本当の『希望』
ゼウスと話を終えた俺は、協会のベッドに戻っていた。
「…とりあえず皆と会って…何か方法を…」
そう思い体を起こそうとしたとき、傷が少し痛み俺は動きが鈍ってしまった。そしてそれと同時に、包帯を巻いてくれたルシアの顔が頭に浮かんだ。
(歩き回ってるの見られたら、心配させそうだな…)
ルシアは今精神的に不安定だ。無理に俺から行くよりも、エイラやレムに探りを入れてもらう方が得策だろう。そう考えていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。返事をするとドアが開き、エイラとレムが入ってきた。
「ボロボロだな…」
「ヒロキさん!起きたんですね!」
「エイラ、レム、丁度いいところに。ルシアさんの事なんだけど…」
俺がそう切り出すと、エイラはすこし表情を曇らせて俺を見つめた。
「…?どうした?」
「いえ…ヒロキさんらしいなと思って。自分だってボロボロなのに…」
そう言われて俺は自分の体を見直した。確かに今の俺は傷だらけでボロボロだ。でもルシアが負っている傷は体では無く、心の傷だ。その深さは計り知れないだろう。
「…俺なんかより、絶対にルシアさんの方が…。あんなこと、本気でやろうとするなんて…」
俺が俯いてそう言うと、エイラは少し屈んだ姿勢を取った。そしてベッドに座る俺に俺に目線を合わせると、眩しい程の笑顔を見せた。
「わかりました!ルシアの事はひとまず私達に任せてください!」
「お、おう…!」
エイラの笑顔に安心した俺は、同じように笑顔で返事をした。するとエイラは大きく頷き、立ち上がるとドアの方へと向かった。
「じゃあ、ヒロキさんはしっかり休んでくださいね!」
「…分かった」
何時になくやる気に満ちた表情のエイラは、笑顔のまま俺に手を振った。俺も返すように手を振ると、エイラはドアを開けて外に出ていった。
「お、おい!置いてくなって!」
レムは慌ててエイラの後を追って部屋を出ていった。
置いていかれたレムは小走りでエイラに近づくと、エイラの横に並んで話しかけた。
「なあ、どうするつもりなん…」
「レムちゃんは、ダインさんと一緒にルシアを助ける方法を考えてください。…私はルシアと話してきます」
「お、おう…」
そう言うとエイラはレムから視線を外し、足早に通路を歩いて行ってしまった。
そしてエイラはそのまま協会に向かうと、女神像に祈りを捧げているルシアに声をかけた。
「ルシア、ダインさんから何があったか聞きました…。どうして…」
そう言われ、ルシアは祈りを中断してエイラの方を向いた。その手にはボアの花の花冠が握られていた。
「…ごめんね。エイラ…。私のわがままで、ヒロキさんをあんな目に合わせて…」
「それは…許せないです…」
「そうだよね…」
「でも、もっと許せないのは…!相談してくれなかったことです!ここで話したとき、なんでもっとちゃんと話してくれなかったんですか!どうして…諦めちゃうんですか!」
エイラは涙をこらえながらルシアにそう話した。するとルシアは少し俯くと、手のひらを少し強く握った。
「そんなの…仕方ないでしょ!皆が迷惑じゃないって思ってたとしても、私が辛くて耐えられないの!私が死ねば…それでいいの!これが私に残った『希望』なの…!」
ルシアは少し強い口調でエイラに答えた。エイラは俯くルシアに近付くと、ルシアの顔に手を当てて正面を向かせた。
「自分が死ねばいいなんて…、それが…本当にルシアの『希望』なんですか?」
「そう言ってるでしょ…!」
「じゃあ、なんで泣いてるんですか…」
エイラはルシアを真っ直ぐ見つめたあと、そっと自分の胸に抱き寄せた。
「…!」
「本当のことを話してください、ルシア…」
ルシアは両手をエイラの背に回すと、服を握りしめて強く抱きしめた。
「私…私は、死にたくないよ…エイラ…」




