2話
OFUSE始めました。
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儂が生まれてから、何年も何十年も何百年も経った。金色だった髪の毛も、徐々に色が抜けていき、今では真っ白になってしまっている。髪の毛が残っているだけでも良いと思うのが今の現状だ。
老化が始まったのは1480歳を過ぎた頃。一気に顔が老け、皺が目立つようになってきた。妻は先に旅立っているが、老化が来てから50年程で死に至った。1500歳を超えた、大往生だった。エルフの寿命はその位である。
儂も老化が始まって15年程経った。腰が曲がり、力も入らなくなってきた。人間の老化よりも一気に来る。若い時間が長い反動だろうか。そろそろ寿命を迎えようとしている。
その前に、何としてでも完成させたい魔道具があった。それがこれだ。適性を測る魔道具だ。この板に髪の毛を一つ置けば、自分の適性が解るようになっている。
解る適性は200以上。それだけの魔道具を完成させるのに、実に600年の時を使った。これがあれば、自分の好きな事を仕事に出来るとは思う。……まあ、測らなくても良い様な事まで測れてしまうからな。
ただ、努力次第で適性は覆すことが可能だ。例えば剣の適性がBで、槍の適性がAだったとしよう。槍の方が上達は早いが、努力を重ねる事で、剣の方が得意にすることは出来る。
ある意味では目安でしかない。適性が高いから、必ずその事をしなければならない訳では無い。……まあ、あまりにも適性がなければ、変えた方が良いと言うが。適性はSSSからGまで測ることが出来る。Gランクで頑張れとは流石に言えないからな。
「さて、儂の適性を測って、完成とするか。では」
髪の毛を置く。板に適性がずらりと並ぶ。ふむふむ。武器は適性Cが最高。魔法は適性Bが最高。錬金術の適性はS。魔道具師の適性はSSSになっている。200以上の適性を測るが、半分以上はGだ。そんなものだろうな。才能があるかどうかが初めに解っていれば、そこを努力する必要は無い。これが解っていれば……ディストピアになるかもしれんな。
だってそうだろう? 子供の時に夢を砕かれる事になる。そして、現実的な解を持って仕事に励むことになる。才能で抜かされれば、それまでだ。かなりの努力を必要とするのは解りきっている。
今までは適性なんて見えなかった。だからどんな人もスタートラインは同じだった。試行錯誤の連続で、努力が実を結ぶことを信じて突き進む。それだからよかったのだ。伸びしろが解っている競争は、競争にならない。才能で全てを決めるディストピアになりかねない。
ただ、それはエルフの話。寿命が短いとされる人間ならどうだろうか。己の才能のある所を努力すれば、ある程度成功した人生を送ることが出来る。エルフの様に1500年も生きるのであれば、ディストピアになるかもしれないが、50年しか生きられない人間であれば、有効活用できるとは思う。
「しかし、今更人間の町に出かけても、だな。寿命が短い。それに、行き倒れる可能性まである。そもそも体力にも衰えが来ている。本当に今更だ」
魔道具は完成した。が、使う所はここから遠い。儂の足で歩いて行けるとは思わない。……いや、待てよ? そう言えばあれがあったか。
「そう言えば、妻が生きている時に作って拒否されたあれがあったか。……完成しているが、治験が出来ないからと、実験台を拒否されたんだったか。あれを使えば何とかなるか?」
若返りの薬。大体20歳くらいの年齢に戻す薬だ。本当に効果があるのかは知らない。1度しか作っていないからな。それが残っている。ならば、今が使い時だろう。
「自分で実験する事になるとは思わなんだが。……ある程度はマジックバッグに入れて、研究室の方に行くか。恐らくだが、数年は眠ることになるとは思う。自宅でやるには眠り過ぎた時が怖いか」
