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1-31 天星の共鳴と反撃の光焔

夜空を覆っていた禍々しい紫黒の結界が霧散し、湖畔には冷徹なまでに清澄な月光が降り注いでいた。

だが、戦場に流れる空気は以前にも増して濃密だった。

「ヒュペリオン…貴様、力を取り戻して戻ってきたのか…!」

紫苑が忌々しげに吐き捨てる。

かつて自分を地獄の底へと突き落とした元凶。

その執事服に身を包んだ優雅な神の姿は、紫苑にとって何よりも耐え難い屈辱の象徴だった。

「久しぶりだね、紫苑。あるいは、地獄の底から這い上がってきた『復讐者』と呼ぶべきかな?」

ヒュペリオンは手にした銀の杖―聖杖アイオーンを軽く回しながら泰然と構える。

その隣では、覚醒した水希が翡翠色の光を纏い、毅然と前を見据えていた。

「勇飛君…。もう大丈夫。今度は私がみんなの力になるから」

水希の瞳が薄っすらと星の輝きを宿す。

それは万象の真理を射抜き、敵の弱点を露わにする慧眼。

天星の瞳(ルミナス・アイ)

彼女の視界には、アスタロトの体内に渦巻く猛毒の奔流と、その核となる魔力の結節点がはっきりと映し出されていた。

「生意気な小娘が…。神が一人増えたところで、わらわの毒からは逃れられぬわ!」

アスタロトが鋭い爪を振るう。

「喰らえ、毒竜の爪撃(ドレイク・クロウ)!」

毒の魔力で形成された巨大な三条の爪痕が、空間を引き裂きながら水希へと迫る。

「流華、いくよ」

「はい、ヒュペリオン!」

二人の呼吸が完璧に重なる。

ヒュペリオンが杖を掲げ、高らかにアルカナの真名を解き放った。

天星共鳴(アルカナフォース)正義(ジャスティス)!」

ヒュペリオンの前に、黄金の天秤を模した光の盾が出現する。

第11のアルカナ『正義』。

それは「因果応報」の理を意味し、アスタロトが放った腐食の爪撃は、その光の盾に触れた瞬間、あべこべにアスタロト自身へと跳ね返った。

「なっ…!? わらわの攻撃が!」

「自分の毒に焼かれる気分はどうだい? あまり趣味の良いものじゃないだろう?」

ヒュペリオンが皮肉げに微笑む。

跳ね返った衝撃に怯むアスタロトを逃さず、水希が祈りを捧げた。

「みんなに…聖天の施しを! 天星の祈り(ルミナス・マグナ)!」

水希から放たれた翡翠の光が、倒れていた勇飛たちの身体に溶け込んでいく。

「…力が溢れてくる。さっきまでの重い毒が嘘みたいだ」

勇飛が己の拳を握りしめる。

「これが水希様の神使いの力…私たちの失われた神魔まで回復されるなんて」

「水希の嬢ちゃんの力…すげぇな、この力があればあいつ等に反撃できそうだぜ!」

水希の神魔を変換して分け与えられたその力は単なる回復ではなく、勇飛たちの神魔の出力を極限まで引き上げるブーストのようなものだった。

