魔王me―魔物達の悩み―
たぶん数万年に一度しか出来ないようなとてつもなく大掛かりな召喚術で魔王として召喚されました!
名前はまだない!
素人の趣味妄想を綴った支離滅裂な物語ですが、よろしくどうぞ!
頭痛。
めちゃくちゃ痛い。
冷静になって状況判断が出来たところで、
改めて頭が痛いことに意識が向く。
ズキン、ズキン・・・と、重い振動が常に響く様な
そんな痛みに襲われている。
そりゃ、いきなり憑依されたんだ。
体が拒絶を起こして当然かもしれない
「い、痛い」
両手でピンク色の頭に手を当ててその場にしゃがみこむ
視界が歪み、平衡感覚を失うほどだった。
「魔王様、大丈夫か……ですか」
目の前に跪き、心配そうにこちらの顔色を伺うおっぱいが見えた。
もとい、赤髪の超絶美人のお姉さんが見えた。
「だいじょぶじゃない」
「...!おいブエル、毛布を用意しろ!」
「直ちに。」
小さな体はひょいと持ち上げられ、大急ぎで寝室に運ばれた。
あぁ、おっぱいが目の前に...
というかめっちゃ当たってる。
しかし痛みが酷すぎておっぱいの感覚がイマイチ来ない...
せっかくの役得を頭痛に邪魔されたところで、まぶたが意識と視界を遮った。
〇
目を開けるとそこには...
ギョロッとした目玉のドアップ。
なんだこれ、突っついてやろうか...
あ、いいかも。おもしろそう。
えいっ
大きな一つ目のヌルヌルした表面をぶにゅっと人差し指で押し込んだ。
「あぁ、魔王様がお目覚めにぎゃぁぁぁいいいったいぃぃぃぃ!!!」
チョウチンアンコウのように伸びた目玉から大粒の涙を流してのたうち回る牛のような魔物。
見張り役であろうか。
視界を支配していた目玉が退くと、普通に綺麗な木製の個室だった。
あるのは机と目玉が座ってた椅子。
そして俺が寝てるベッド。
それだけだった。
叫び声を聞きつけて色々な魔物が周りに駆け寄ってくる。
これ子供なら泣いてるんだろうなぁって感じのめっちゃ怖いヤツら。
「あ、やば...ごめんなさい」
怒られると思ったけどみんな申し訳なさそうな顔で
「いやいや!とんでもございません、お目覚めになられて本当にようございました!」
なんて言うもんだから、魔王ってやっぱ逆らえないくらい偉い立場なんだと理解した。
「あぁっ魔王様に触っていただけた!もうこの目玉潰れてもいいッ!!」
……やっぱ変態なだけじゃない?
「魔王様!」
バンッと勢いよく扉を開けて駆け寄ってきたのは先ほどの赤髪さんでした。
静かに入ってきてよ、頭に響く…
「魔王様、お目覚め……になられましたか。」
「うん、まだ頭痛いけど。だから静かにしてね」
「これは失礼!では静かに喋る……ますね」
だからその声がでかい。
でかいのはその胸だけで十分です。
「で、えっと……状況を整理したいんだけど、まず一つ目の質問。おr…私?って、ホントのホントに魔王なわけ?」
この体で俺はおかしいな、一人称は私で統一することにしよう。
先程ブエルと呼ばれていた、フード付きのコートに身を包んだ不気味な奴が前に出てきて答える。
顔はよく見えないが、その長くとがった鼻がチラリと見えていた。
「はい。我々が別世界から1番強いと思われるお方を、魔王となっていただくべく召喚しました。」
「なるほど。じゃぁ二つ目の質問。えっと、私はなんで呼ばれたの?魔王になって、やって欲しいことでもあるのかな。」
ブエルが、ふむ…と小さく呟いて少し考える。
「やって欲しいことですか。ズバリ人間から魔物を守ってほしいのです。」
「はい?」
え?逆じゃない?
普通この流れって、てっきり
人間滅ぼして!とか言われると思ってた。
首をかしげていると、赤髪の方が私に近づき、真剣な顔で話し始めた。
「実は…我々は、人間にほとんど手出ししていないのだ……です。」
「手を出していない…?戦ってないってこと?」
「本来、対立はしていないということだ……です。」
私が頭の中を整理しようと考えていると、ブエルが赤髪を後ろへ下がらせる
「もう少し具体的に伝えるべきです。」
「そうできれば助かるかな。つまり?」
「共存しようと歩み寄っても、見た目の怖さや、人間側の魔族は凶暴だという思い込みから恐れられ、迫害を受けているのです。ついには王都で魔族を根絶させようと、勇者達が召喚されました。」
天使に聞いた情報と随分異なる…
あいつも適当なやつだったし、すべては把握してなかったのかな。
「じゃぁ、魔族は人間を襲おうってわけじゃないんだ?」
「当然だ!……です。」
赤髪が足をどんっと踏み込んで立ち上がった。
「我々が人間達に危害を加えてなんの得になる!」
「領地を広めるとか?」
「そんな事をしたら統率するのが難しくなる!……なります。」
「なるほど」
私が魔王になった時点で何もしなければ解決かと思ったが、魔物側の悩みは深刻なようで。
魔王になったからには、やはりこれを解決しなくては平和に暮らすことは難しそうだ。
「つまり結局、私が呼ばれた理由としては……人間と仲良くしたいってことだよね?」
その場にいた魔物全員が首を縦に振った。
迫害を受け、根絶するとまで言った人間に
まだ歩み寄ろうというのか。
どんだけいい奴らなの……。
気に入った。
「分かった。魔族が平穏を手に入れるお手伝い、させてもらうよ。」
想像していた異世界生活とはかけ離れたものになってきたけど……
これはこれでやり甲斐ありそうだ。
笑顔で喜ぶ魔物たちを見て、いっそうやる気が出た私だった。
〇
「じゃぁ、まず何をするんだ?……ですか?」
「ねぇ赤髪ちゃん、その喋り方つかれない?」
まずはこの、先程から随分と話し辛そうにしている赤髪から。
「え、いや、これはその……」
「敬語、別にいらないよ。」
赤髪はホッと安心したかのように一息ついた。
「そういうなら、そうさせてもらおう。ありがとう魔王様。」
「ううん、それくらい。そうえいば、赤髪ちゃん名前は?」
「はっ!まだ名乗ってなかったか。我はテナだ。」
覚えやすくていい名前だ。
異世界の人とか魔物って随分と長い名前のイメージあったから、これは助かった。
テナにブエル。
話を聞くに、2人が魔物のツートップのようだ。
まぁ、たぶん天使が与えてくれた能力で私の方が強いんだろうけど。
能力……
「あー!」
「ど、どうした?」
「何かありましたかな?」
私は急いで布団から跳ね起きた。
頭痛など気にならぬほどに大事なこと。
それは、召喚された時に足元にあったあの本……
「説明書!どこだろう!?」
と言うかあいつは本当に天使だったのか?