タルミ国
ナセリーたちは王宮近くのモンスターと対峙していた。
モンスターは次々と現れ、まるで蟻地獄に入ってしまったかのように…
アンデッドがエディを引っ掻く寸前で浄化魔法
デビルラビットがナセリー目掛けて飛びつく前に毒死
キラバード共がペナロンに一斉攻撃してくる瞬間に炎柱で一斉攻撃
3人はお互い背中を任せている。
「キリがないです!」
毒沼(闇魔法)でデビルラビットを相手しているペナロンは既に疲れ切っている。
「いったい、何回倒さないといけないのよ!」
浄化魔法を駆除しているナセリーは半ばヤケクソになって攻撃している。
「ペナロン!身体強化と足の痛み止めを!」
炎柱で範囲攻撃をしていたエディは、先ほどの戦闘で足を痛めていた。
「痛み止め…ですか?」
ペナロンは指示どおりに支援魔法を使った。
その間、ナセリーは浄化魔法でペナロンを囲い、アンデッドから身を守るバリアを貼った。
痛み止めと身体強化がエディに付与され、ズキズキしていた足の痛みは消え、さっきまでとは比べ物にならないくらい大胆に動けるようになった。
「ちょっと急ぐぞ!」
真っ赤な炎は辺りを一掃し、人が進められるほどにはなった。
エディは正面に炎柱の道を創り、2人の腕を掴んで王宮に侵入した。
2人が舌を噛みそうになるほどのスピードで走り去るエディは、獣人並みの動きをしていた。
「ところでペナロン、なんで闇魔法が使えるんだ?」
「えーっと、魔力の流れを逆回転させると使えますよ?」
エディは少々困った顔になった。
「いや…使い方じゃなくて…」
闇魔法なんて普通、人間が使えるものではない。
そして元勇者にとって、闇魔法=魔族でもある。
とりあえず強い魔力反応のある倉庫を見つけ、勢いよく扉を壊したエディ。
そこには、何かを探している俺…マイクとエワがいた。
エディ達に気がついたエワは、こう言った。
「転移魔法陣を探して!」
俺は転移魔法なら、この人間弱体化水晶をどこか遠くへ捨てることができると考えていた。
だが、やはり説明は必要である。3人はキョトンとして動かなかった。
「モンスター退治とかではなく?」
「この水晶は明日の夜9時には作動する!作動すれば、人間は魔力の出力が半減する!人間には壊せないからどこかに転移させないと!」
俺は鑑定魔法の結果通りに説明した。
エワは「なんでそんなに詳しいの?」と言いたげな顔をしているが、今はどうでもいい。
「夜9時…ブラッドのヤツ…!」
エワがブラッドに拷問したときに聞いた「決行は明日の夜9時」
これは、魔族襲撃のことではなく、水晶のタイムリミットのことであった。
エディは水晶を観察している。
「これは…マズイな… 戦力が集中している王都全体が範囲だぞこれ!」
「えええ!!」
ここ、クランチ国は幸い海に面している。だから最悪海に捨ててしまえばいい。そう考えていた…。
その上、この水晶の効果範囲が思った以上に広い…。
何かを考えた末、エディはその場で魔法陣を書き込む。
「俺がなんとかするから外に出ろ!」
「ええ?で、も…」
「いいから!外のモンスターを倒すのが先だろ?!」
「ええ!ちょっ」
エディは動こうとしない俺たちを魔力糸で拘束&倉庫の外に放り出してから拘束解除した。
「任せろ!絶対なんとかすっから!」
俺たちはエディの言われるがままに倉庫を後にした。
普段見ない今の威圧的な表情は、若干の勇者らしさを感じた。
確かに元勇者なら水晶をなんとかできるかもしれない。
「わかった!時間稼ぎしてみる!」
外からモンスターの鳴き声がするが、廊下はシーンとしている…が、その鳴き声は次第に大きくなっていく。
「まさかこれって」
ペナロンは反射的に防御魔法を使った。
「嫌な予感…」
エワは槍を用意し、メガネを外す。
そしてエワの不安は的中、鳴き声は猛獣の足音にかき消され、廊下に響き渡る。
そして、モンスター共は俺たちのところに辿り着いた。
「もう選択肢はないわね…いくわよ!」
ナセリーは光魔法でモンスターを焼き払う…が、次から次へとモンスターが現れる。
