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特別な生活を求めて異世界へ!  作者: 森村渉
王宮襲撃編
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48/50

エメラルド

エメラルドが到着したのは…倉庫である。

俺も遅れて到着する。


国宝級の剣やペンダント、宝石などが並んでいる中、一つだけ禍々しいオーラを放つ水晶が目立っている。


「なにこれ…」

「人間弱体化の魔導具だ…まだ起動してないが、解除方法が不明でな… 破壊しようとすると逆に魔力を吸い取られるから厄介だ」

「なんでそんなものが!?」

エメラルドは手を握りしめ、プルプルと震えている。

「魔族のせいだ…」


俺は水晶を鑑定する。

『名称:デバフ結界水晶 人間が出せる魔力の出力を半減させる効果 人間には解除不可な設計 明日の9時に発動する。』

「こ…これは…」

俺はすぐさま人間には対処不可能なこと、タイマーで作動することをエメラルドに伝えようとする。


その時、突然…

「私たちに恨みが?」


背後から若い女の声が聞こえてきた。気配はなく、足音もしなかった。


「だ、誰だ?」


振り返ると、そこにはオーガが立っていた。

長い髪で目は珍しいマーブル模様、美人とは裏腹に金髪からツノが飛び出ている。

名は…クレアである。


俺は剣を構えるが、クレアの拳で遠距離から剣を弾かれた。

正確には拳の延長線なら射程範囲が無限である独法で弾いたのだが。


「この魔石を起動させるつもりか?」

「私は… 正義を執行しに来た…」

クレアは俺めがけて右手をかざしては空気の弾を発射する。

右に、右上に、左にと必死に飛び回るが、流石に空中で回避することはできなくて手は俺の直線上へ。


「しまっ…」


そして、発射する直前でエメラルドが槍を持って特攻する。が、クレアは左手をかざす。

左手から空気の弾が発射、エメラルドは頭から壁に突撃する。

「うう…」

体を動かそうとするも痛みで歩くこともままならない。


「ふふ…強く頭を打ったようだね!魔法の噴出点が一つだけとは限らない! 次は…少年、お前だ」


『ドン!』

空気の弾は俺の足、続けて腕、次は腹に命中。

「う、う、ゔ!」

そして…最後は頭をロックオン。


空気の弾なのに今にも血が飛び出てきそうなくらい痛い。歩こうとするも、足が痛くて今にも転んでしまいそうになる。


俺は痛いのがイヤだ。怪我をすると治るまでが大変だし、何よりも生活に支障が出るからだ。もちろん痛みが好きな人間はそうそういない。

だが、転生するきっかけになった交通事故。あれは即死。もしかすると、死ぬ前に骨折や打撲、病気で苦しむよりラッキーだったのかもしれない。


だからと言って、また死ぬのもイヤだが…


「や…やめ…」


空気の弾が発射されるそのとき、俺は幻覚を見た。転生直前の母との会話、ノーテル学校での楽しい日々、日本で出会ったエスピトラ、それから…エワのライブ。

「これは…走馬灯…?」


俺の目には幻覚であるはずのエワのライブが映っている。それが…エメラルドと重なる。


「え…?」


「ーーーー♪」


「なんだ、のんきに歌なんか歌って。状況分かってるの?」

クレアは振り返る。

そして、クレアに突然の異変が…。魔力が削り取られていく感覚を覚える。

「…なんだこれは…う…」

クレアはその場にしゃがみ込む。


「君は…」

俺はエメラルドをただ見つめている。


エメラルドは腰に装備していたポーションをぶっかけ、立ち上がる。

エメラルドの歌は止まらない。


俺は全て理解した。なぜ、爪がボロボロなのか。なぜ、ライブをすっぽかしたのか…。

答えは、この曲にあることを…。


「ーーー♪」

曲が終わるとクレアは気絶。


そして、遅れて兵士が到着する。

「おお…これは… お怪我はありませんか?」

「大丈夫です!それより、このオーガを早く連行してください!」

「そ、そうでした!では、失礼します!」

兵士はクレアをロープで拘束、担いで連れて行った。


エメラルドは俺にポーションをぶっかけた。

「あ、ありがと…えっと…頭大丈夫?」

「ええ…だって…これだもん…」

エメラルドは緑のウィッグを外し、キレイな青い髪を見せる。

「中の髪が丁度いいクッションになったというこ…と…」

エメラルドの表情は一変。水晶の方向へ振り向く。

すぐさま水晶を氷漬けにするが、やはり魔力を吸い取られる。

「魔族特効の歌は効かないし、魔法でも対処不可能…やっぱり無理なのか…それとも私が力不足なのか…このままでは…」

エメラルドは絶望。自身の手を見ながら実力不足を実感する。


「…あの…エメ…。これは人間には破壊不可能だよ…。それに…明日の9時に発動するって…」


恐る恐る鑑定結果を報告する。

エメラルドは無言でこちらを見つめる。

「で、でも、明日の9時までにこれを別の場所に運ぶとか、もしくは魔族の襲撃を完全に収束させるとか…まだ方法はあるはずだよ…。」


「私たちだけで??無理だよ!!」

「無理じゃない!なんで決めつけてるの!?効果はよくわからないけど、エメの歌は魔族に強いんだろ!?それに、エディたちも協力すれば希望が生まれる可能性がある!」

「で、でも…」


エメラルドはハッとし、突如前世のことを思いだす。


まだファンが少なかったとき、友達から言われた言葉…『なんで売れないって決め付けてるのー?私から言える立場じゃないけど人生これからなんだし、希望持ってよ!』


その言葉が俺の言葉と重なる。

「そうだね… 君の言う通り、私の歌は魔族に強いし、『破壊』ができないだけだね…。」


「うん!エメ、よろしく!」

俺はちょっと安心感を覚えた。


「それで… もう気づいてるでしょ?とぼけても無駄だぞ…?」


「うん…!エワ…!!」



俺は今日1の笑顔でそう応えた。


ようやくここで俺の中のエワとエメラルドが一致し、信頼感が増した…そんな気がした。

一応説明

エメラルド…エワは魔族に対抗するために徹夜で魔族特効の曲をギターで作成。爪がボロボロになったのはこれのせいである。急きょ魔族を探るべく学校に潜入するべく準備も必要だったためライブは中止へ。

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