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ゼロマキナIF -始まらない物語-  作者: Deino
IF8話 真相
44/48

IF8話-05 決着

「てな訳なんだよバニ様」


 《黎》になってから──というか日付が変わってからかなり時間の経った研究室で、ウチは事の詳細をバニ様に説明し終えた。

 説明開始から3時間くらい経ってるが……明日、っか今日か。《明》からの仕事大丈夫なのかバニ様と……ミカヌーは。


 横を見るとミカヌーが目をしばしばさせながら話を聞いている。全て終わったのだ。彼女にも情報解禁という訳なのだが……何もこんな深夜にやらなくても。

 ミカヌーは水やりを終えたら研究室に戻って来た。話題的には丁度アルヴィスと同盟を結んだあたりかな? 後日ちゃんと教えるとその場では伝えたのだが、今聴きたいと譲らなかったので……いまここにいる。まあミカヌーは今まで元学長の計画もヒミツにされてたから、色々気になるのだろう。

 ミカヌーに補足説明を入れる形で事の顛末を話してたら結構な時間になってしまった。今は……夜中の3時くらいだろうか?


 平依存さんとの打ち上げの最中にバニ様から呼び出しが来て、そのままなし崩し的に説明パートに突入してしまったが……結果的に会の場の代金払って無いからマジで平依存さんにおごらせる形になったな。……まぁいいか。



「十七委員会に承諾された後はどうなったのよ」


「その後は特にトラブルもイベントも無く……。ただ特異個体が出現するのを3年くらい待っただけだね。その間に正式な捜査令状も作成して、軍監査警察を中心に陸羽側で虚灯逮捕の準備を進めてた」


 そんな活動をしてる所を未納淘汰街抗換装士に見つかり、一瞬キモを冷やしたが……。ネブルからの正式な令状とあり、淘汰氏はむしろ味方をしてくれることになった。ホント、彼が法律のみで動く男で良かった。

 ……橙子は、吏人は、そんな彼をどう思っていたのか解らないけれど。


(街抗にいながら、アルマを目指しながら、革命派をつぶす選択をする淘汰氏も大概狂ってるよな)


 正当血種であり、法に従う義務があるのも解るが……なら何故進む先が街抗なのだろうか。まぁ元学長逮捕時に役に立ってくれたので深くは考えないでおこう。

 正統血種には正統血種の、彼等なりの考えがあるはずだし。


 正当血種と言えばアルヴィスは今回の虚灯検挙の功労者として陸羽に正式に表彰されるそうだ。まぁウチもこの実績で街抗から陸羽に移動する事になるので、セットで表彰って感じかな? この辺は上手く平依存さんとロコモネさんが根回ししてくれたみたいだ。感謝感謝。ごめんね打ち上げ途中で抜けて。



「はぁ……」


 ウチが心の中で平依存さんに謝ってたら、バニ様がため息を吐きながら壁に寄り掛かった。


「アタシだけ、仲間外れじゃない」


 うぐ……。寂しそうな声で呟くバニ様の横顔はウチの心に響いた。ごめんね。ごめんねバニ様。


「ごめ──」


「謝らないで! 謝るなら最初からこんなことしないで! やったからには、シーエちゃんはシーエちゃんなりの責任の取り方をして」


「それって」


「陸羽の兵器として、ネブルを守るんでしょ?」


 バニ様はウチにそう告げ、続ける。


「アタシもネブルの為に生きるわ。元々虚灯に所属してたのもネブルのためだしね? それにエムジちゃんの件もある。エムジちゃんに罪はない。直す。直すわよ」


 バニ様はこぶしを握り締める。


「シーエちゃんがやった事は許せないけど、主張は解るわ。アタシは仲間外れにされてたのが悔しいだけ。何で……何で機都が一つで無い事黙ってたの? その情報があれば機都奪還計画はつぶれたかもしれないのに……いや、だからね。だからあなたは黙ってたのね。虚灯を根絶やしにするために」


「そう……例えバニ様でも、情報共有する訳にはいかなかった。レイベニウス……タカ式だね。ヤツから取得した情報を共有したら、機都奪還計画は白紙に戻る。そうなったら虚灯はウチを使ったまた別の計画を考えるかもしれない。それこそウチは機械だから記憶をいじる事は可能だし、今はそれを止めてくれるエムジもいないし……。不安要素は消しておかないといけなかったんだ。そのために、バニ様を仲間外れにする必要があった」


