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e-1. 聖女パーティーと合流して無事を喜びあう

 目が覚めた。多分、30分も寝てない。体力回復のための最小限の睡眠だった。


 ルーエルとレストが左右に寄り添っているから、両者の体温をもらいながら昼休憩続行だ。


 聖女パーティーも休憩や財宝探しをしている可能性があるから、俺はゆっくり過ごす。


「ルーエルはこれからどうするんだ?」


「もう魔王として担がれるつもりはない。力がないフリをして、先ずはお前と一緒に人間の暮らす土地に行く」


「ああ。人間のフリをするのか」


「うむ。それから、しばらくお前の家に厄介になる」


「……は?」


 いや、まあ、しばらくならいいか。

 妹が魔王を倒した報奨金をもらうか、聖女として凱旋して貴族と結婚でもして家を出て行くまで、しばらく時間が要るだろう。俺と母さんとのふたり暮らしが始まるまでしばらくかかるということだ。

 それまではルーエルを家に置いてもいいか。


 数ヶ月前にミイを連れ帰ったばかりだから、また少女を連れ帰ったら、変な誤解を与えてしまうかな。


「とりあえず人間は金が必要なんだろ? 冒険者とやらになってモンスターを倒して金を稼ぐ」


「ああ。それがいいと思う。金を稼いだらどうするんだ?」


「うむ。持参金にして、お前と結婚する」


「……は? なに言ってんだおまえ」


「む? 結婚するためには持参金が必要と言ったのはお前だろう。なに。安心しろ。この城の財宝はくれてやる。約束だからな。我の死を演出して自由をくれた。正当な対価として、この城と、この城にあるものはすべてお前の物だ。そこからは持参金を出さん。お前と結婚するための持参金は自分で稼ぐ」


「……は? なに言ってんだおまえ」


「我の自由の対価が城ひとつ。ならば、結婚とやらでアレルの一生をもらうなら、同じくらいの物がいるな。うむ。お前の国の軍隊を滅ぼして、城を制圧しよう」


「……やべえ。この価値観が誓いすぎる非常識魔王を野に放つわけにはいかないから、マジで俺が面倒を見る流れかよ……」


 不本意ながら、結婚はいったん置いておいて、しばらく行動を共にすることが決定した。


「いや、まあ、結婚はいったん置いておいて、とりあえずお前には色々教えるよ」


「うむ! 女としての悦びを教えてくれ!」


「先ず、超越者たちから聞いたことはすべて忘れろ……。どうせ、そういうこと言えって言われたんだろ」


「うむ。我の体型なら、今後困ったことがあったらアレルに抱きついて上目遣いでお願いすれば、どんな願いも叶うと聞いた」


「忘れろ。まさにそういうことを忘れろ……」


 今後について少し話しあった。


 それから俺たちは絵画の空間から外に出て、魔王城の外に投げ捨てた棍棒と荷袋をレストの嗅覚で探してもらって回収。


 そして再び魔王城に戻る。


 城内を歩いているとどこかから聖女パーティーの会話が聞こえてくる。


「ねー。財宝、どこー。見つからないー」


「ないのではないかしら。見たところ古いお城ですし、あまり生活感がありません。財宝に執着しない魔王だったのでは?」


「古文書とか、魔道書とか、ちょっと興味あった……。書庫、ない……」


 ふむ。

 やはり戦利品を探しているようだ。


 さ。合流するか。


「おーい。メイ。ソフィア。サリナ。無事か? 戦闘音が収まったし、魔王は倒したんだな?」


「お兄ちゃん? お兄ちゃーん!」


「ど、どどど、どうしましょう。私たち、アレル様をパーティーから追放しています」


「う、気まずい……」


「大丈夫だよ。お兄ちゃんは優しいもん。さりげなく手を握って、その手を引っ張って胸に触れさせて色仕掛けをしつつ、事情を説明すれば分かってくれるよ」


 なに言ってんだテメエ……。


「そういえば、アレル……。戦闘中に、よく、ソフィアの胸、見てた……」


 なに言ってんだテメエ……。


「ま、まあ。アレル様はわたくしの胸の欲情してくださっていたのね。嬉しい……」


 なに言ってんだテメエ……。


 戦闘中に仲間の状態を確認するのは当たり前のことだろ……!


