第1話「英雄の涙」
はじめまして「D-NEY」と申します♪
気ままに更新いたしますが、目に留めていただいた際はぜひ楽しんでいってください( 'ч' )!
「ハァ、ハァ……」
僕はただひたすらに逃げていた。
細い細いトリカの路地裏を、多くの大人たちに追われながら。
人間ってのはどうして僕を煙たがるのだろう。
ついさっきまで英雄だ、ヒーローだなんて僕を撫で回してくれていたカルスさん。いつも僕を見かけたら奥さんへの不満を漏らしてくるトルトさん。
「あいつを殺せ!」
「あいつを殺さねーと、俺たちが呪われちまう!」
あぁ……こんなことを言う人たちじゃなかったのに。
そんな物騒なもの持って、どうして僕を追いかけているの?
物知りなトニーさんに、最近子供が産まれたって嬉しそうに報告してくれたカノさん。
そんなもので斬りつけられたら僕は絶対死んじゃうんだよ?
またこうだ、いつもこうだ。誰も心の底から僕を愛してくれやしない。
だってそうでしょ?あんなちっぽけなことだけで人を殺そうとするはずがない。
「追い詰めたぞ、アルファ……」
いつのまにか行き止まりまで来てしまっていた。
振り返ってみんなの顔を見てみると、そこには殺意しか込められていなかった。
仮にもほんの数分前まであんなに仲良くしていた人間にこんな表情がどうして取れるのだろうか。
「お前がLOSTERだったなんてな……、お前と関わった時間全てが人生の汚点だよ」
あぁ……、痛いなぁ。
みんなの言葉がまるで太い釘のように胸を刺してくる。
僕はまだみんなを嫌いになれないよ。
どうすればまた前みたいに僕に笑顔で話しかけてくれるのかな?
「死ね、アルファ」
そんな怖い顔しないでよ。どうして、ナイフを構えてるの?そのナイフをどうする気なの?どうして投げつけようとしてるの?
僕がなにをしたの??
「そっか……、僕がLOSTERだからだよね……」
気がつけば一筋の涙が頬を伝っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「よし! 今日も売るぞー!」
僕は今日もトリカに来ている。
僕がトリカに来てやること、それは薬草を売ることだ。
雨の日だろうと、嵐の日だろうとできる限り毎日トリカに来ては薬草を売り歩くのが僕の仕事だ。
「お、アルファ! 今日はあの薬草あるのか?」
「おじさん! 確か持ってきてるよ!いくついる?」
「3つもらうよ、いつもありがとな!」
「へへっ、毎度ありー!」
僕の売る薬草は自分で言うのもなんだけどなかなかレアなものが多い。
トリカの周りでは薬草が取れるところが少ないってのもあるけど、特に効く薬草っていうのは山を登ったり、少し危険を冒さないと手に入れられないものなんだ。
「アル君、ちょっとこれもっていきな!」
「おう、アル! 今日も元気がいいな!」
「アル兄ー! 遊んでよー!」
こうやってたくさんの人が話しかけてくれるのも、僕にとっては嬉しいことだったりする。
薬草をこうして売りに来るとき以外は、基本的にルミ村の端の端でポツンとひとり小屋の中で暮らしているからだ。
そんな僕にトリカの人たちはとにかく温かくて、家族のように接してくれる。
トリカの人たちの役に立てるこの仕事は、僕にとって生き甲斐だ。
しかし、なぜだろう?今日はいつもよりかまってくれる人が少ない。
いつもなら、なにかと世間話を持ちかけてくるくれるカルスさんだったり、僕を見かけたら奥さんへの不満を漏らしてくるトルトさんが話しかけてもいい頃なのに。今日はその姿さえ見かけないだなんて。
街の中心部で何かあったんだろうか?
