私をデートに連れて行って下さいませ。
ジャンルのご指摘を頂きました。
ファンタジーから、異世界( 恋愛 )に変更しました。申し訳ございません!
「久しぶりであろう?姿を見るのは。」
「………そうでございますね。」
ゴディアスは、学園にあるゲストルームの一室に通され、夕食までの時間を寛いでいた。
「あれから四年ーー時が経つのは早いのう。」
ディルヴァイスの視線が一点を見つめる。
「ーーーまだ、四年です。」
ゴディアスは、目の前でお茶の用意をしていたディルヴァイスの手が、ピクリと震え動きを止めるのを見つめていた。
「17か。そろそろ無理があるだろうーーーディルヴァイス。お前はどうする?」
ディルヴァイスは深く息を吐き、止まっていた動作を再開させる。
「どうも……私は御前に拾って頂いたのです。今はーー御前の侍従でございます。」
ゴディアスはソファの背に深くもたれかかり、顎を撫でる。
「ーーお前も強情じゃのぉ。」
「御前の侍従でございますから。」
鳶色の瞳が寂しさを滲ませ笑う。
ゴディアスは、ディルヴァイスが入れたお茶を受け取り、カップの淵にゆっくりと口を付ける。
爽やかな香りが鼻腔を抜け、少し酸味のある暖かなお茶が身体に満ちていく。
「ーーそうか。」
随分経ってゴディアスが呟く。少し口角を上げて。
* * * * *
「お招きありがとうございございます。曾お爺様。」
淑女の礼を優雅にとって、ニッコリ微笑めば、曾お爺様の小さな目が無くなるぐらい破顔致します。
夕食を一緒にとの曾お爺様からの申し出で、準備の整ったサロンへ、リュー、パティ、ローズ様達と再びやって参りました。
「マールも立派に淑女じゃなぁ、一段と可愛らしい。」
「曾お爺様、可愛いはマールがかわいそうですよ。」
「そうですは、立派な淑女でやめておけばよいのに、可愛いは余分ですわよ。」
すかさず入りましたダメ出し。リューとパティが私のために曾お爺様を諌めます。
「リューもパティもありがとうございます。ですが、曾お爺様は私を、淑女として褒めてくれましたし、可愛いとも褒めて下さいました。嬉しさ二倍なのですわっ!何も問題ございません!」
「そうですわぁ。捉え方次第ですわ。愛は盲目?と、言いますでしょ?」
ローズ様!その通りでございます!
「リューもパティも、真面目に取り合うから疲れるのよ。このお二人に関しては、適当が一番ですことよ。」
「右に同じでございます。ローズ様。」
上げて落とすローズ様もどうかと思いますが、それに同意する侍従は如何かと!
「儂は余分な事を言ったのかのう。すまん。」
シュンとなる曾お爺様がっ!耳が垂れて尻尾が垂れた曾お爺様がっ!可愛すぎでございます!
「……可愛いかしら?どちらかと言うと、見すぼらしい感じなのですが……やっぱり、愛は盲目?」
「ローズ様、毒を吐かないで下さいませ。」
口に手を持っていくと、ふふっと漏らすローズ様。
私が敬愛致します、シャリュネア・キャグッズ侯爵夫人のお嬢様なんですけど、なぜか黒く禍々しいモノが時々、背後に見えるのです……。
「さぁ、皆様方席にお付き下さい。直ぐにお料理をお出し致します。」
ディルヴァイスに促され、皆様席に着きます。
いつも食堂でいただくお料理とは違いますわねぇ。どれも凝ったモノになっております。
いえ、食堂のお食事が美味しくないと言っているのではないんですのよ!ただ、たまにはちゃんとした……いえ!たまにはこう言うお食事も良いですわねェと。少し思ったまでです…少しです…少し。
「マール。明日は何か予定があるのかな?」
フルーツを彩りよく盛られたカスタードプティングに夢中になっていると、曾お爺様が聞いてこられました。
「明日?ですか?」
口元をナプキンで押さえた後、お曾お爺様にお顔を向けます。口元に何かが付いていては、せっかく淑女として褒めて頂いたのに全ては水の泡!ここで間違いを犯してはいけませんわ!
「休みであろう?どうじゃ、久しぶりに遠駆けせんかな?」
まぁ!何と嬉しい申し出でしょう!久しぶりの曾お爺様との遠駆け!
「また、そんな無茶を。ここに来るだけで、死にものぐるいだった事を、もうお忘れですか?明後日にはお戻り頂かなくてはいけないのですよ。戻りは馬車ですけど。全く、もうろくするにも程があります。私の身にもなって下さい。」
「黙れ、ディルヴァイス!」
そうですわっ!お黙りなさい!
「私はご一緒できませんわ。明日はご機嫌伺いですの。行きたくないんですけど!」
パティがお行儀悪くテーブルに肘を付き、可愛くお口を尖らせます。
「僕も申し訳無いのですが、明日はヴァイロ伯爵子息と先約が有りまして、ご一緒出来ません。」
リューはヴァイロ伯爵子息、ユーラルク様と剣の練習なんですね。試験が近いとかーー仰っていたように思います。
「私もご一緒してよろいでしょうか?もっとも、馬には乗れないのですが。」
ローズ様もご一緒!
「でしたら御前、明日は馬車で出かけては?こちらに来る時にザネの花が一面に咲いた場所がございました。そこでお昼を取れるように手配致しますので。いかがでしょう?」
お外で昼食!なんて素敵な響!
「ーーーまぁ良かろう。マールもローズ嬢もよろしいか?」
「ええっ!楽しみですわっ!ねっ、ローズ様!」
ローズ様も微笑んでコクっと頷かれます。
「では、明日11時頃にこちらのサロンまでお越しください。」
嬉しくって、思わずローズ様の両手を取って、はしたなくも座りながら飛び跳ねてしまいました。
明日は曾お爺様とデートでございます!
ありがとうございました。