「それならアタシは、一緒に逮捕されたかったわ」


「さっきも言ったけど、ウチがそうしたくなかった。単にウチのワガママなんだよ。実際バニ様はネブルにも有用だし……いやそれは言い訳か。ウチがバニ様を逮捕させたくなかっただけだ」


「アタシにだってワガママはあるわよ?! 景織子ちゃんだけ逮捕されて、アタシが自由にしてるなんて納得いかない! シーエちゃんがアタシを特別視する様に、アタシも景織子ちゃんを特別視してるの。たしかに景織子ちゃんの計画を危険思想と思ったこともあったわ。景織子ちゃんの考えに違和感を感じた事も。でも忘れないで。彼女達は決してネブルをないがしろにしてる訳じゃない。むしろネブルでのつらい経験があるから、アルマを目指したのよ」


「……それは知ってたよ。悪意で革命起こそうとしてる人なんて一人もいないって」


「でもシーエちゃんの説明で、その行為が、思想が危険なのは、十分わかったわ」


 気が付くとバニ様はこっちを見ていた。


「アタシも舞い上がってたのね。意思疎通の出来る機械を見つけて、電子汚染の浄化作用を観測して、景織子ちゃんの口車に乗せられて、これならアルマを手に入れられるんじゃないかって。救世主が、悠久文献の様にアタシ達ヒトリディアムをアルマに導いてくれるだろうって」


「バニ様……」


「……でも、そうね。悠久文献の救世主は全て、助けてくれる、アルマを取り戻してくれるとは書いてても、実際はその集落は全て廃墟と化してた。アルマは未だにヱレームの巣窟。救世主はいたけど、成功はしてないのね」


「記憶にはないけど、たぶんウチは失敗し続けて来てるんだ。出会った集落を守ろうと必死に抗って、失って、また出会って……。今度こそ失敗しない様、このネブルっていう素晴らしい集落を守れる様、必死なんだ」


「あーあ。救世主は、アタシ達をアルマに連れてってくれる存在じゃなかったのね」


 バニ様は頭を掻きながらうつむく。ウチは何も言えない。言う権利が無い。

 ……救世主は皆を救えないんだ。世界しか、ネブルしか救えないんだ。



「でもともかく、シーエちゃんから話も聞けたし、アタシがやる事は決まったわね」


「バニ様?」


「アタシは研究を続けながら、ネブルのために尽くすわ。あ、アルマへの夢も諦めないわよ? シーエちゃんが直接協力してくれなくても、《有機探索網》なんて素敵技術もできちゃったんだから。……これはシーエちゃんとセロルティアちゃんの存在のおかげね。これがあれば、街抗の活動範囲は広がるわ。いつかはアルマを手に入れられるかもしれない」


「……実際あの技術を使えば、死者は減るね」


 ネットワーク端子を遮断する新技術。特異個体以外はこの有機探索網が設置されたエリアでは活動出来ない。街抗の活動の幅は広がっている。


「あと今後も景織子ちゃんとは交流を図るわ。親友ですもの。それはいいのよね?」


「もちろん。計画指示を出されたりしたら困るから監視付きだけど……。御劔元学長は死刑にはならないから、一緒にいる事は出来るよ」


 大切な人と少しでも長く共にいる。それがウチの願いだ。元学長の願いとは違うだろうが、バニ様や元学長にも死による別れは出来るだけ味わってほしくない。



「……シーエちゃんはこれからどうなるの?」


 と、話し込んでいたウチとバニ様に横からミカヌーが入り込んでくる。


「えーと、数日後には陸羽から発表があって、正式に陸羽の兵士になるよ。ウチが機械だってことは数人しかしらないから、単に危険思想の革命派からネブルを救った功績をたたえられてって感じかな? 陸羽に移動したがってる街抗は少なからずいるし、ウチの動機は違和感無く受け入れられるはず。ウチが今街抗換装士ってのもポイント高いかな? 虚灯の計画は細部をぼかしてネブルに発表されるはずだから、ネブル民からのウチの株は上がると思う」


「今より忙しく無くなる?」


「んーたぶんね。陸羽に所属して通常業務はこなすけど、ウチの本業は有事の際、ヱレームがネブルに侵入した時の対処だから。激務にして出発が遅れたとかじゃ話にならないでしょ? だから時間はとれるはず。何よりアルマにもう行かなくてよくなるしね」


