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妹の補佐として望まれましたが、帝国では正妃として愛されるそうです  作者: おくら
第三章

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殿下と婚約するようです 4

*********


書斎へ行くと、珍しく扉が開いていた。


「エレノアです。お父様、お呼びでしょうか。」

「入りなさい」

中に入ろうとすると、見慣れた顔が目に入る。


「イヴァン様」

「久方ぶりですね~。お元気そうで何よりです。殿下からのお手紙をお届けに参りました。」

「ご公務の方は落ち着かれたのですか?」

「俺はね。殿下はまだ少しやることがあるからと、今日は来られなくて…。すごく悔しがってた。」

面白がったような言い方のイヴァン様に、肩の力が少し抜ける。

「カイゼル殿下から、明後日に迎えに上がるとの連絡だ。準備はできているか。」

「明後日!…今荷物は整理しておりますので、間に合うと思います。」

「急で申し訳ないね。とにかく大至急で仕事を終わらせた結果だ。…使節団全体としての仕事はまだ少しあるから、他の団員やルチアーノはもう少しエスメラルダに滞在することになる。とにかくエレノア嬢の考えが変わらない内に早連れて帰りたい、って殿下が仰るもんだから…。」

「…まあ!…ふふ、変わることなんてないのに…」

思わず笑ってしまうと、父の視線が刺さった。少し驚いたような顔をしている。

「…お父様?」

「…――いや、…そんな風に笑うのだと、思っただけだ。」

少しはしゃぎすぎてしまっただろうか、父はすっと目をそらした。


「はい、これは殿下からエレノア嬢への手紙。多分同じような内容だとは思う。――中身は見ていないので、安心してください」

楽しそうにウインクをするイヴァン様に、再び笑いが漏れてしまった。

「ありがとうございます――。」


「それと、ええと、セレナさんにこれを。彼女も侍女として着いてくるんだったよね? 用意しておいてほしいものとか、今後のちょっとした予定とか。そういうのを入れているから。」

「…ご親切にありがとうございます。」

イヴァン様から、セレナ宛の封書を預かる。どこか分厚く感じるが気のせいだろう。

「エレノア嬢が帝国で困ってはいけないからね。ある程度分かっていた方がいいだろう?帝国でもあらかた準備はしているけれどね。」

「セレナが張りきって準備をしていたので、助かります。」

「じゃあ、申し訳ないんだけどこれで俺はお暇するよ。早く帰らないと殿下がいじけてしまうから。」

イヴァン様は飄々と去っていき、部屋には父と私の二人だけになった。


「――エレノア」

「はい」

「しっかり準備をしていきなさい。」

「…かしこまりました。」


部屋に戻りセレナへイヴァン様から渡された手紙を渡す。

「…なるほど、わかりました。…私も他に準備がありますので、一旦失礼しますね。エレノア様はゆっくりなさっていてください。」

「えぇ、ありがとう。私のほうも少し荷物を準備しておくわね。」

「かしこまりました。…後ほどお茶をお持ちしますので、休みながらでお願いしますね。」

「ふふ、わかったわ。」

自分も忙しいのに、私のことも心配してくれるのだから、セレナは本当にできた侍女だ。


ベッドに腰かけ、カイゼル様からの手紙を開いた。

几帳面そうな美しい字が並んでいる。

何とか使節団の仕事が一段落したこと、明後日出立ができそうであること。

それから、

「―――会えない間、君のことを想いながら過ごしていた。明後日を楽しみにしている。」

少し照れながら書いたのだろうか、先日と同じように最後の一文は走り書きで書かれていた。


「…私も、楽しみです…」


手紙をそっと胸に当てて、カイゼル様と会える日を待ち遠しく思うのだった。


*********



出立までの間、夕食や軽食には王国風の味付けや伝統料理、我が家でよく食べていたスープ等がよく出た。セレナは、「料理長なりのお見送りですね」と笑っていた。


「昨日も今日も、とても懐かしい食事ばかりで…とても美味しかったわ。ありがとうね。」

料理長へお礼を言うと、彼は一瞬瞳をゆるめた。

「こちらこそ、お嬢様にはお世話になって―――。どうか、どうかお幸せに…」

思えば、子供の頃から王妃教育がひときわ厳しかった日は、いつもきまってお茶の時間に少し豪華なお茶菓子やケーキが出されていたように思う。

きっと彼なりに考えてくれていたのだとわかり、心がじんわりと温かくなった。


「…使用人たちは、陰ながらエレノア様のことをよく心配しておりました。」

湯あみを終え、髪にブラシを通しながらセレナがそっと教えてくれた。

「そうだったのね。…自分ばかりが大変だと思っていて、気づけていなかったのね。」

「いいえ、エレノア様は本当に頑張ってらっしゃいました。――…明日は出発ですので、本は読まずに早めにお休みしましょうね。」

「…わかったわ、ありがとう、セレナ」

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