「行くぞ、ガブリエル、ヘラクレス!」

「はい、勇飛様!」

「おう、この借りは百倍にして返してやる!」

勇飛たちの反撃が始まった。

「チッ…鬱陶しい雑魚どもが! 死ね! 毒蛇の弾丸(ハイドラバレッド)!」

紫苑が指先から凝縮された毒液を連射する。

一発一発が岩石を溶かす威力の弾丸。

だが、ガブリエルがその前に立ちふさがる。

「そんな攻撃、もう通じません! 守護の盾!」

ガブリエルが掲げた腕の先に、神聖な光を纏った大楯が出現した。

ハイドラバレッドの弾丸が次々と激突するが、大楯はびくともせず毒液を光の粒子で浄化しながら弾き飛ばしていく。

「今です、ヘラクレス!」

「応よ! 待たせたな相棒、暴れようぜ!」

ヘラクレスが咆哮する。

水希の『天星の祈り』を受け、アスタロトの毒でボロボロに朽ち果てていたはずの彼の大剣が、眩い闘気を纏って再生していく。

「これが俺の本気の力だ! 闘神の剣!!」

黄金の闘気を宿し、以前の数倍にも膨れ上がった闘気を纏った大剣が、空気を切り裂きながら紫苑へと振り下ろされる。

「ぐっ、この馬鹿力が…!」

紫苑は間一髪で後方へ飛び退くが、大剣が地面を叩いた衝撃波だけで周囲の地面がクレーターのように陥没した。

そこへすかさず勇飛が光の残像を残しながら肉薄する。

「イメージしろ…。貫く力、光の弾丸を!」

勇飛の右拳に、超高密度の闘光が収束していく。

「闘光の具現化・闘光の拳撃(ブレイヴインパクト)!」

「なにっ…!?」

紫苑が防御を展開する暇もなく、勇飛の拳が空気を爆ぜさせた。

具現化された光の衝撃が紫苑の腹部を直撃し、彼を湖畔の岩壁まで吹き飛ばす。

「くそがっ…アスタロト! 何をしている、早く奴らを殺せ!!」

岩壁に背中を打ち付けた紫苑が狂乱じみた声でに叫ぶ。

「言われずとも…! 小癪な神共め、まとめて腐らせてくれるわ!」

アスタロトが空中で旋回し、その禍々しい翼を広げた。

「吸い込め、呪毒の息吹(カースドヴェノム)!」

大気を汚染する紫黒色の霧が津波のように勇飛たちへ押し寄せる。

その毒はまるで魔力回路を焼き切る死の霧のようだった。

「させません! 守護の剣!」

ガブリエルが空に向けて手をかざすと、その周囲に無数の光の剣が出現した。

「行きなさい!」

放たれた光の剣が迫りくる毒霧を切り裂き、その熱量で霧を蒸発させていく。

さらに一部の剣はアスタロトの四肢を狙って飛翔し、彼女の動きを制限する「檻」のように周囲に突き刺さった。

「ぐっ、このっ…ちょこまかと!」

アスタロトが光の剣を振り払おうとした瞬間、ヒュペリオンが静かに指を鳴らす。

「アルカナの共鳴は連鎖へと繋がる。天星連鎖(アルカナリンク) 節制(テンパランス)×(クロス)隠者(ハーミット)!」

第14のアルカナ『節制』によるエネルギーの調和と第9のアルカナ『隠者』による「不可視の結界」が組み合わさる。

