模索
「…ッ、痛て…」
俺は痛みとともに目を覚ます。辺りを見回すと、そこは知らないベッドの上だった。ベッドから体を起こそうとすると、横からそれを慌てて止める声が聞こえる。
「ま、まだ寝てた方がいいですよ!」
声の方を向くと、慌てた表情のルシアが包帯を持ってこちらに向かってきていた。
「ほ、包帯変えますから、早く横になってください!傷口が広がっちゃいますよ!」
「わ、わかりました…!」
俺は言われたとおり横になり、ルシアに包帯を巻き直してもらった。俺の体は想像よりボロボロだったようで、当てられていたガーゼには、まだかなりの血液が付着していた。ルシアは慣れた動きで淡々と包帯を変えていたが、突然手を止めて視線を落とす。
「ヒロキさん…ごめんなさい。私のせいで…」
「え、別に謝らなくても…」
「でも、こんな大怪我させて…、…こんな事になるなんて…本当にごめんなさい…」
ルシアは傷口に巻いていた包帯を強く握った。ルシアは自分が死ぬことで、ダインや子供達を救おうとしていた。きっとこの結果に後悔しているのだろう。
「エイラも、ヒロキさんも…ダインも…何とかしようとしてくれてるのは分かってるんです…!でも、やっぱり私は…死ぬしかないって…そう思うんです…」
「ルシアさん…」
そうルシアは寂しげに語った。今俺達やダインはルシアのためを思い、ルシアが死ぬ必要のない方法を探っている。しかしルシアからすれば、それすらも皆に迷惑をかけていると感じているのかもしれない。
「…ごめんなさい、こんな話しちゃって…。包帯は巻き終わったので、ゆっくり休んでくださいね」
「あ…」
呼び止めようとしたが、俺はかける言葉もなくただルシアの背中を見送ってしまった。未だ解決策が浮かばない俺は、ベッドの上で頭を抱えた。
(なにか…方法を見つけないと…)
ルシアを救う方法を模索していると、部屋の入口からダインが入ってきた。暗い表情のまま軽く手を上げると、俺に挨拶をする。
「…よう、体はどうだ?」
「あ、ああ…まだ痛むけど、大丈夫だよ」
「そうか…。その、ありがとな。ルシアを止めてくれて」
ダインは俺に礼を伝えるとベッドに近づき、側に置かれていた丸椅子に座った。
「にしても随分派手にやられたな。でも…何で反撃しなかったんだ?反撃すれば怪我せずに済んだろ」
「反撃って…できるわけないだろ、ルシアさんは優しくていい人だからな。そんな人殴れないよ」
俺が笑顔でそう言うと、ダインは呆気にとられたように口を開けた。そして俺のことを鼻で笑うと、ゆっくりと席を立った。
「そうか」
「おう!」
ダインは軽く微笑みながら俺を見ると、再度俺に礼を言った。そしてドアに向かい、部屋をあとにした。それから暫くして、俺はポーチから蒼い石を取り出した。
「…さて」
蒼い石を起動し、俺はあの何も無い空間に移動した。するとそこには、下がり眉で俺を見つめるゼウスの姿があった。
「ん?…なんだよ?」
「別に?毎回ボロボロになって帰ってくるな、と思って」
「う…、今回は仕方なかったんだよ!やり返すわけにはいかないし…!」
「ふふ…わかってるわよ。からかっただけ」
ゼウスはそう言って微笑むと、姿勢を正して俺を見つめ直した。
「…それで、何か用?まあなんとなく分かるけど」
「いや…ちょっと相談があってさ」
「やっぱりあの教会のことね。ま…別に深く考えなくていいんじゃない?」
「え?」
明確な返答を貰えずそう聞き返すと、ゼウスは自分の胸に手を当てた。
「あの子は心に悪魔という闇を抱えてる。それを晴らすのはアンタの得意分野でしょ」
「そ、そうかな…」
「ええ、アンタならきっと大丈夫よ」
ゼウスは微笑みながらそう言った。その一言に俺はなんとなく安心し、ゼウスに礼を言って何も無い空間を後にした。




