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恋せよ文学乙女  作者: ほか
第4話 物語遊園地でトリプルデート
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④ トリプルデート、いよいよ開幕

 ストーリーシーは、イタリアの水の都って呼ばれてるヴェネチアって街をイメージした造りになってて、周りが海に囲まれているんだ。

 エントランスを入ってすぐのところには、地球儀の噴水があって、てっぺんに傘を持ったメリー・ポピンズの像が腰掛けてる。周りにはハイビスカスやプルメリアの夏の花のオブジェがいっぱい。

 栞町から電車に乗ってやってきたわたしたちは、長い列のエントランスをくぐって一呼吸。

 日差しが眩しい。

 「幾夜。あたし、不思議の国のレストラン行きたいっ」

 小夏さんが、さっそくひしっと星崎さんの腕に手を絡めてる……。

「まだ昼食には早いよ、小夏」

 わたし、心の中で涙目。

 こうしてみると、二人はほんとのカップルみたい。

「夢、なにやってんの」

 え?

 後ろから小声で言って来たのは、はりきって白雪姫の柄のかわいいシュシュをポニーテルに結んだももちゃん。

「そうよ夢っち。あんなふうに見せつけられたままでいいわけ?」

 つば広帽子とアリス風ワンピースで決めてるせいらちゃんも。

「ほら、アタック!」

「猫なで声でも出して甘えてきなさい!」

 どんっと二人にに背中を押されて。

 よ、よしっ。

 わたしは、がんばって彼に話しかけることにした。

「星崎さん!」

小夏さんに腕をとられた彼が、振り返る。

「どうかした、夢ちゃん」

 えっと、えっと……。

「暑くないですか?」

 どてっと、後ろで二人がずっこける音が聞こえる。

 だ、だって……。

 太陽カンカン照りなのに、星崎さん、長袖を着てたんだ。

 気になる……よね?

「気にしないで。日に焼けると毎年悲惨なことになるから気をつけてるんだ」

 そ、そっかぁ。

 確かに、男の人にしては色白だし、敏感なのかな?

 ももちゃんが横から囁いてくる。

「もう、夢のドジ。話題終了させてどーすんのっ」

 だ、だってだって~。

「もも叶。夢未にだって、ペースっていうものがあるんだから」

 横から、ももちゃんの彼がフォローしてくれる。

 さすがマーティン。ありがとう。

 今日は現代日本の男の子のファッションにあわせて、Tシャツ姿にリュックを背負ってる。よく似合ってるよ。

「でもさ、夢ってばのんびりで、このままじゃ全部小夏さんにおいしいとこ持ってかれそうなんだもん」

「恋愛は先手必勝じゃないって、こっちの世界の本に書いてあった」

「あのマーティン、いったいどんな本読んでるの……?」

 あはは。

 つっこむももちゃんもマーティンも楽しそう。

 なごんだとき、相変わらず星崎さんの腕をとったままの小夏さんがもう片方の手を勢いよくふってるのが見えた。

「神谷くーん! こっちこっちー!」

 はっ。そうだった。

 神谷先生とは、ここで待ち合わせなんだよね。

 水色のシャツを着てサングラスをかけた先生は、小夏さんに気付いてこっちにきてくれる。

「小夏ちゃん。最近大学で見かけないと思ったら、講義そっちのけで、先輩のこと追いまわしてたのかよ」

 あ。そっか。

 神谷先生も小夏さんも、星崎さんが前までいた大学にいるから、二人は知り合いなんだね。

 どういうことって訊いてくるももちゃんとマーティンに、こっそり説明。

 小夏さんは笑って答えてる。

「当たり前でしょ。あたし、絶対諦めませんから」

 み、みんなの前で堂々宣言……!

 すごい。わたしにもこのガッツがあったら……。

 落ち込んでると、小夏さんがしゃがんで話しかけてきたの。

「夢未ちゃん、ごめんね。お邪魔だった? お姉さん、夢未ちゃんのことは好きだけど、恋は別。今日は手加減しないから、そのつもりでね」

 涼しげな目元でぱちっとウインクする小夏さん。

 どうしよう。

 敵う気がぜんぜんしないんだけど……。

 落とした肩を、ふいに叩かれる。

「夢っち。いい? 鈍感な男の人には、こうするの。よく見てて」

 そう一言言ったせいらちゃんは、帽子の下の長い髪をなびかせて、神谷先生に近づいて行く。そして、コホンと咳払い。

「今日のチケットの提供者はあたしなんだけど。挨拶もなしかしら」

 正しくは、せいらちゃんのお父さんだけど……。

 ってつっこむ暇もなかった。

 神谷先生はいたずらっぽく笑って、せいらちゃんの手を取ったの。

「こりゃ、失礼しました。せいら女王陛下――これでいいか」

 そして、その手の甲に、軽く唇を――。

 ひぇぇぇっ! すごい!

「ま、まぁ、いいわ。次から気を付けて、ね……」

 せいらちゃん、真っ赤になりながら、かろうじて余裕なふりしてる。

 見てたマーティンも呟いてる。

「あれが大人の手口か……」

 神谷先生は、そんなマーティンに笑いかけた。

「噂のもも叶ちゃんの彼氏か。よろしくな、少年」

 マーティンも、ひるまずに見返してる。

「……よろしく」

 ももちゃんが仕切り直す。

「さぁ、顔合わせが済んだところで、さっそく出発だね!」

 マーティンが隣で園内の地図を取り出した。

「よし。計画では、まず、行きたいっていう希望の多かった『マーメード・エンカウンター』のファストパスをとって」

「いいのそんなのはいきあたりばったりで! まずはなんと言っても目玉の『タワー・オブ・アッシャー』でしょ。レッツラゴーゴー!」

「えっ。ちょ、もも叶っ」

 リーダーシップ抜群のマーティンも、ももちゃんの行動力には敵わないみたい……。


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