ガブリエルが防ぎきれなかった僅かな毒の残滓は、ヒュペリオンが展開した透明なフィルターを通り抜けることで一瞬にして清らかな風へと変質した。

「『節制』は混ぜ合わせ、鎮める力。そこに『隠者』の遮断を加えれば、君の毒はただの紫色の煙だ」

「貴様…どこまでわらわを愚弄すれば気が済むのだ!」

戦いは熾烈を極めていく。

紫苑は再び立ち上がり、憎悪に染まった神滅の力をさらに引き出す。

彼の周囲には数千もの小蛇のような毒の触手が発生し、うごめいている。

「まだだ…まだ終わらん! 俺の受けた屈辱は、お前たちの血で洗わねば気が済まないのだ!」

「紫苑…君はまだ、過去に縛られているのか」

復讐の憎悪に捕らわれる紫苑の嘆きに憐みの表情を見せるヒュペリオン。

「俺は水希を守ると決めた。お前の憎しみに俺たちの未来を壊させはしない!」

勇飛が、自身の両手に光の双刃を具現化させながら告げる。

「黙れ! 理想を語るな! 毒蛇の領域(ハイドラレギオン)!」

数千の毒蛇が一斉に勇飛たちへと襲いかかる。

「ヘラクレス、援護を頼む!」

「任せな! 闘神の旋撃!!」

ヘラクレスが巨大な剣を独楽のように回転させ、迫りくる毒蛇の群れを次々と断ち切っていく。

斬られた毒蛇は神聖な闘気によって浄化され、霧となって消えていく。

「隙ありだ、紫苑!」

勇飛が跳躍する。

空中で光の双刃を一本の巨大な光槍へと変形させる。

「闘光の具現化・闘光の墜槍(ブレイヴヴァイク)!」

「させるかよ!!」

紫苑が両手を突き出し、毒の障壁を幾重にも展開する。

しかし、その障壁の「綻び」を、水希は見逃さなかった。

「そこです! 勇飛君、左下、三番目の接点!」

水希の天星の瞳(ルミナス・アイ)が紫苑の放つ障壁の弱点を射抜く。

勇飛はその言葉を信じ、光槍を一点に集中させて突き出した。

「らあああああ!!」

パリンと硝子が割れるような音が響き、紫苑の防御壁が砕け散る。

光槍の衝撃が紫苑の肩を掠め、彼を再び地面へと叩き伏せた。

「…バカな。俺の神滅の力が、あんな小娘の助言一つで…!」

「それが『絆』の力だよ、紫苑。君には無い彼らの力だ」

ヒュペリオンが冷徹な視線を向ける。

追い詰められたアスタロトの形相が鬼気迫るものに変わる。

その胸の奥、心臓が不気味に脈動を始めた。

周囲の草木が瞬時に枯れ果て、湖の水がどす黒く変色していく。

「…遊びは終わりだ。この地を、未来永劫生命の絶えた死の荒野に変えてくれよう」

「あれは…!」

ヒュペリオンの表情が一瞬強張り、眉間に皺を寄せる。

「心臓よ災厄を刻め。鼓動よ終焉を奏でよ。わらわの血は毒、吐息は死、存在こそがこの世の病。命あるものすべて腐り果てて大地へ還れ…」

アスタロトが詠唱を始める。

アスタロトの禁忌術…災厄の(ベノムコア)心臓(レゾナンス)

