40.白状
「これは、俺たちの問題なんだ」
レオスは、噛みしめるようにその言葉を口にした。
「俺たちが、もっとセリオンに言葉をかけていればこうはなっていなかった。そもそも、ナリアを俺が守れていればこうはなっていなかった」
ロスカは、未だにレオスが自分を責めているのだと気付いた。
途方もないほどの時間、ずっと後悔してきたのだ。
「俺は剣として、セリオンのそばにいる。数年前に、剣が壊れて魂が自由になって、セリオンを救う方法を探した。ロスカ、お前のおかげでたくさんの本を読むことができた」
「だが、セリオンを解放する方法を見つけることは叶わなかった。魔王がセリオンを打ち倒す以外に、方法はない」
ベザクでの日々が思い起こされる。
思えばレオスは、神や呪いのことを調べることが多かった。
「だから、俺はセリオンのそばを離れるわけにはいかない。セリオンがこれからも戦い続けるなら、俺もそばにいる。独りにするわけにはいかねぇ」
淡々とレオスは言った。
もうそこに、迷いなどないのだと実感させられる。
それでもロスカは、レオスの背中を押すわけにはいかなかった。
「剣になったら、もう二度と会えないんだよ……」
ロスカは涙が落ちてしまわないように、ゆっくりと言った。
声が震えてしまう。
レオスは、その言葉にはすぐに返事をしなかった。
数秒の沈黙の後、レオスは明るい声色で言った。
「ロスカ、まだ死にたいと思うか?」
「……ううん。今は毎日が楽しくて、死にたいなんて思わないよ」
「そうか。それなら、もう俺がいなくても大丈夫だ。これからは自分の意思で選択して、自分の道地を生きろ。それが俺の最期の願いだ」
「どうして最期なんて言うの。私レオスを守るためなら、何だってするよ。だから……」
「元々、俺はもう死んでる存在だ。そもそもこうして現代の人間たちと話せているのが奇跡みたいなもんだ。それに、ものにはできなかったが、チャンスももらった。十分色んなものをもらったんだ」
レオスが微笑んでいるのが、声色でわかった。
ロスカの見つめる先は、『裁き』を下したあの男だ。
この男さえいなければ、レオスを連れて逃げられる。
ロスカは腰を上げた。体が鉛のように重い。
まだ体が完全には回復していない。
「お前のことは、俺が一番よく知ってる。今、何を考えているのかもな」
レオスは、まるでロスカが何をしようとしているのか知っているようだった。
「俺は、だからお前と旅をしてきた。ロスカなら俺と違って、仲間を大切にできる。最期に最高の仲間に出会えた。いい冥土の土産になるぜ」
ロスカは手錠を壊そうと、両腕に力を込めた。
鎖の部分なら、何度か力を入れたら壊せるかもしれない。
「ドルミア」
呪文が聞こえた。レオスの声だった。
その途端、ロスカの瞼が重くなる。
このままでは倒れてしまう。
ロスカは、地面にへたり込んだ。
だめだ、瞼を閉じたらレオスとお別れになってしまう。
ロスカは、夢の世界に引っ張られそうな意識を必死に連れ戻そうとした。
「レオス……どうして……」
ロスカは、レオスに手を伸ばした。
段々、自分が何をしているのかわからなくなってきた。
「隠し事は全部話しておかないとな。これで使える魔法も全部教えたぜ」
瞼を閉じる。
心地が良い。
「今までありがとう。幸せにな」
レオスの今までで一番優しい声色を聞きながら、ロスカは眠りに落ちた。
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