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恋せよ文学乙女  作者: ほか
第4話 物語遊園地でトリプルデート
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⑥ 夢ちゃんの恋を応援しよう作戦 ~もも叶の語り~

 ハート型のテーブルに、ハートのお皿。そしてハートのオムレツにサラダ、ケーキ。

 不思議の国のアリスにでてくるハートの女王様のレストランで、衣装から着替えたあたしたちはランチタイム。

 大きめのテーブルをあたしもも叶と、マーティン、せいらと神谷先生で囲ってる。

 等身大のトランプさんが守ってるエントランスに、天井のランプに乗ってる猫。

 なにもかもかわいい店内に、テンションがあがるけど、今は大事なことがあるんだ。

 隣のせいらにひそひそ声で話しかける。

「どうしようせいら。今日のメインは夢と星崎王子をくっつけることだったのに」

 食前アイスティーを飲み干して、せいらは頷く。

「おもわぬ敵兵登場だったわね。小夏さん、手ごわしだわ」

「なんか……あたしたちばっかり楽しんで、夢かわいそうだよ」

 ねぇマーティンって、横を向くと、マーティンじっと隣のテーブルを観察していた。

 小夏さんが星崎さんにひっついて、夢はうつむいてる。

「あぁ。だいぶ、落ち込んでるみたいに見える」

 やっぱり……そうだよね。

しんみりするあたしたち三人に声がかかる。

「どした、お子様たち」

 神谷先生だ。せいらがすかさず身を乗り出す。

「かみやんも協力して!」

「わっ。なんだ、フォークを握った手を突き立てるなって」

「あらいけない。あたしとしたことが、お行儀悪いわ」

 せいらはフォークを戻して、その手を神谷先生の耳に持っていってなにか囁く。

「なになに? 夢未ちゃんが、星崎先輩のことが好き?」

 ぺしっと、せいらが先生の耳を軽くはたく。

「声が大きいわよ!」

「いてーな。んなの、一目でわかるっつの」

 あたしが補足する。

「でも小夏さんにぜんぶもってかれちゃって、あたしたち見てらんないんです」

 神谷先生は、さり気なく隣のテーブルを見る。

 小夏さんがオムライスをひとさじすくって、星崎さんの口元に持ってってる。自分で食べれるからって星崎さんも困ってるけど……夢、やっぱり辛そう。

「ま、少なからずかわいそうじゃあるかな」

「でしょう?!」

 神谷先生は、立ち上がらんばかりのせいらを手で合図してで座らせたあと、

「にしても、先輩も先輩だわな。相変わらず万年モテ期かよ」

 マーティンがすかさず食い込む。

「星崎さんのこと、なにか知ってるんですか?」

 神谷先生は、アイスコーヒーを一口飲んで、

「大学のときからすごかったぜ。あの顔と性格で、しかも成績抜群とくればそれも当然だけど」

「夢っちの恋は、前途多難だわね……」

 しょんぼりするせいらに神谷先生は意外なことを言った。

「いや。案外そうでもないんじゃねーの」

 マーティンが話を進めてくれる。

「どういうことですか?」

「オレも、先輩が夢未ちゃんを引き取ったって聞いたときは驚いたんだ。あの通りモテるけど、人と必要以上に深く関わったりすることをあまりしない人だったから」

 へぇ……。

 ちょっと意外な気がする。

「てことは、そのスタイルを捨てても、夢未ちゃんを助けたい理由があるってことだろ」

 そっか……!

 じゃ夢にも希望があるってこと。

「なんとかして、夢と星崎さんをいい感じにする方法はないかな」

 あたしの呟きに、神谷先生は答えてくれた。

「ないこともないな」

 え、どうやるの?

 あたしは答えを求めてせいらを見るけど、せいらも首を横に振る。

「もも叶、僕の考えが正しければ、それはこういう方法だ――」

 言いかけるマーティンに、

「おっと少年」

 神谷先生がパチンと指をはじく。

「そこまでだ」

 マーティンも意味ありげに微笑んで、黙っちゃった。

 えーっ。

 教えてくれないの?

「あとはオレたちに任せときな」

「まずは次に行く土産物屋で、機会をうかがってみるよ」

 言い切る神谷先生とマーティンにせいらとあたしは困惑しつつ、よろしくお願いしますって頭を下げた。

 次に言ったお土産屋さんには、Tシャツに食器、キーホルダーに文房具まで、ストーリーシーのキャラクターグッズが所狭しと並んでた。

 どれもかわいい。わくわくだね!

「ねぇかみやん。パーさんのぬいぐるみ買って」

 せいら、さっそくおねだりしてる……。

「しゃーねーな。一つだけだぞ」

「やった。これね! よっこいしょっと」

 せいらが持ってきたのは、持ってきたというより背負ってきたという方が正しいサイズのパーさん……!

「でかっ。どこに置くんだよ、んなもん」

 神谷先生呆れてるけど、せいらはにっこり。

「家に余ってるスペースならたくさんあるもの~」

 さすが、お嬢。

「あとはね、これとこれと」

「おい! 一つって言っただろうが」

 そう言いつつ、お土産を持ってくれる神谷先生。

 優しいなぁ……。

 両手いっぱいのお土産をかかえて、二人はお会計に向かう。

 メイド服のかわいいお会計のお姉さんはせいらににっこり。

「優しいお兄さんね」

 あー。

 あたしは心の中で頭を抱える。

 やっぱり。

 そう言われて、せいらは俯いちゃった。

 そうだよね。

 好きな人と兄妹に見られるって、ちょっと複雑。

 お会計が終わって戻って来ながらせいらがぽつり。

「……パーさんのぬいぐるみは、ちょっと子どもっぽかったかしら」

 神谷先生がいたづらっぽく微笑む。

「なんだ、買わせたそばからもう後悔か? 真っ先に選んでたじゃねーかそれ」

 大きな袋の中からパーさんを取り出してまじまじ見つめる。

「かみやんと並んで、恋人に見えないことはわかってるわ。でも……」

 神谷先生がバランスをくずして買った荷物を落としそうになる。

「ったく、お前はまた不意打ちでそういうことを」

 先生は思いっきりきょどってるけど、せいらの気持ちも、わかる。

 乙女心は複雑なんだよね。

「気にすんな。歳の差なんてお互いが大人になればあってないようなもんだ。妹だって、そのときがくれば奥さんに見えるって」

 あたしは思わずまじまじと神谷先生を見ちゃう。

 すごい。

 こういうこと、軽く言えるのが、まじにすごい。

 せいらの落ち込みモードも一瞬にして治って、さらにお土産漁りに熱中してるし(てか、まだ買うんかい)。

 そんな彼をじっと見てる人が隣にもう一人いたの。

 マーティンだった。

「もも叶。君も、好きなだけ買うといい」

「えっ。でも、マーティン」

「あれくらい僕にだって買える……!」

 な、なんか目が燃えてますけど。

「そ、それじゃ……お願いしようかな」


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