奇妙い話(あるアルバイトの少女が体験した怖い話)
怖かった体験を話します。
その日、来店されたのは三人の男性でした。
「いらっしゃいませ。三名様でよろしいでしょうか?」
テーブル席に案内し、全員が座ったのを見届けてからメニューを並べようとしたとき、初めてそのグループの中に女の人がいることに気付きました。
その女性は小柄だったので、今まで男性の陰に隠れていたために存在に気が付かなかったのだと私は思いました。
(四名様だったのか…さっき三名様って言っちゃったから気を悪くしてないかな…)
失礼な言い方になりますけど、その女性は、冴えない感じのこの男性たちと一緒にいるのが不思議なくらい可愛い方でした。
私はテーブルにメニューを並べ、一通りの説明をしました。
そして一度カウンターに戻ってからお冷とおしぼりをテーブルに運び、再びカウンターに戻りました。
そのときカウンター内で先輩に話しかけられました。
「ねえ、何でおしぼりとお冷を四つ持って行ったの?入ってきたとき三人じゃなかった?」
「私も間違えたんですけど、四人でした。男性三人と、可愛い小柄な女性がいらっしゃいました」
「…ふーん、そっか…」
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彼らにテーブルのボタンで呼ばれ、私がオーダーを聞きに行きました。
男性三人は同じメニューを注文しました。
私がそのまま女性の注文を待っていると、変な沈黙の間ができました。
「………?」
「………?………他にご注文はございますか?」
「……いや…ないですけど…?」
「…かしこまりました…」
注文された料理を運んだときも、女性は黙って座っていました。
(こんなに可愛い女性なのに何でこの男性たちは全然話しかけないんだろう。可愛いから緊張して話しかけられないのかな?言っちゃ悪いけど、女性に慣れてなさそうな男性たちだもんな)
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少ししてからその四人のテーブルにお冷を注ぎに行ったときでした。
女性はおらず空席には水の減ったコップと使用してないおしぼりが残されていました。
先に帰ったのかなと思いつつも一応「そちらにもお注ぎしますか?」と声を掛けると、「あれ、水減ってるじゃん。誰か飲んだ?」と、彼らが少しざわつきました。
「俺は飲んでねーよ」
「俺も知らない」
「とりあえずお願いします」と言われたので冷水を注いでいると喋りかけられました。
「あの、すいません。今更聞くんですけど、何でコップとおしぼり4つ置いたんですか?俺たち3人なのに」
「飲んでないのに水が減ってるし、もしかしてこの店何かいるんですか?知っててわざとやってます?儀式みたいな?」
「ただ単に人数を間違ったんじゃないですよね?水注ごうとしたんだし…」
そのときの私は、彼らが三人して私をからかっているのだと思いました。
そこへお客様と私が揉めているのかと思った店長が駆けつけて来ました。
後から聞いたのですが、店長はこのテーブル席にときどき女性の幽霊が出るのを知っていたそうです。
それなので、彼らへの説明はスムーズでした。
男性たちは「おお、まじか…」と興奮気味でした。
私は彼らに幽霊の特徴を訊かれたので、お詫びの意味も込めて視たままを話しました。
小柄で華奢で色白で、黒髪のボブカットと大きめの眼鏡が似合う、黙って座っていると人形のように整った顔立ちの、可愛い女性でした。
………彼らの目つきが変わりました。
それからというもの、彼らからスペシャルパンケーキ、ロイヤルミルクティー、国産いちごのミルフィーユなど次々と注文が入りました。
注文されたスイーツを持っていく度に、テーブルでは空席の隣の席争奪戦のような光景が繰り広げられていました。
「替われよ。次は俺が隣に座る番だろ」
「まだだよ、早ぇよ。俺が座ってるだろ」
「あッ、店員さん、彼女また現れてくれましたか?どうです?今いますか?」
それはさながらオタサーの姫に貢ぐ男たちの不毛な争いの様相を呈していました。
「幽霊が嫌がるかもしれないから写真は撮らない」と言っていたのは怖くて鳥肌が立ちました。