この禁忌の術が発動すれば、このエリアにいる全員の細胞が内側から崩壊する悍ましいものだった。

紫苑が狂気混じりの笑みを浮かべた。

「ははは! 死ね、死ね、死ね! 貴様らの全てを毒で焼き切り、その絶望に満ちた死に顔を拝んでくれる!」

アスタロトの全身より強大な瘴気の毒素が、文字通り「死」そのものを意味するように溢れ出した。

大気が絶叫を上げ、空間が毒の重圧で軋む。

「いいえ、そんなことはさせない」

水希が一歩前へ出る。

「勇飛君、ガブリエルさん、ヘラクレスさん…力を貸してください。アスタロトの心臓が限界まで高まった瞬間、その衝撃を抑え込み、光を打ち込む必要があります」

天星の瞳によりアスタロトの僅かな弱点を見抜いた水希が勇飛に協力を仰ぐ。

「了解だ。俺たちの全力をぶつける!」

水希に呼応するように勇飛が叫ぶ。

「ガブリエル、ヘラクレス、準備はいいかい?」

ヒュペリオンの問いに二人も力強く頷く。

「守護の力を最大限に! 守護の神域!」

ガブリエルが放った光が、仲間たちを包み込むように巨大なドーム状へと変化する。

「オレの闘気も全部乗せてやる! 勇飛、ぶちかましてやれ!!」

ヘラクレスが勇飛の背中に手を当て、己の全闘気を集中し、譲渡する。

「流華、僕が道を作ろう」

ヒュペリオンが杖を掲げる。

「天星連鎖 恋人(ラヴァーズ)×(クロス)審判(ジャッジメント)!!」

第6のアルカナ『恋人』による共鳴と第20のアルカナ『審判』による最終宣告。

ヒュペリオンと水希の魔力が混ざり合い、勇飛が具現化した光の槍を神話に語られる聖槍へと昇華させていく。

「これまでの…みんなの想いをこの一撃に捧げる!!」

勇飛の両手に、身の丈を超えるほど巨大な光の槍が具現化された。

それは水希の翡翠色、ヒュペリオンの白銀、ガブリエルの黄金、ヘラクレスの紅蓮の闘気が混ざり合った、七色の輝きを放つ「希望の槍」のようだった。

「人間如きがぬかせぇええ!すべての毒に飲み込まれよ、 災厄の(ベノムコア)心臓(レゾナンス)!!」

アスタロトから万物を死に至らしめる漆黒の衝撃波が放たれる。

それに対し、勇飛たちも魂を浄化する虹色の極光を解き放つ。

「「「「はああああああああ!!」」」」

衝突の衝撃で大地が砕け、湖の水が完全に蒸発して巨大な空洞を作り出す。

漆黒の毒と虹色の光がせめぎ合う中、水希の瞳が真理を捉えた。

「今です!! 心臓の鼓動の間隙、そこ!!」

勇飛はその「隙」を突き、槍を全力で投擲した。

光の槍は漆黒の衝撃波を真っ向から切り裂き、アスタロトの胸の中央…『災厄の心臓』を寸分の狂いもなく貫通した。

「あああああああああああ!!馬鹿な、六天魔王であるわらわが…こんな、人間に…」

断末魔の叫びと共に、アスタロトの身体が眩い光の粒子となって崩壊していく。

虹色の極光がアスタロトの『災厄の心臓』を貫き、湖畔を揺るがした光の奔流が収束していく。

爆風と水蒸気が晴れた中心で、紫苑は力なく地面に転がっていた。

「がはっ…、ぁ……」

口の端から溢れるのは、もはや鮮血ではなく、どす黒く濁った毒の残滓だった。

アスタロトという強大な「核」を失ったことで、無理やり人間を辞めてまで維持していた彼の肉体は、内側から崩壊を始めていた。

指先から、足の先から、不気味な紫色の塵となって、夜風にさらわれていく。

「…また、か…」

霞む視界の先。

そこには、かつての廃工場で自分を見下ろした時と同じ、翡翠色の光を纏った水希が立っていた。

脳裏を過るのは、数ヶ月前のあの屈辱的な黄昏時だ。

『あなたの命までは取ったりしません』

あの時の水希の言葉。

慈悲に満ち、濁り一つなかったあの瞳。

それが何よりも、何よりも紫苑を苛んだ。

敵としてすら数えられず、ただ「可哀想な、道を踏み外した人間」として処理されたあの瞬間。

あの時、喉元を掻きむしりたくなるような屈辱の中で出会ったアスタロト。

地獄から差し伸べられた彼女の毒だけが、自分のプライドを繋ぎ止める唯一の「力」だったはずだった。

「六天魔王の…悪魔の力を得て…人間を超えた、はずの…この俺が…」

震える腕で土を掴もうとするが、その指は既に形をなさず、砂のように崩れていく。

背後に立つヒュペリオンが、アイオーンを肩に担ぎながら冷ややかに見下ろしていた。

「前にも言ったはずだよ。相手を見てから戦いを挑むべきだった…とね」

その声、その、ゴミを見るような、あるいは取るに足らない道端の石ころを眺めるような声音。

