e-2. 気が緩んだ俺は、超越者達の提案を受け入れて力を授かってしまう
魔王城の正門を出るとすぐに聖戦監視官がやってきて「魔王討伐、お見事!」的なことを言ってきた。彼らが俺たちの前に姿を現すのは初めてだ。
馬に乗っていた。
魔族領に到達するまでに、俺たちと同様に氷の大河(海かもしれねえ)を超えているはずだから、何かしらの能力持ちの馬だろう。その馬に俺たちも乗せてくれよ……。いや、誰も乗馬経験がないけどさ。
なにはともあれ、俺の計画どおり、彼らは何かしらの魔法で戦闘を観測していたようだ。疑っている様子はまったくない。
魔王討伐偽装作戦、成功だ。良かった……。
監視官は王都アレンドガルドに魔法で連絡を送ったそうだ。これで、俺たちは国に戻れば、アルバハレル王国とラルム教会とリュテ教会から報奨金がもらえる。名誉と何かしらの称号ももらえるが、それは別にいい。
とにかく金だ。
関わった女たちの結婚資金にするにはじゅうぶんだ。
妹や仲間たちをいいところに嫁がせて、俺は母さんとふたりで暮らす。
聖戦監視官は、この地に残り魔王城の調査をするようだ。
厚かましくもメイが「食べ物がなくなりました。余ってたらください!」と頼み、相手もそんなに余裕はなさそうだが、革袋一杯分のパンや野菜や肉をもらった。
いや、ぜったい、偉業を成し遂げた聖女のために無理して食料を提供してくれただろ。あいつら、帰りどうすんだよ……。
俺たちは荒れ地を進み、魔王領の途中で野営することとなる。
往路で聖女パーティーが野営した跡地に、ちょっとした竈が残してあった。
魔王討伐記念ということで、後先考えずに、さっそくもらった食料を食べきる。あとはもう、レストに頼んで狩りをしてもらうしかない。ケルリルにこっそり頼ろう。
さて、就寝。
旅をほぼ終え、俺は警戒心が薄れていた。
レストがいるからモンスターの接近には気づけるし、ルーエルがいるから並大抵の危機は乗りこえられる。だから、俺は完全に油断し、普通に寝てしまった。
女たちにケルリルを布団代わりにして貸しだし、俺はたき火の近くでマントに包まって寝ている。
ゴソゴソ……。
なんだ?
凄く近くで物音が聞こえる。
誰だよ。寝相が悪いやつ……。
ん?
「はあはあ……」
なんだ?
誰かの吐息がやけに近くから聞こえる。
……メイ?
まったく……。
疲れているから追い払うのが面倒だし、今日くらいは一緒に寝てやるか。
抱き枕にすれば、俺も温かいからな。
ん?
なんか、俺の腰の辺りを触ってくる。というか、まさぐってくる。
良い感じの抱き枕ポジションを探っているのか?
「アレル様……。もう、我慢できません。聖戦は終わったから、聖女の力は、もう要りません……」
ソフィア?
俺はまぶたを開ける。
眠気ではっきりしない視界にソフィアが映る。
全裸のソフィアが俺の腰にまたがっている。
「な、何を」
焦った。一瞬、挿入ってるかと思ったが、またがれているだけだ。
ソフィアは両手で、俺の胸を撫でてくる。
明らかに、俺の体に準備をさせるための動作だ。
「おい、やめろ!」
「約束しました。魔王を倒したら、愛してくださると。私をもらってくれると」
「してないが?!」
ガッ!
俺は起き上がろうとするが、両肩を何かに押さえつけられる。
ソフィアのスキル『空気人形』だ。
「お兄ちゃん、どうしたの……?」
メイが起きた!
「メイ! ソフィアをなんとかしてくれ! 魔王討伐の開放感から、冷静さを失っている!」
「あっ! ソフィアさん、駄目! お兄ちゃんの童貞は私がもらうの!」
「何言ってんだ、テメエ!」
メイがソフィアに飛びついた。
「は、放してください! 兄妹同士で性行為するなんて許されませんわ! アレル様を愛するのは私です!」
「やだ! 私がお兄ちゃんのお嫁さんになるの!」
「駄目です! アレル様は私の胸で愛して骨抜きにするんです!」
「私の胸だってすぐに大きくなるもん!」
メイがソフィアを俺の上から引っぺがした。
入れ替わるように、どこからともなくするっとサリナがやってきた。
ガシッ!
いきなり男性器をつかまれた!
「時間、かかった。私、無知だった……。でも、旅を通じて、メイとソフィアの言動から、スること、知った。だから、シよ」
「や、やめろ!」
サリナの言葉に嘘はなかった。
不覚ながら俺は、同年代の異性の柔らかな指に握られることにより、そういう行為をする準備を整えられてしまった。
サリナがローブをたくし上げる。寒い地域に来る前に服を買ったはずなのに、ローブの下は全裸だった。
「あっ! サリナちゃん駄目!」
「隙ありですわ!」
「きゃっ!」
「あっ!」
サリナの体が宙に浮きあがる。隣には同じようにしてメイが浮いている。
「放して!」
「うふふっ。私の勝ちですわ。メイさんのスキルは戦闘向きではない。サリナさんは魔力が枯渇している。アレル様は巨乳が好き」
「おい! 冷静になれ! やめろ! 強姦だぞ!」
ソフィアは俺の上にまたがり、俺の股間のものをつかむと、ゆっくりと腰を下ろす。
「うふふっ。アレル様。体は正直ですわ」
「やめろ! マジでやめろ!」
俺は必死に体を起こそうとするが、まったく動かない。これが聖女のスキルのパワー!
くそっ。どうしたらいい。
俺は肩を押さえつけられているが肘から先は動くので、なんとかして短槍をつかむ。
これを、ぶちこむか?
さすがに残酷か?
いや、だが、このままだと俺は強姦される。
ヤるしかないのか?
(力がほしいか?)
(我が名を呼べ……)
(人間よ。力を欲するか?)
(貴方の祈り。天に届きましたよ)
(我と契約せよ)
(貴様に力を授けよう)
(真の力に目覚めるのです。勇者よ……)
(お前ら! マジで最高のタイミングだな! 力をくれ!)
俺はうっかりしてた。
絶体絶命の状況で一刻を争うから、つい、超越者達の提案を受け入れてしまった。
しかし、こいつらは暇つぶしで俺をからかうような奴等だ。
こんな俺に都合のいいタイミングで声をかけてくるのだから、裏があって当然なのだが、窮地の俺には気づけない。
(うむ! 女全員と一晩中ヤれる力を授けよう!)
(ギャハハハッ! 聖女の力を奪い尽くせるよう、元気にしてやるぜ!)
(光陣営の拡大は喜ばしいことです。一発必中の力を授けましょう)
(あらあらうふふっ。女性を悦ばせる力を与えますね)
(ええい。情けない。ワシが若い頃は、力に頼らず、何人もの女を一晩中満足させたものじゃぞ)
(くくくっ。竜王のたぎる力を与えてやろう)
(ちっがうだろうが! スキルを無効化する力とか、押し返す腕力とか、そういうの寄越せって言ってんだ!)
(……)
(……)
(……)
(……)
(……)
(……)
(お前らなあっ!)
や。ヤバい。冗談じゃない。股間に何かがたぎってきた。
男としての本能的な生理現象なのか、ガチで力を与えられたのかは分からない。
だが、はっきりしていることがある。
必ず孕ませるオスの力が宿った。生物の男として求められる究極にして原始の力が宿ってしまった。




