石川悠也先輩。
車の免許取得のために教習所に通って卒業試験と最後の学科試験受けて来ました。結果は合格。
この物語の更新を待ってくださっていた方々に謝罪します。
更新遅くなってしまいました。すみませんでした。
友音サイド。
部活動2回目にして部員の雰囲気がピリピリしてるというのはどういうことなのだろう?
昨日は高梨先輩が教室に来てその日の部活動が休みになることを聞いた。それはいいとしよう。今日のこれは何だ?
主におかしいのは高梨先輩と早乙女先輩と笹森先輩の3人。いつも前回は丁度いいくらいの距離感を保っていた3人が今日は笹森先輩を挟むような形で高梨先輩と早乙女先輩が陣取っている。しかも距離が近い。
そして、笹森先輩は笹森先輩で高梨先輩と距離が近いことを喜べばいいのに、今日は顔を青くさせて下を向いている。そんな中高梨先輩が言い出した。
「今日はさ、グループに別れて写真を撮ってみない?」
早乙女先輩はすぐさま賛成する。石川先輩は無反応だ。
「別にいいけど、グループはどうするんですか?」
私が聞くと高梨先輩は、笹森先輩、高梨先輩グループ、私、早乙女先輩、石川先輩グループになることを提案した。私は特に反対することもないので賛成。提案した二人はもちろん賛成。笹森先輩は助けを乞うような目で私を見てきている。石川先輩も賛成した。
そんなこんなで私達は4階の渡り廊下へやってきた。
と言っても、無言でここへ来た石川先輩についてきただけなんだけどね。
石川先輩はカメラを準備してじっと座っている。
早乙女先輩は飛んできた鳥などをカメラに収めている。
私は一体何を撮ればいいのだ。
いや確かに発送が柔軟な人からしたら撮れるもの沢山あるかもしれないけど、なんか何を撮ればいいのかわからなくなる。
ふとグラウンドのある方を見た。テニスコートではテニス部が、端っこの方では野球部が、そしてグラウンドの真ん中ではサッカー部が練習をしていた。
この学校は女子サッカー部もあるらしく、女の子がボールを追いかけている姿もチラホラ見える。
見るのに飽きて後ろを振り向くと、そこには石川先輩しかいなかった。
「石川先輩、早乙女先輩はどこ行ったんですか?」
「さっきどっか行った」
私はきちんと質問に答えが返ってきたことにびっくりした。私の知っている石川先輩はあまり質問すらも返さないからね。
私は先輩の隣に座り、先輩が眺めている方向を見た。
空は青く澄み切っている。
「起きたのか?」
気付いたら空は朱く染まっていた。カメラを片している先輩は上着を着ておらずどうしたのだろうと思って動こうとしたら、肩からずり落ちるものをかんじた。
拾ったらそれは結構大きいこの学校のブレザーだった。
「まさか、こんな失態を…ほんとすみません」
私は先輩にブレザーを返しながら謝る。
「………寝てないのか?」
「いや、そんなことないと思うんですけど…」
「………眼の下隈が出来てたのに?」
その言葉に寝顔を覗かれたことに気づく。最悪と思いつつ、これはこの人のそばで寝てしまった自分が悪いと思い直す。
「最近いろいろありすぎて、疲れてるのかも?」
私がそういえば、先輩は少し考えるように手を顎に添える。
「お前は、進路について悩んでるのか?」
そう言われて、私は不思議になって尋ねた。
「どうしてですか?」
「お前が寝てる時、夢って連呼していた」
それを聞いた私の頭に、元親友の後ろ姿がよぎった。
「………先輩は親友だと思った人との関係が、傍から見たら違っていたらどうします?」
なぜ私がこれを聞こうとしたのかは自分でもわからない。でもきっと結愛の名前を聴いてしまったからだろう、と自分の心に言い訳を言った。
「………怒鳴りこみに行く。お前はどう思ってんだ?って。まず、相手にぶつかんないとどうともならないからな。相手に聞いて、相手も自分のこと親友だと思ってたらそれは親友だと思うし、そう思っていないと答えたらそれまでの関係だったってこった」
その言葉に私はハッとした。私、あの子と喧嘩したことない。
二人で部室へ帰ると、そこには早乙女先輩、笹森先輩、高梨先輩の三人がそろっていた。
「先輩、勝手に戻んないでくださいよー」
私がそう言うと、先輩は手を合わせてごめんねと謝ってきた。そうやってすぐに謝れるところはいい先輩なのになと思いつつ笹森先輩の顔を見ると、案の定目が赤くなっている。きっと泣きはらした後だろう。
先輩たちが何を喧嘩しているのかはわからないが、まだ入ってきたばっかりの私が関わることでもなさそうだし、スルーさせてもらう。
部員が集まったことで高梨先輩に大会のことを聞かされ、そして今日の部活が終わった。
帰宅のための道で考えるのは結愛のこと、そして意外と石川先輩の言葉と部室へ戻る途中に見せてもらった先輩が撮った夕焼けの写真。先輩いわく、今日行った場所は学校で一番夕焼けが綺麗に見える場所らしい。
先輩の言ったとおり、写真に写っている夕焼けはとても綺麗だった。そしてなにより、それを見せているときの先輩はとても誇らしげで、写真を撮るのが好きなんだなということが伝わってきた。そのせいでつい先輩を撮ってしまったのは仕方がないことだと思う。前髪で隠れて目は見えないはずなのに、ここまで先輩の気持ちが伝わってくるとは思わなくてびっくりしたというのもあったと思う。
そして、先輩の言葉で私は結愛に気を回しすぎて、正面からぶつかることが足りなかったんだなと今更になって気づいた。
あの子ばっかり、親友になろうとしてなかったと思っていた私は、改めて自分の努力も足りなかったことに気付かされたのだった。
さて、結愛嫌いで友音好きな人からしたらこの話はそこまでいい話ではないでしょうなと思います。
ただ、友達としてうまく行かない場合はきっと元の相性が合わないのだろうと思う時もあります。
ここで、結愛に合うために友音がしなきゃいけなかった、結愛に自分の不満や不安を言う努力が足りてなかった。喧嘩してもお互いを、自分をわかってもらおうとしなかった。ということを書きたかったのです。
多分、親友を作るうえではそれも大切なことだと思うから。
そして、石川先輩はただの根暗じゃない。ただの自己中じゃないということです。