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魔銃士アクルス

アクルス視点。本編より前の話です。

「無能のお前には魔銃士(まじゅうし)になってもらう」


 ある日、レンガイからそう言われた。


「今日から練習を開始する。命中率を100%、いや、150%にしろ」


「魔銃士ですか?」


「ただの銃士よりは役に立つ」


「は、はあ……」


「特別に教えてやるから、あとは自分で練習しろ。分かったか?」


「はい」


(魔銃士ってなんでしょう……?)


 銃の使い方とかよりも、まずはそこが気になった。でも、レンガイは教えてくれなかった。


 結局、訓練を受けながら自分で理解するしかなかった。


 ◇ ◇ ◇


(思ってた以上に難しいんですね……)


 練習を始めて一週間。多少は命中率も上がるだろうと思っていたが、ほとんど変わっていなかった。


 昨日、レンガイが様子を見に来たが、”その腕で魔銃士を名乗るつもりか”と口うるさく怒鳴られた。


 だから、そろそろ命中率を上げないといけない。このままでは、自分の命すら危ない。


「ねえ、何してるの?」


 聞きなれた少年の声。紛れもなく魔王の声だった。


「魔王様! 危ないですよ。お部屋に戻ってください」


「何かの練習してるの?」


「魔銃士になるための特訓ですよ」


「へぇ~」


 そう言って魔王は、少し離れたところにある的を見た。そして、急に笑いだした。


「あははっ! 命中率くそ悪いじゃん」


「魔王様、”くそ”だなんて言葉は使ってはいけませんよ」


「はーい」


 でも、魔王の言う通り、命中率は”くそ”悪い。的に当たったのは一発だけで、それ以外の約五十発は外している。当たった一発も、的のかなり端っこだ。


「ちょっと貸して!」


「え、魔王様!? 危な―――」


 言い終わる前に、魔王が何発か撃った。そして見事全て、的のド真ん中に命中させた。


「アクルスもこれぐらいはできないとね」


「……さ、さすがです」


 これには感心せざるを得ない。素晴らしい命中率だ。


「ところで、魔銃士って何? 美味しいの?」


「食べ物じゃないですよ。魔銃士というのは、魔力入りの弾を使う銃使いのことです」


「魔力入りか……。じゃあ、アクルスも魔法が使えるの?」


「いいえ、全く」


「そ、そうなんだ……」


 明らかにがっかりされた。

 最近は魔術に関心を持ってるらしいので、私からも教えてほしかったのかもしれない。


「確かに、その弾からは魔力を感じないね」


「まあこれは練習用の弾ですから。魔力は込められてないのですよ」


「あんなに外してたら、魔力も無駄になっちゃうもんね」


「……そうですね」


 反論はできなかった。


「コツ、教えてあげようか?」


「え、本当ですか!? ぜひお願いします!」


「いいよ。その代わり、今度お菓子作ってね」


「ええ、約束いたしましょう」


 ◇ ◇ ◇


 魔王にコツを教えてもらってからは、かなり上達した気がする。少なくとも、的を外すことはなくなった。


 だが、まだ中心に当てるのは困難だった。


「あれからどうなった? 多少はマシになったか?」


レンガイが練習の成果を見に来た。


「は、はい」


「なら撃ってみろ」


「はい……」


(ああ、緊張してきました……)


 失敗したらどうなるだろう。怒鳴られるだけで済むだろうか。


 いや、もしかしたら、今日が命日になるかもしれない。レンガイはとても厳しい方だ。絶対に機嫌を損ねてはいけない。


「早くしろ」


「は、はい!」


 震える手も気に止めずに、慌てて引き金を引く。


 一発、二発、三発―――。


 的に全て当たったが、中心から少しずれていた。


(これは……人生終わりましたね)


 心臓がバクバクしながらも、レンガイの言葉を待つ。その時間が無限に思えた。


「……上達したみたいだな。この調子で頑張ってくれ」


「はい。ありがとうございます」


「次はちゃんと中心に当てるんだぞ。外周は許さん」


「はい」


 ああ、命拾いした。今日はたまたま機嫌がよかったのかもしれない。


 今もまだ、心臓が飛び出しそうだ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

しばらくは本編の執筆を優先する予定です。

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