表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼零戦姫  作者: ジョンソン(P)
第一章
8/9

戦乙女はかく語りき

霧雨(キリサメ) 青凪(セナ)

2月14日生まれ

年齢 11歳

身長・スリーサイズ 150cm B76 W56 H74

髪色・髪型 薄金色 ツインテール

目の色 浅葱色 

趣味 オタ活 プログラム 母との研究

好きな食べ物 ハンバーグ

嫌いな食べ物 紅生姜



霧雨(キリサメ) 紺凪(カナ)

2月14日生まれ

年齢 11歳

身長・スリーサイズ 150cm B76 W56 H74

髪色・髪型 黒 垂髪

目の色 紺青色 

趣味 読書 電子工作 母との研究

好きな食べ物 唐揚げ

嫌いな食べ物 梅干し

葵「うわぁぁぁぁぁぁん!!!そーちゃぁぁぁぁぁん!!!!!おかえりぃぃぃぃ!!!」



帰ってくるなり、熱烈な歓迎を受ける。

葵姉が全力で抱きついてきた。



蒼雅「た、ただいま葵姉・・・」


閃梨「・・・・・」

御剣先生は驚いてか、ぽかーんとしてる。


藍香「おかえり蒼雅・・・って、あら?」


奥から藍姉がやってくる。


藍香「そちらの方は?」


閃梨「夜分遅くにすいません。私はレム・トー・ディナ女学園の教師で、御剣閃梨と申します」


藍香「御剣?・・・なるほど、貴方が・・・」


藍香「っと、それより・・・姉さん、お客さんの前で失礼でしょ」


葵「ん?・・・おお、君が蒼雅の言ってたお客さんか」


葵姉は私から離れると、御剣先生に近づいて、じっと見つめる。


閃梨「あの・・・」


葵「最近の教師って好戦的なのか?」


閃梨「えっと・・・その・・・」


葵「なんてね。こっちだ、ついておいで」


葵姉は手で合図をしながら部屋の奥に歩いていく。


閃梨「お、お邪魔します・・・」


それに続いて、戸惑いつつも、御剣先生も続いていった。


蒼雅「一人で平気?」


閃梨「大丈夫だ。悪いが世話になる」


蒼雅「ええ」


そう言って先生を見送る。


藍香「えっと、状況がいまいち飲み込めないんだけど・・・」


蒼雅「葵姉から何も聞いてないのね。事情を話すわ。食事の準備でもしながら」


藍香「先にお風呂に行ってきなさい。食事は私が準備するから」


蒼雅「・・・いえ、客人もいるし遠慮しておくわ」


藍香「・・・むぅ」


流石に藍姉の料理を客人に出すわけにはいかない。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




葵「ふむ・・・骨は折れていないみたいだが、あちこち腫れてるな。皮下出血してるし・・・」


私は霧雨家にお邪魔して、蒼ちゃんのお姉さん・・・葵さんに体を診てもらっていた。


閃梨「すごいですね・・・家の中にこんな施設があるなんて」


葵「一応最低限の医療器具は揃えてあるからね。あまり使わないんだけど」


閃梨「ありがとうございます。こんな時間に診ていただいて」


葵「蒼雅の学校の先生ってんだから、無下にはできないさ。こんな時間まで何やってたのかは気になるけど」


眼鏡をくいっとあげた瞬間


ギンッ!!


閃梨「!?」


場が強い殺気で凍りつく。


葵「・・・なんてね」


殺気が消えて、元の空気に戻る。


葵「貴方はなんだか人畜無害そうだし、蒼ちゃんを誑かしたりしないだろうから」


閃梨「それは・・・ないですよ流石に」


葵「まぁあの子が誑かされるなんて万が一もないか・・・」


それはそうだ。美人の皮を被った不動明王だし・・・


葵「それで?妹とこんな時間まで何してたの?」


閃梨「う・・・」

それはそれとして少し怒っているようだ。


閃梨「実は・・・」



事の顛末を話す



葵「・・・・・」

葵さんがワナワナと震える。


閃梨「あの・・・?」


葵「うちの大事な妹に嫌がらせだと・・・ククク・・・許さん!!!」



葵「生徒会執行部とやら・・・どう償わせてやろうか・・・」


ギンッ!!!!