 ルーエルが俺の手を握り、小声でささやく。


「ん? こうすると、分かってくれるのか?」


 ルーエルは俺の手を引き、平坦な胸を触らせた。


「……うっかりしてた。とりあえずお前に俺の服を着せるか。ちゃんと手はず通り、捕まっていた少女を演じろよ」


「うむ。囚われていた恐怖で、言葉数が少なくなった少女を演じきってみせる」


「頼んだぞ、マジで。余計なこと言うなよ」


「分かっておる。心配せずとも、対人経験が極端に少ない我は、会話が苦手だ」


「堂々と言うな……」


 俺はルーエルに着せるため、上着を脱ぐ。


 そのとき――。


 ズドドドドドドドドッ!


「お兄ちゃあああああっ、ぎゃああああああっ! なにしてんの!」


 メイが走ってきた。魔王戦のあとなのに体力、余ってるのか。


「お。無事だったか」


「全裸少女の前で、なんで脱ごうとしているの?!」


 ヒュンッ!


「危ねえっ!」


 フラッシュステップで一気に距離を詰めたメイが、棍棒のフルスイングをぶちかましてきた。


 俺は仰け反って避ける。


 目の前を過ぎた風圧から察するに、魔王に放った一撃と、同じ威力だが?!


 ソフィアとサリナもやってきた。


「変な誤解をするな。囚われていた少女を救助したんだ。魔王の他にも、四天王のひとりがこの城にいた。俺はこの子を救うために、魔族が隙を見せるのを待っていたから、お前達を手伝えなかった。悪かったな」


 俺は事情を説明しながら脱いだ服をルーエルに着せた。


「この子はルーエル。行く当てがないから連れて帰る」


 ルーエルは演技なのかガチで対人コミュニケーション能力に欠如しているのか、無言で俺の背後に隠れた。


「……その子が、捕まっていたということは分かった。助けたのも分かった。本物のお兄ちゃんなら私にキスして」


「……なに言ってんだテメエ」


「モンスターが化けた偽物じゃないって証明して! 本物のお兄ちゃんだったら唇の感触で分かる」


「俺の唇の感触を知らないんだから、分かるはずがないだろ」


「知ってるもん! 旅の間にお兄ちゃんがぐっすり眠ってるとき、いっぱいしたもん!」


「なに言ってんだテメエ! ぶちのめすぞ!」


 俺は怒鳴りながらも笑いがこみあげてくる。


「ふふっ。お前は本物だよ」


「え?」


「いや、マジで、色んな意味でお前は本物だよ。よくやったな。メイ。俺を偽物だと疑った警戒心は褒めてやるが、全力スイングをしたことは覚えておくからな」


「え?」


「ソフィアとサリナもお疲れ様。聖剣を触らせてくれ。偽物じゃないって手っ取り早く証明できるだろ。それか、サリナの魔力に余裕があるなら聖属性の魔法でもかけてくれ」


 サリナは首を左右に振った。魔力は尽きているっぽい。


「アレルは本物。人間は騙せても、レストの嗅覚はごまかせないはず」


「そうか。信じてくれて嬉しいよ。じゃあ、みんな。激闘後で疲れていると思うが、帰ろう。帰路の食料なんてほとんど残っていないだろ? この辺りは荒れ地だから、レストに頼んでも、狩りが成功するとは限らない」


「でしたら、アレル様」


 ――とソフィアが言うから、俺は少し期待した。

 一流の狩人なら、俺が認識できていないような獲物を見つけて、想像もできないような方法で狩るのかもしれない。


 しかし――。


「聖戦監視官をぶちのめして、食料を奪いましょう」


 ――と体の前で両方の肘をくっつけ、胸を強調するような仕草でかわいらしく言った。


「ははっ。それいいな」


「魔王より楽ですわ」


 ソフィアは胸の下で腕を組み、大きな膨らみを持ちあげ、俺の方に意味ありげな視線をなんども送ってくる。


 サリナはソフィアに顔を向け、その大きな胸を邪悪な眼差しで見つめる。


「私も頑張る。胸、ないけど、私も頑張る。聖戦監視官、倒す……」


「ははっ。みんな冗談を言える元気があって良かったよ。……冗談だよな?」


「ふふっ」


「あははっ」


「くすっ……」


 なにはともあれ、ルーエルは堂々と聖女パーティーの帰路に合流できた。

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