かつての廃工場で浴びせられた「拒絶」が、いま再び完成しようとしていた。

自分を強化し、悪魔に魂を売り、どれほどの憎悪を積み上げようとも、彼らから見れば自分は「救われるべき対象」か「排除すべき障害」の域を出ないのだ。

「…笑わせる…な…。俺は…貴様らの、同情など…欲しく、はなかった…」

紫苑の片目に宿っていたアスタロトの金色の輝きが急速に色褪せていく。

胸の奥に、かつてのヒュドラを失った時とは違う、空虚な寒さが広がった。

あの時、記憶を失うことさえ拒んで憎悪にすがったのは、そうしなければ自分の存在が世界から完全に消えてしまうと分かっていたからだ。

水希流華という眩しすぎる太陽の陰で、名もなき悪党として忘れ去られることを、何よりも恐れていた。

だが、現実は残酷だった。

どれほど牙を剥いても、どれほど毒を撒き散らしても、結局自分は彼女の隣に立つ勇飛たちの絆を、さらに強固にするための「試練」に過ぎなかったのだ。

「…クク、ハハハ…皮肉、だな…」

最期の瞬間、紫苑の口から漏れたのは、狂気ではない、自嘲の笑いだった。

復讐という名の鎖で自分を縛り、悪魔と血の契約を交わしてまで手に入れたかったのは、彼女を屈服させる力ではなく、彼女の記憶に「決して消えない傷跡」として刻まれることだったのかもしれない。

「もういいですよ…」

水希が一歩、紫苑へと近づく。

その瞳には、やはり数ヶ月前と同じ深い悲しみと憐憫の色が浮かんでいた。

「…やめろ。その目、で…俺を、見るな…っ!」

紫苑は最期の力を振り絞って叫ぼうとしたが、声は掠れた吐息にしかならなかった。

彼の身体は、腰のあたりまで既に塵となって消えている。

「流華、もう終わるよ」

「ええ。さよなら、紫苑さん。あなたの悲しみも、この光と一緒に静かに眠ってください」

水希がそっと手を差し伸べると、彼女から溢れる翡翠の光が崩壊していく紫苑の身体を優しく包み込んだ。

それは毒によって狂わされた彼の魂を解き放つ、最期の慈悲だった。

「…、……」

紫苑は何かを言いかけ、そして、ゆっくりと目を閉じた。

憎悪に塗りつぶされていた視界が、最期に見たのは、忌々しいほどに美しい月光と、自分を最後まで「人間」として見ようとした、少女の涙だった。

塵が風に舞い、湖の面へと消えていく。

そこにはもう、復讐に燃えた男の姿も、毒竜の魔王の気配も残っていなかった。

ただ、夜露に濡れた草地と、静寂だけがそこにあった。

「…彼は、救われたのでしょうか」

ガブリエルが静かに問いかける。

「さあね。でも、少なくともあのまま憎しみの泥に沈んでいるよりは、ずっとマシな終わり方だったと思うよ」

ヒュペリオンは空を見上げ、薄く笑みを浮かべた。

湖畔に訪れた平穏。

それは一人の男が全てを懸けて挑み、そして何も残せずに消えていった証でもあった。


湖畔を渡る風は、先ほどまでの血臭と毒の気配をすっかり運び去り、穏やかな夜の香りを届けている。

「…終わったんだな」

勇飛が膝をつきながらも満足げに空を仰ぐ。

「勇飛君!」

水希が駆け寄り、彼の無事を確認するように両手を取った。

その手はまだ少し震えていたが、温かさを感じた。

「水希…。君のおかげだよ。ありがとう」

「ううん、勇飛君が…みんなが信じてくれたから、私も勇気を出すことができたんだと思うの…こちらこそありがとうございます…」

二人が見つめ合う中、ヒュペリオンはやれやれと肩をすくめながら、いつの間にか取り出したティーカップに透明な液体を注いでいる。

「全く、熱いね二人とも。まるで天界まで当てられそうな光だよ」

「もう、ヒュペリオン! 茶化さないでください!」

「ははは、悪かったね。でも流華、君は本当に立派だった。契約者の鏡だよ」

ヒュペリオンの言葉に、水希は照れくさそうに微笑んだ。

絶望の淵から掴み取った勝利。

勇飛と水希、そして彼らを支える神々の絆は、この激戦を経て、より一層強固なものへと変わっていた。

だが、この戦いはまだ、大きな物語の序章に過ぎない。

夜空に輝く月の光が照らし出した彼らの背中は、どこか誇らしく、そして次なる困難に立ち向かう決意に満ちていた。

「さあ、そろそろ帰ろうか。」

勇飛の言葉に、全員が力強く頷く。

湖面に映る月の光は、彼らの進むべき未来を祝福するように、黄金色に輝いていた。

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