表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/30

終電前のアイドル

 終電前のホームのような、ぎりぎりの明かりの下で私はまだ立っている。


 二十五歳。


 アイドルとしては“微妙な時間で終電が近い”と自覚していた。


 SNSを開けば、眩しい子たちが毎日のように通知を埋め尽くす。動画サイトには煌びやかな成功の数々。寝転んだベッドの上で、私はその光に照らされるだけの存在だった。


 やれることは全部やった。


 企画も、投稿も、レッスンも、努力と呼べるものは出し切った。でも結果が出なければ、それを「努力している」と名乗ることすら許されない。


 親がくれた名前があって、自分で選んだ活動名があって。


けれど、私の“結果”に名前をつけるのは他人――つまりファンだ。


 認められなければ、光らない。そんな当たり前の仕組みが、胸に重たく沈んでいく。


 昼と夜が何度も過ぎ、気づけば数年。私のスケジュール帳は徐々に白くなり、ページは静かに乾いていった。


 そんなある日、一通の手紙が投函されていた。誰からとも知れない、薄い封筒。


『あなたはアイドルにはなれません。ですが、アイドル“消費”はできます』


『うちの事務所に来ませんか?』


 終点の案内みたいに、淡々とした文字。


 私はその紙を強く握り締めた。


 まだ終電は来ていない。


 なら、乗り込むしかない。


「……消費されに行きましょう」


 そう呟いて、私は部屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