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サマー☆ティーチャー  作者: 佐藤こうじ
24/29

期末テスト突破作戦!! その一 ★

  挿絵(By みてみん)

春のクラスマッチでは男子が優勝、女子が準優勝という見事な成績を収めた、夏田が担任を受け持つ一年D組。


 しかし、その後実施された中間テストでは全教科の平均で学年最下位となり、『D組は体育会系のクラス』というイメージが定着してしまった。

 

 中間テストが不振に終わった理由は大きく分けて二つ。

 まず、クラスマッチで生徒達が体力、気力を使い果たしてしまった事。

 そして、夏田が中間テストについての話を一切せず、生徒達もなんとなくのんびりしてしまい緊張感に欠けた事。


 夏田はあまり生徒達に勉強しろと言わないし、試験が近いからといって激をとばす事もない。

 それは高校、大学とスポーツ推薦で入り、学生時代そんなに勉強熱心ではなかった事が一因である。


 しかしながら、ここ県立油ノ宮高校は県内有数の進学校であり、決して学業をおろそかにする事など許されない。

 七月に入り、期末テストが間近に差し迫ったある日、夏田は校長室へと呼び出された。


「校長! 私は服など着ません! 一生水着一枚で過ごします!!」


 夏田は勢いよく校長室に飛び込み、開口一番校長に言い放った。

 小柄で少しメタポ気味な校長は、椅子に腰掛けたまま眼をパチクリさせている。


「……まだ何も言ってないじゃないか」


「でも、どうせその話でしょ!? 何度言われても無駄です!!」


 校長の机に両手を置き、身を乗り出すようにして言った。

 

「はぁ……」


 校長は背中を少し丸め、嘆かわしそうに大きなため息をついた。

 

「……まあ、その問題もあるが、今日来てもらったのはその話のためではないんだ。今度の期末テストの件でね」


「期末テスト……ああ、そう言えばもうすぐでしたね」


「夏田君……」


 校長は顔を伏せ気味にして、一層深いため息をつく。

 夏田の一言で、なぜD組の成績が振るわないのか理由が分かった。


「キミは学生の本分を何だと心得ているのかね?」


「健康である事」


「ああっ……! もうっ! そりゃ、健康が一番大事だけど……!! ここは学業って答えるとこだろっ!! いや、そりゃあ、健康の方が大事だけれどもっ……!!」


 校長は立ち上り、両手で白髪頭をかきむしりながら語気を荒げる。

 

「この前の中間テストのD組の成績は何だね!! ダントツ最下位じゃないか!!」


「……まあ、どこかのクラスが最下位になるわけですから」


 夏田は平然とした顔で言った。

 そんな態度に校長は余計に腹を立てる。

 長い教員生活の中で色んな教師を見て来たが、この夏田譲司というのは飛び抜けて特殊な男だと思った。


「あのねえ!! そんな事じゃダメなんだよ!! 生徒達にしっかり勉強させるのが教師の一番の仕事だろっ!?」


 普段は温厚で生徒達にも人気のある校長だが、さすがに怒り心頭である。


「いいかっ、夏田君!! 今度の期末テストでも最下位だったら、もう水着は禁止だ!!」

 

「ええっ!?」




 次の日の朝のホームルーム。


 教室に入って来た夏田は珍しく神妙な顔をしている。

 いつもなら、明るい笑顔を振りまきヒャッホウと飛び跳ねながら入って来るのに、どうしたのだろうと生徒たちがざわつき始める。

 教壇に立ち、真剣な表情で生徒達を見つめる夏田。


「みんな……ちょっと聞きたい事があるんだが」


 D組の生徒たちの視線が夏田に集中する。

 一体先生の身に何があったのだろう。


「もうすぐ期末テストがあるって知ってたか?」


 ガクッ。

 意外過ぎる一言に生徒達は呆れたような、ホッとしたような顔をする。


「先生!! みんな知ってるよ!! 当たり前だよっ!!」


「そ、そうか。先生てっきり来月ぐらいにあるもんだと思ってたぞ」


「来月は八月だから、夏休みだよ!!」


 夏田は、うんうん、そうだったなと言って頷く。


「すげえなお前ら。さすが進学校の生徒だ」


 生徒達にしてみれば今更何言ってんだと言いたいところだ。

 夏田は真剣な表情を崩さず続ける。


「それでな、この前の中間テストの成績が学年最下位だっただろ。だから今度の期末テストは頑張って欲しいんだ。もしまたうちのクラスが最下位だったら……」


「最下位だったら……?」


「水着は禁止だって! 校長に言われた!!」


 生徒達はキツネにつままれたような顔になる。


 なんだそりゃ。


 ペナルティという事か。


 でも、この機会に水着をやめた方がいいんじゃないかという気もする。


 皆、複雑な心境になった。


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