その2
わたしが国際探偵機構・日本特別部隊と関わるきっかけ
SNS、ブログ、ピクシブに同時掲載
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そもそもわたしが日本特別部隊、一般的にデテクティヴレンジャーと知られている(というよりもシャレでわたしが使った言葉がいつの間にか広まってしまった)ものに関わることになったのは本当に偶然だった。
わたしがこの町に引っ越してきたのは幾度となく記してきたように昨年のことで、隣に住むのが中島春子だった。ただその時点では単に挨拶をした程度でまさか今のように様々な事件に直接関わることになるとは思いもしなかった。
『もしもあのとき、こうなることを知ってさえいたらこんなことにはならなかったのに』
そう思うときがたまにある。
けれどもわたしは関わってしまったのだ…事件の目撃者として、そして記述者として。
ただまさかこの二年の間に普通の女子高生にすぎないわたしがマニュアルを含む自動車や飛行機、はてには宇宙船などの運転をせざるおえない事態にまで巻き込まれるとは思いもしなかったけれども。未成年なのにマニュアル車の運転を完全にマスターしてしまったのは状況が状況だけに複雑な気持ちではある。
そもそもの…ある意味での失敗はその日新しく住むことになる町の把握をしようとちょっとした冒険気分で出かけたことだった。
これまでの生活から一変してまるで別世界にいるような気分で…少々浮かれていたともいえた。だから油断をしていたといわれてしまえば返す言葉がない。
運命の場所となったのは町の中央に位置する志村研究所…国際探偵機構日本支部に協力する志村昭彦を所長とする個人によるものながら、犯罪に関する分析や国際探偵機構が所有する道具類全般の開発も一手に担っていた。そもそもデテクティヴレンジャーの特殊服や道具類もすべて志村博士による発明であり、間違いなく天才ともいえる人物だった。ただ同時に運の悪い人でもあった。
わたしはそのとき志村研究所を外から眺めていた。建物は外から見るかぎり、シンプルなつくりでそこまで敷地が広いとはいえなかった。けれども、後々知ることになるのだけれどその地下にはさらに大きな施設が整っていた。わたしが知ることが出来たのは一部だけで、いったいどの階層まであるのかわからないほど巨大な構造でそれらを秘密裏に、かつそれを作れるほどの莫大な資金を得る技術を志村博士は持っていた。
そのときはまだそんなことを知るよしもなかったのだけれど、ちょっとした好奇心で敷地内にこっそりと忍び込んでしまった。
想像以上にシステムは完備されていた。ものの数十秒でわたしは警備員に取り囲まれていた。
警備員の他に研究者も続々と集まってきてわたしは自分の軽率さを悔やんだけれど、その集まってきた人々の顔ぶれの中に見たことがある顔…中島春子の姿を見つけたのである。
もともと小学生高学年あたりから探偵の才能は世間に知られていたそうで、さらにはスパイダーに関わるある事件を中学生時代にひとりで真相にたどり着いたことにより特例的に特別探偵として国際探偵機構のメンバーに加入していた。
なんとか彼女の説得もあって警備員からは解放されたのだけれども、とりあえず聴取されることとなり研究所内へと連れられたのである。
そして事件…消える盗難犯人事件は起きたのである。
これはすでに幾度となく報道されているし、わたしが最初に記録・発表することとなった事件だから詳細は省くけれども特殊服に関する設計図及びそれに必要な化合式などすべてが盗難される事件が起きたのである。
突如として研究所内に鳴り響く警報音に、わたしたちは地下2階部分にいたのだけれど素早く壁に設置されたディスプレイに表示された地下三階の部屋へと駆け出した。そしてそこで発見したのは、その部屋で仕事をしていた研究員三人の死体と鮮やかな服と仮面をつけた怪人物が逃げていく後姿だけだった。
足の速い中堅の研究員を先頭にわたしたちはその怪人物を追いかけたのだけれど曲がり角でぶつかったのは別の階で仕事をしていたと言う若い研究員だった。
若い研究員は騒ぎを聞きつけて駆けつけたといい誰も来なかったと証言をした。そしてその通路には他に逃げ込める部屋もなく空気のように怪人物は消えうせてしまったように見えた。
ある程度古典ミステリを読む人なら曲がり角でぶつかった若い研究員を疑うことだと思うし、実際その場で身体検査等が行われたけれども設計図はおろか怪人物が身につけていた仮面すらも見つからなかった。
けれどもその場には中島春子を含めて探偵が何人もいた。そして彼らはすぐに真相にたどり着いた。
発表した手記に書いたように面白いのは各人それぞれ別々の推理をしながら最終的にある人物へと至ったことだった。
彼らはみな先頭を走っていた中堅の研究員を共犯者として指摘したのである。
研究員は全員白い白衣を着ていたけれども、ぶつかったときにその内側に作った大きなポケットに設計図を隠したのである。
そうそう怪人物が身につけていたものだけれども、これが探偵小説ならアンフェアといってもいいもので仮面と身につけていたものはスパイダーが開発した圧縮装置によってそれぞれ片手に乗るほどの大きさにたためられて同じように内側のポケットにしまいこまれていたのだった。
本来は短編の予定が色々とあってほんの少しだけ長くなる予定