…」

 私は夫に泣きついている。

「紗良……」

 夫は泣いている私を優しく抱きしめてくれる。

「私は優人と一緒にいたいのに、……嫌われちゃった」

「甘えてるだけだよ、本気じゃないって」

 夫はそう言ってくれます。私もそうだと信じたいです。でも、きっと私の中に優人が「嫌い」と言いたくなる何かがあるんだと思います。絶対に理由があるはずです。

 やっぱり私のせいです。


「仮にもう二度と会えなくても、それでも優人には生きていてほしい」

 そう思います。

「うん、俺もそんな変な妄想するよ。全然意味のないことだけどね。分かるよ」

「神様どうか私達を…優人を助けてください」

「うん。そうだね、神様がいるならきっと、優人を助けてくれるだろう。でも俺たちは俺たちでやれることをやらなきゃね」

 優人は夫のとなりでもう寝ている。大きな声を出したら起きてしまうかも。

「やっぱり、優人に本当のこといわなきゃいけないのかな?」

「う…うん……でも………」

 夫にも迷いがあるようです。

 わかっているんです。夫もそうだけど、それ以上に私が現実を受け止め切れていないから……私はいまだに狼狽している。冷静でいられない。そんな状態ではとても息子の心を支えることはできない。……私のせいなんだ。私が弱いから……。

「やめよう…自分たちを責めるのは…」

 優人に聞かれてはいけない。枕に顔をうずめる。泣かずにはいられない気持ちとその声を枕が包み込んでくれる。

 優しく柔らかく…。

「君は頑張ってるよ」

「うううう……」

 夫にすがりつく…。

 こんなんじゃダメなんだ。


 ダブルとシングルのベッドを連結させて3人で寝ている。夫が真ん中で私と優人は離れている。


 シングルベッドは将来、子供部屋に置く予定でした。家具屋の階段を上り、並べられたベッドを見下ろしながら、頭の中に未来を描いて買ったんです。


 そんな思い出にさえ潰されそうになる。


 ダメダメなママでごめんね。優人。





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