おそらくコイツらは入り口にいたモンスターの群れで、突撃していくうちに巨大化したのだろう。
俺たちは見たことないようなモンスターの数を相手にすることになった…。
ペナロンは疲れてロクに攻撃ができない。
エワは魔石付の指輪で攻撃するも魔力と指輪はどんどん消耗する。
俺は範囲攻撃がまだ未熟で大きな魔法を使うとなると時間がかかる。
エディがいない今、主な戦力はナセリーとなった。
そんな苦戦を強いられ、俺たちは数十分…いや、小一時間程度戦い続けた。
戦いを終えて汗だくになった今、ようやく落ち着いて座れるようになった。
「もう…ダメ…」
「ナセリーさんの魔力量が多くて助かりました…」
ペナロンはポーションをぶっかけ、傷と魔力を回復した。
そして全員分のポーションを手渡す。
「その…手作りですけど…」
「ありがとう 助かった」
ポーションを使ったエワはすぐ立ち上がって槍を構えた。何かに気がついたようだ。
「エワ?」
俺は「どうした?」と言おうとしたが、すぐさま異変に気がついた。
廊下には謎の飛行するモンスターがいるが、確かに不思議な魔力をしている。
「…ここだ!」
なんとエワが水と氷の合成魔法を付与した槍でその実体を捕らえることに成功した。そのままの意味で。
ポーションを飲みほした俺たちがそばへ駆け寄ると、ソイツは氷漬けにされて動けなくなっていた。
だが、この魔力はモンスターというより…
確証を得るため鑑定魔法を使う。
「あ…ちょ!」
俺が止めようとするも遅く、エワは炎でソイツを追撃した。
「あーーーーペナロン?ちょっとソイツに回復魔法をかけてやってくれるか?友達なんだ…」
「え?」
「早く!」
ソイツの正体は、ククリであった。
エワはすぐ氷を溶かし、「ごめんね」と言いながら撫でた。
そして、鑑定魔法を発動した俺の目は、解除を忘れてナセリーを見てしまった…。
『繝翫そ繝ェ繝シ:400蟷エ蜑阪↓鬲皮視繧貞?縺励◆蛻昴?螂ウ蜍??縺ョ蟋ソ繧偵@縺溷・ウ逾槭い繝槭ユ繝ゥ繧ケ』
紹介文は愚か、ページを捲るとステータス表示まで文字化けしている。
「読めない文字を無理やり翻訳するから文字化けするのですよマイクさん?」
気がつくと、あのモフモフの可愛らしいビジュアルに毛が一部焼け焦げた、なんとも悲惨な姿になったククリが目の前にいた。
「く、ククリ?!」
ナセリーはマイクと話すククリを不思議そうに見ている。
「その子どうしたのよ?」
回復魔法を終えたペナロンも近づいてくる。
「モンスターではないのですか?!」
俺とククリの正体を知っているエワは苦笑いするしかなった。
「あはは…えっと?」
「この子はククリ 見た目に反してニャン?ワン? 言わないけど可愛いだろ?」
「猫です。」
ククリは即答した。
「ところで、こんなことしているは暇ありますか?」
「「あ…」」
そのとき、モンスターが窓をぶち破って城内に攻めてきた。
俺が剣を抜く前にエワは無言で風を発生させ、モンスターを一掃した。
はめていた最後の指輪にヒビが入る。
「…ククリ、ここに来た目的があるんじゃない?」
振り向いてククリに尋ねるエワ。
「そうでした!ゔうん!ボクは天界の妖精です」
「天界?!妖精?!」
ペナロンは当たり前だが、驚いている。
「最後まで話を聞いてください 天界の者は人類に直接手出しできませんが告げ口はできます クランチ国は明日には魔王軍と戦争になりますが、一つだけ戦争を回避する方法があります」
俺達は息を呑んだ。
「今すぐタルミの魔王を倒すことです」
…
俺達は目を合わせた。
魔王の強さは知らないが、生きて帰れる保証はない。
タルミは魔族の国である。
以前エディが倒したベルロンの北にある国だ。
ククリは続ける
「タルミとベルロンは同盟国です 指揮はタルミの魔王が執っています 転移魔法ならボクにお任せを!」
もちろん誰もそれに乗らない。
1人を除いて…
そして、ここから先はさらに過酷な道になることを誰も知らなかった…