閃梨「っ!」


先ほどよりも強い殺気で空気が凍りつく


閃梨「あの、落ち着いてください。この問題は本人と話し合って我々教員の方で対処しますので」


葵「いや、家族として見過ごせない。第一その生徒会長は君たちよりも力を持っているんだろう?居場所も分からないようだし」


閃梨「それは・・・」


葵「立場上雁字搦めになってる職員に頼るより、私の方で対応したほうが早い」


閃梨「・・・・・・」


葵「心配はいらない。君たちに迷惑をかけるつもりはないさ」


閃梨「・・・確かに、貴方がた家族の力があれば彼女を止めることは容易だと思います」


葵「ほう・・・私達のこともそれなりに知ってるみたいだね」


閃梨「やんわりとですが。・・・しかし、これは我が校の問題でもあります」


閃梨「それに・・・あいつの事情を知った今、教師としてだけでなく、一部とはいえ事情を知る者として彼女を助けてやりたい」


閃梨「首を突っ込んでしまった以上、中途半端なことはしたくありません」


葵「・・・そうか」


葵さんはゆっくりと立ち上がり、薬棚を開ける。


葵「その様子だと、あの子から色々と聞いたみたいだね。・・・過去のこととか」


閃梨「ええ、まぁ」


葵「あの子が家族以外に自分の過去を話したのは貴方が初めてじゃないかな」


閃梨「そうなんですか?」


葵「まぁ、自分のことを話したがる性格でもないだろうし・・・」


葵「それこそ、彼女の親友である八雲ちゃんですら聞いていないんじゃないかな」


閃梨「神代八雲、ですか」


葵「彼女は蒼ちゃんがシャバで生活するようになって初めて出来た友達でさ・・・その子にすら話していないのは・・・」


葵「信頼からなのか、それとも気を遣う必要がないほどどうでもいいと思われているのかは分からない・・・だが」


葵「君の言葉を信じよう。少なくとも、こうして家に招いてるくらいだ。あの子も君のことはそれなりに信頼してるんだろう」


閃梨「それでは!」


葵「ただし、私達も協力させてくれ。話を聞いた以上無視はできないからな」


閃梨「分かりました」


葵「ありがとう。・・・よし、首洗ってろよ多賀城椿!」

葵さんは腕を回しながら不敵に笑った。


葵「ん?多賀城・・・?」


閃梨「どうかしましたか?」


葵「なぁ、その多賀城椿という子は親が政治家だったりするか?」


閃梨「確かそうですね。高等部のことはあまり詳しく知らないですが・・・」


葵「・・・父は国栄党党首の村瀬耕一(ムラセ コウイチ)。そして母が大手新聞社の室長で、多賀城美玲(タガジョウ ミレイ)・・・」


閃梨「!?どうしてそんなことを!?」


葵「ふむ・・・もしかすると、連中の居場所を特定できるかもしれないな」


閃梨「本当ですか!?」


葵「ああ。・・・そうだな、明日ちょこっと探ってみるよ」


閃梨「ありがとうございます!・・・ですが、どうして彼女のことを?」


葵「まぁ、仕事の関係で関わることがあってね。・・・丁度いいや。あのとき作った貸しを利用するとしよう」


閃梨「・・・ありがとうございます」

まぁ、詳しくは聞かないほうがいいだろう。どういう事情があれ協力してくれるということだしな。


葵「さて、診察も終わったし、お風呂でも入ってきてくれたまえ。恐らく蒼ちゃんがご飯の用意をしてくれてるはずだ。上がったら食べるといい」


閃梨「そんな!そこまでお世話になるわけには・・・」


葵「いいよいいよ。それに、今日は泊まっていきな。もう良い時間だし、折角の機会だ。私以外の家族とも話してやってよ」


閃梨「それは・・・」

おそらく、次女の藍香さんのことだろう。当時の蒼雅を間近で見ていた存在・・・それに罪華さんや白夜の元クラスメイト。

聞きたいことはいくつかある。・・・これも良い機会だ。


閃梨「すいません・・・お言葉に甘えさせていただきます」


葵「よろしい!じゃ、話はここまで!着替えは用意しておくから、ゆっくりしておいで」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