「じゃあさじゃあさ……一緒に遊びに行ったり、出来る?」


 上目遣いで聞いてくるミカヌーは可愛かった。そうか、そうだな。軍学徒時代の様に、遊ぶ時間が取れるかもしれないな。

 大切なミカヌーと、寿命のあるミカヌーと、一緒に楽しい時間を。


「ミカイヌちゃん? こっちの仕事は忘れてないわよね?」


「は、はい勿論ですバニ様室長!!!」


「いい加減その謎の呼び方止めてもらえないかしら……? 3年経つんだけど」


「ははは、ダメだってバニ様。ミカヌーは権利とか権威とかに弱いんだから」


「その言い方酷く無い?! もうシーエちゃん知らない! せっかくお疲れ様会開こうと思って第一居住区のヴァニラ予約してたのに」


「え、ヴァニラってあのスイーツで有名な? 人気店だよねあそこ」


「しーらない」


「ちょ、ミカヌー」


「ミカイヌちゃん、それアタシと行かない?」


「良いですねバニ様室長!」


「おいいいいいぃぃぃ!!」


 なんか、そんなこんなで長く大変だった一日は終わった。

 この数時間後に業務が始まり、バニ様とミカヌーは徹夜明けのまま仕事に従事する事になるのだが……そしてその中平気な顔してる機械のウチが更に嫉妬を食らう事になるのだが……

 まぁ何はともあれ、平和な日常は手に入れられたのだ。──多くの犠牲を出しながら。


挿絵(By みてみん)


(終わったよ、エムジ)


 あとはエムジと同じく、数千年単位のウチの孤独な戦いが始まるだけだ。



   * * *



 その数日後、ウチは正式に陸羽に登録され、陸羽勤務となった。所属先は平依存さんの下、軍監査警察だ。

 元々ネブルを救った街抗換装士として名前は売れていたので、陸羽側にもすんなり受け入れられたな。バニ様に話した通りだ。アルヴィスもウチと共に虚灯の情報をリークした者として、陸羽内の地位を向上させている。


 虚灯の存在は危険な革命派という事以上の情報は、ごく一部を除いて共有されていない。ウチの存在はもちろん、計画の内容も伝えられていない。ネブルにヱレーム入れるとか正気の沙汰じゃないしな。ネブル民は勿論、軍部でも知る人は少ない。

 街抗は元学長の反逆罪に動揺こそしたが、すぐにその機能を取り戻した。彼等は未だに、まっとうな手段でアルマを目指している。……予算の方は削られることが十七委員会の意思により決定したので、本格的な客寄せパンダになってしまったが……。ただ彼等がアルマで活動する事で、ネブルの民は希望を、夢を追いかける生活が出来るのだ。


 ウチは街抗から陸羽に所属したので、機能としては背中のニューロンデバイスを含め街抗の機能を有したままでいる。いつでも固有機《変態宣誓》に乗り、ヱレームがネブルに侵入したら対処する予定だ。そんな日は来てほしくないけど。

 ……しかし、ウチがヱレームを倒せるのは元街抗換装士だから解りやすいとして、周囲の電子汚染浄化に関しては言い訳を考えておかないとな。バニ様開発の新技術とかにしておくか。


 ヱレームがいつ来るかは解らないが、もし一度でも侵入したらネブルはパニックになるだろう。その後はネブルの民は不安を抱えながら生きる事になるが……その日が来るのが出来るだけ遅くなる様、願おう。

 またその日が来て、もしネブルの不安がピークになるのならウチの正体を明かすのも手かもしれない。その辺はその時の陸羽関係者や十七委員会と相談しつつ臨機応変に決めればいい。防衛委員長とか適当に考えてくれるやろ。人任せ人任せ。


 ウチは陸羽に勤務しつつ、バニ様と研究を共にした。ネブルの役に立つ発明も沢山出来たな。ミカヌーは……残念ながら頭が追い付いていなかったけど、超優秀な雑用へと進化した。ウチやバニ様が「アレ取って」とか言うと何故か的確に必要なパーツを渡してくる。三人の仲はどんどん深まって行った。


 バニ様は……定期的に元学長と話しをしているみたいだ。不謹慎ながら毎度盗聴させてもらってるが、特に不穏な計画は進んで無い、と思う。暗号化された会話とかだったらお手上げだけど、まぁバニ様がまたウチの記憶を消して革命派の兵器にするとか考えられないし、そこは信頼しよう。

 あ、盗聴はフィラメンタを利用している。今ではネブル内のネットを経由して行きたい所に行き放題だ。鍵がかかった扉も難なく開けられるし、それがバレる事も無い。十七委員会の議事録とかも見放題。特にウチと言う機械、異分子を排除するような動きは無いから安心だね。




 と、言う感じでウチがネブルで過ごして──1000年。初めて、特異個体がネブルに侵入をした。


 エムジは、まだ目覚めていない。

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