研究室に移動をする前に、色々なものをマジックバッグに詰め込んでおく。……マジックバッグも儂のオリジナルの魔道具だ。これもあれば便利なんだろうが、物流を壊す可能性がある。世に出してはいけないものだとは思っている。自分で使う分には問題は無いだろう。
空間拡張と重量軽減の効果がある。時間停止は無理だった。その代わり、劣化防止は何とか付けたが。料理なんかを入れておくと、普通に腐る。ものの劣化を防ぐだけで、腐食は防ぐことが出来ない。
生き物を入れる事が出来ないという縛りはあるが、微生物やカビは普通に入ってしまう。それらを入れないように出来れば、色々と違ったんだろうが。出来なかったものは仕方がない。劣化を防ぐだけでも十分だろうとは思う。
……食品が腐るのは劣化なんじゃないかと思ったんだがな。それは別らしい。使い道としては、熟成させたい物なんかは入れておいても問題ない。ワインなんかを入れておけば、良い感じにビンテージものになるとは思う。
酒には興味がないが。生まれつき、毒物に耐性があるらしく、アルコールは毒だと判断してしまう様なのだ。故に酔えない。それでは酒を飲む意味がない。それならジュースで良かった。だから酒を保存しておく気にはならなかった。
基本的には薬やポーション類を入れていくのが基本だな。作り過ぎても劣化する。が、マジックバッグがあれば劣化はしない。ついでにマジックバッグ自体も劣化しないようになっている。
これを使う事になるのは良いが、色々と入れておかないといけないものもあるだろう。もしかしたら寝すぎて家が風化するなんて事もあり得るからな。恐らくは10年くらい眠るだけだとは思うが。
家から研究室に移動し、研究室の休憩室で横になる。……ただ、眠くはないから、睡眠薬は飲んでおく必要があるだろう。もしかしたら、無理やりに若返ることになる反動があるかもしれない。痛みが伴うかもしれない。それは流石に嫌だ。
では、若返りの薬の実験をする。次に起きた時には、若返っていることを期待する。ああ、眠気が襲ってきた。このまま眠る。痛みで体が強制的に起こしてくるという事がない様に願う。
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目が覚めた。……朝ではなさそうだ。真っ暗である。そもそもここは何処だ? 光を魔法で出す。研究室だな。……妙だな。研究室で寝る事はまず無いはずだが。特に老化が始まってからは、家で眠ることが殆んどだったと記憶しているが。
いや、違うな。段々と思い出してきた。そうだった。若返りの薬を使用したんだった。それで家では風化が怖いからと、頑丈で丈夫な研究室に移動したんだったな。……それにしても妙だな。魔道具で研究室内で動きを感知すれば、自動的に点灯するはずなんだが。
壊れたか。かなり頑丈に作ったと思っていたんだがな。何かしらの異常があったのかもしれない。それか魔石の魔力が無くなったかだな。……そうなると10年どころの話ではなく、眠っていたことになるんだが。
「そうだ。まずは姿を見ないと……服が劣化でボロボロと崩れ落ちた? 本当に何年眠っていたんだ?」
鏡を見ると、そこには若返った自分の姿が。若返る事には成功したか。……問題は服が劣化してボロボロになるくらいに時間が経過している事だが。綿の服を着ていたはずである。エルフでも綿花栽培はしていたからな。食料は作っていなかったけど、服にするための綿花は育てていたんだよ。森に自生しているものだけでは足りないからな。
着替えをマジックバッグに入れておいてよかった。……本来は埃っぽくなっているだろうから着替えようと思っていただけなんだがな。その辺のものを適当に入れておいたから、着替えも十分にある。
マジックバッグの中に居れていたものは劣化していなかった。流石にマジックバッグが壊れているという事は無かった。壊れる様には作っていない。無事なのは当たり前の事だ。
着替えて研究所を出ようとした。……入口が木の根で封鎖されている。仕方が無いので魔法で伐って進む。そして、外に出たら、エルフの都市は樹海に生まれ変わっていた。