僕は少し嫌な予感がして街の中心部まで足を走らせた。
街の中心部までくるとさっきまで人が少なかった理由がわかった。
トリカで有名な時計屋の前でたくさんの人が固唾を飲んで中の様子を伺っていたのだ。
「何かあったの?」
「アルファ、大変だ。時計屋に強盗が入ってな、ここの娘ちゃんが今、人質に取られちまってるんだ」
「強盗だって??」
それが本当ならどうにかしないといけない。
この時計屋さんにはいつもお世話になっているし、娘ちゃんもまだ5歳なのにしっかりしていて、トリカでも人気な看板娘なんだ。
僕は人混みをかき分け、そっと中の様子が覗ける窓に近づいた。
ちらりと中を覗くと、強盗は壁を背にして、看板娘を自分の足元に座らせてナイフを片手に金を要求している様子だった。
なるほど、これじゃあみんなも下手に動けないわけだ。
僕は窓から一度離れると、そっと強盗が背をつけていた壁の方へと外から回っていく。
そんな様子をじっと見守ってくれている街の人たちには、シーっと口元に指を立てて静かにするように合図を送り、そっと深呼吸をした。
そのまま少し後ろに下がって、勢いをつけて壁に飛びかかった。
バキバキバキバキッ
店の壁を腕で貫き、そのまま腕をクロスさせる。
手応えあり!狙いは完璧、壁もろとも強盗の首を締め上げると、そのまま体を後ろに傾けて、壁を剥がしながらも強盗もろとも店から引きずり出した。
時計屋の店主もその奥さんも、なんなら人質の娘ちゃんとと強盗まで何が起こったのか理解できない様子でしばらくぼけーっと時が止まっているようだった。
その間に一度強盗から腕を外し、せっせっと壁の破片を腕から取り除くと、今一度強盗の首に腕を当てヘッドロックをかけてやった。
と、こんなところで沈黙は解け、再び時が動き出したが、
強盗は持っていたナイフで抵抗するも僕の着ていた服を少し破るくらいのことしか出来なかったようだ。
しばらくすると、チーンッと音を立てるように強盗の意識が飛んで、店の中からは夫婦子供みんな無事出てきた。
強盗の意識が飛んでいる間に手足を縄で縛り付けると、これにて一件落着!我ながら完璧な立ち振る舞いだったと思う(店の壁は本当にごめんなさい)。
「アルファ君、ありがとう」
気がつくと僕は涙を流す奥さんの腕の中だった。
すごく温かかった。僕にはお母さんはいないけど、お母さんの温かさってこういうものなんだろうなと思った。
「おい、みろよ! さっきまで店の壁ひっぺがしてたやつがあんなに小さく見えやがる!」
「小さな英雄だな!」
「ありがとう! アルファ!」
「今日のヒーローはお前だぞアルファ!」
たくさんの歓声が僕を包んでくれた。
僕こそみんなに感謝がしたいのに。いつも僕を温かく迎え入れてくれてありがとう。今日こうしてトリカのみんなの役に立てて本当に良かった。
なんて思っていたのも束の間。
歓声がまばらになったかと、思うと、いきなり悲鳴をあげるものまでで始めた。
まさかさっきの強盗が逃げ出したのか?そう思って、さっき縛り上げた強盗の方へ顔を向けようとした時、重い衝撃が右頬を襲った。
な、なんだ……?
殴られた?一体誰が?
僕は恐る恐る顔をあげると、そこには時計屋の店主さんが鼻息荒く拳を握りしめて立っていた。
その横にはさっきまで涙を流していたはずの奥さんがいてすごく怯えた様子だった。
「お前、俺たちを殺す気か……?」
殺す気かって?いったい何を言っているんだ?事態はとても飲み込める状況ではなかったが、明らかに2人は僕を何か恐ろしいものでもみるかのような目で見ていた。
そこで僕は思い出した。
さっきの一件で強盗がもがいたとき、服が破れてしまっていた……。
ハッとして恐る恐る右肩のあたりに目を向けると、服が破れ、黒いアザがむき出しになっていた。
とっさに手でそれを隠したがもう手遅れだった。
「こいつ『LOSTER』だったんだ……、みんな! こいつを殺すしかない!」
旦那さんのその一言で、周りの人たちは皆武器を手に取り、僕に向かってきた。
もうダメだ……、逃げるしかない。
今日はいい日だと思っていたのに……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「死ね、アルファ」
ナイフが飛んでくる。
その勢いに迷いなんてものは1mmも感じさせなかった。
僕をただただ殺したい、そんな思いが乗った刃だった。
幸運なことにナイフは僕の頬を掠めただけで、うっすらと一筋の血を滲み出させる程度だった。
それでも僕の心には大きな大きな痛みを与えた。
あぁ、もうダメなんだ。今回はきっと大丈夫だと思ったのに。
どうして僕はLOSTERなんだろう?もう、LOSTERであり続けるのは疲れたなぁ、ここで死ねば終わるのかな?ここで終わらせよう。
その時だった。
ドクンと大きく心臓が揺れた。
体はひどく熱を帯び、胸の鼓動もドンドン早くなる。
さっき頬を流れた一筋の血も体の熱で蒸発しているのがわかった。
なにが起きているの……?
状況の整理もままならないまま、気がつけば、さっきよりも大きなナイフが飛んできていた。
今度は確実に僕のことを捉えていた。飛んでくる速度だって申し分ない。確実に死ねる。
そう思っていた。だけど死ねなかった。
ナイフが僕に届くよりも前にドロドロに溶けてしまったからだ。
これも僕の身体の熱で起こったことなの……?
ありえないとは思いながらもそれしか考えられなかった。
身体が熱い。胸がくるしい。誰か助けて……。
このままいけば熱がみんなを巻き込むのも時間の問題だ。
みんなを巻き込みたくないなぁ。
僕のせいで大好きなみんなが死ぬのは嫌だよ。
そんなところで腰を抜かしてないで早くみんなにげてよ……。
僕の涙は流れることなく消えていき、徐々に意識も遠のいていった。
【LOSTER-NEWS〜プロフィール編】
◯アルファ
年齢・12歳
身長・150cm
体重・43kg
好きな食べ物・グラタン
嫌いな食べ物・シチュー
趣味・家の掃除
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