閃梨「霧雨」


蒼雅「ん?」


風呂を上がって、食事をいただき、就寝の準備をしていた私は、風呂上がりの霧雨に話しかけた。


閃梨「今日はありがとう」


蒼雅「成り行きよ。今日のことは私にも責任があったし・・・」


閃梨「家にお邪魔したこともそうだが、あの場面で多賀城を追わせたことと、過去について話してくれたこともだ」


閃梨「多賀城については・・・追いつくことが出来なかったが」


蒼雅「そこまで期待はしてないからいいわよ。むしろ、執行部のメンバーの顔が知れただけでも収穫だったわ」


閃梨「・・・・・」


蒼雅「・・・ごめんなさい、嫌味を言うつもりはなかったの。だけど、あの場面で貴方を行かせなかったら、貴方はあの親衛隊とやらに間違いなくやられていたわ」


蒼雅「重傷・・・最悪は再起不能にされていたかも」


閃梨「私は・・・お前の目にはそんなに弱く映っているのか?」


蒼雅「そうね・・・確かに貴方はそんじょそこらの人間より頑丈で、速く、強いと呼べるかもしれない」


蒼雅「でも、貴方の強さの根幹にあるものは、戦場では甘えに変わる。それはどんな武器よりも弱く、脆い」


閃梨「根幹にあるもの?」


蒼雅「良識、矜持、優しさ・・・どの言葉を当てはめるのがいいのかは分からないけれど、貴方が真っ直ぐに生きてきた人生で根付いた、経験のようなものよ」


蒼雅「私が本当に欲しかった、人が人として当然持っているものが、あの場では足枷になった。それだけの話よ」


閃梨「お前・・・もしかして」


蒼雅「いいえ。あの程度の連中、殺す価値なんてないわ。・・・でも、死ぬより怖い目には遭ったでしょうね」


蒼雅「多分、五体満足で復活できる人間のほうが少ないかもしれないわ」


閃梨「それほどまで・・・やはりお前の強さは・・・」


蒼雅「私は、自分で言うのも何だけど、強い。でも、その強さを得るために失ったものがあまりにも多すぎた」


蒼雅「いえ・・・失ったんじゃない。壊れた、というのが正しいのかもしれない」


蒼雅「私は今、その壊れたものを再び手に入れるため、日々生きている」


蒼雅「だけど、一度壊れたものは元通りにならないし。新しく手に入れたものは元々持っていたものとは違うし、本物にはなれない・・・」


蒼雅「馴染むまでにはあらゆる障害を乗り越えなきゃいけないし、膨大な時間をかけないといけない」


蒼雅「わかりやすく言えば、心に義手義足をつけているようなものね。そうやって私は人として生きていられる」


閃梨「霧雨・・・」


蒼雅「でも貴方は違う・・・貴方のことを深くまでは知らないけど、私みたいに何かが壊れたわけでもないでしょう?普段の身の振り方から分かるわ。とても真っ直ぐに生きてきたんだって」


蒼雅「ならそれは大事にするべきだし、失ってほしくはない。だから無理に私のような人間に並ぶ必要なんてない」


蒼雅「貴方は私からしたら弱い。でも人として持っているものは私より多く、優れている。だから悲観しなくてもいい」


蒼雅「手を汚すのは私のような人間が担えばいい。もう失うことも壊れることもないから」


蒼雅「だから貴方はそのまま純粋な強さを求めていけばいいわ。こっちに追いつくために歪む必要なんてないのだから」





閃梨「っ!?」

私の根底にあるもの、そしてこいつが持っているもの・・・その違いは明白だ。

こいつが強くあるのは、神の祝福のような美しいものではなかった。

壮絶な過去、失ってしまった時間と心。

彼女が本当に望んだものは二度と手に入らない・・・それらを引き換えに得た無敵の強さ。

普段の飄々として、小生意気な態度に隠された傷だらけのハート。

それは人として歪で、醜く見えるかもしれない。

でも、今こうして私に心情を吐露するこいつは、どんな戦士よりも美しく映った。


まさしく・・・


閃梨「戦乙女・・・」


蒼雅「え?」


閃梨「お前の中に、戦乙女を見た・・・」


蒼雅「はぁ?正気?あんた私の話聞いてた?」


閃梨「ああ。間違いない・・・お前は気高き戦乙女だよ」



蒼雅「っ!?」





ジジッ・・・






「黒き翼を炎で浄化し、そなたは再び舞い降りた」


「ああ・・・貴公こそは気高き真の戦乙女・・・」


「現世こそ、この・・・が、そなたと共に安寧を守ると誓おう」


「・・・ン・・ル・・・様」









蒼雅「っは!!?」


蒼雅(い、今のは・・・?)


閃梨「どうした?」


蒼雅「い、いえ・・・貴方が変なことをいうから目眩がしただけよ」


閃梨「なんだそれは・・・」


閃梨「言っておくがな、お前の強さは認めたが、学校での態度を認めたわけではないぞ」


閃梨「そもそも私の剣をナマクラ呼ばわりしたことも許してない!」


蒼雅「うへぇ・・・この流れで小言?」


閃梨「言っておくが私は諦めんぞ。お前が態度を改めるまで指導は続けるし・・・」


閃梨「お前に勝つまで強さにもこだわり続ける」


蒼雅「・・・・・」


閃梨「根底にあるもの、経験・・・色々と違うが、これは意地だ」


閃梨「大人としても、教師としても、真人間としても、私はお前に背中を見せなければならない」


閃梨「だから、この先どんな選択を迫られたとしても、自分で決めて、自分で責任を取る」


閃梨「子供であるお前に背負わさん。それが私の意地だ」


蒼雅「・・・そう。ならせいぜい頑張りなさい。真っ直ぐ生きて、戦って・・・がむしゃらに追い求めていけば」


蒼雅「私が高等部卒業するまでくらいには、一本くらい取れてるかもね~」


閃梨「くそっ・・・生意気な奴め!」


蒼雅「だからまぁ・・・それまでは見守っててよ」


閃梨「言われなくても・・・これから厳しく指導していくからな、蒼雅」


蒼雅「・・・ええ!」





藍香「・・・御剣閃梨、か。罪華の話してた通りの子ね」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