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俺、死んだの?  作者: と〜や
神の国編

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47.大人と子供

「こんな服やだっ」

「わがままいわないのっ。アンタがいきなりおっきくなるのがいけないんでしょっ」


 ナオトがどんどんいろんな服を作ってくれる。でも、どれも女の子っぽいというか、女っぽい服ばかりで、なんかやだ。


「オレだってこんなに急におっきくなるなんて……思ってなかった」

「嘘おっしゃい、ハルがおっきくなったのを見て、自分も遊人の隣に立ちたいって思ったんでしょ?」


 ソファにぺったりすわったままのオレの前に、ナオトは自信たっぷりの顔で仁王立ちする。

 そりゃさ、遊人と同じぐらいにでっかくなって一緒に物を運んだりしてるハルがうらやましかったよ。オレだって遊人と肩を並べて同じことをやりたかったんだ。

 ハルにできたんだから、オレにだってできるはず。

 オレも遊人の隣に並びたい。――そう思っただけだ。

 でも、ダメ、だったのかな。……オレを見た時の遊人、なんかいつもと違った。

 いつもならすっげえいい顔で笑ってくれて、オレのこと、抱きしめてくれんのに。……目も合わせてくれなかった。


「だって……遊人に嫌われた」


 しょんぼりとうなだれる。

 頭の上にぽんと何かが乗った。ゆっくり頭を撫でられる。


「バカねえ。アイツがアンタのことを嫌うわけないでしょ?」

「だってっ……オレのこと、ちっとも見てくれなくて……」

「あらま、遊人ったらほんと、ヘタレねえ。……リオ、アンタは綺麗になったわ。遊人はヘタレだから、今のリオがまぶしいのよ」

「まぶしい?」

「そう。きっと限界超えちゃったのね」


 ナオトの言葉が難しくて、オレは首をかしげる。


「いいのよ、アンタは今のまま変わらなくて。遊人がアンタを好きなこと、分かってるでしょ?」


 分かってる。オレも遊人のこと、大好きだ。でも、人から言葉で言われたらなんか恥ずかしい。


「今までだって相当我慢してきてるはずだから。……そうそう、今日からアンタ、遊人のベッドで一緒に寝るのは禁止ね」

「ええっ! どうしてっ?」


 なんで? どうして?

 今まで一緒に寝てたんだよ? ナオトだって何にも言わなかったじゃないか。


「どうしてって、アンタが成長したからよ。大人になったアンタと遊人が同じベッドに入ってごらんなさい。あっという間にぺろりよ」


 ぺろりって何? オレ、食われちゃうの?


「遊人はそんなことしないよっ」

「するわよ。……今までずっと我慢してきたって言ったでしょ? それはアンタが子供だったから。いくら好きでも、年端もいかない子供に手を出すのは躊躇したんでしょう。でもね」


 ナオトはオレの顔をぴしりと指さした。


「今のリオは大人だもの。胸だってすっかり育っちゃって」


 指さされてなんとなく両腕で隠す。確かに、今までなかったふくらみができてて、変な感じがする。


「……リオ、無自覚だと思うけど、そんなことしたら遊人がますます張り切っちゃうわよ」

「意味わかんないよっ!」


 ナオトは心底げんなりしたようにため息をついて額に手を当ててる。……どうして?


「とにかく、今日は一人で寝なさい」

「やだっ!」


 なんでだよっ、遊人と一緒じゃなきゃ寝ない。一人なんて……。


「わがまま言わない。それにもともとアンタは一人で寝てたでしょ?」

「……覚えてない」


 ぷいと横を向く。


「アタシがここに来た時だって、一人でちゃんと寝てたじゃない」

「知らないっ」

「はぁ……ほんと、遊人って何者なのかしらね。リオがここまで懐くなんて」


 オレだって知りたいよ。

 今までだっていろんな人が落っこちてきた。ナオトもその一人だ。みんな優しかったし、一緒にいて楽しかった。別れは辛かったし、わんわん泣いたよ。

 でも……遊人は別なんだ。

 遊人だけはダメだ。

 ダメなんだ。


「ああもう、そんな顔しないの」


 ふんわりと抱きしめられる。ナオトのオーデコロンの匂いがする。

 自分がどんな顔してるか分かんない。でも、ナオトが心配するぐらい、変な顔してるんだろう。今のオレ。


「子供のままの方がよかった?」


 心の中を覗かれた気がして顔を上げると、ナオトはやれやれって顔してた。

 だって仕方ないじゃないかっ。遊人と一緒に寝られるなら、子供のままの方がよかったって思っても……。


「でも、それはリオが望んだことでしょ? ――ほら、これ」


 ナオトが机の上から一枚の服をひらりと見せてくれた。白いひらひらした服。なんかきらきらしてて、ふんわりしてて……袖のない上から下まで一枚のドレス。腰のところに大きなリボンがある。


「ちょーっと気が早いけど、リオのイメージで作っちゃった」

「これって……」


 どこかで見たことある。確か、白い手袋つけて、レースのベールかぶって、ブーケ持つんだよな。確か。


「そう、ウェディングドレス。今のリオには似合うと思うわよ」


 ウェディングドレス……って、結婚式に着る……?


「……む、無理無理無理っ! こんなのっオレに似合わないよっ」

「あらそう? でもまんざらじゃないでしょ? これを着て、タキシード着た遊人の隣に立つの、想像してごらんなさいな」

「えっ……」


 遊人……と? オレが?

 途端にぱーっと顔が熱くなった。

 オレ、が?


「でも、子供のままのリオじゃ着られない。……どっちを選ぶの? 理央(・・)。子供のままのリオ? それとも……」


 遊人と、オレが?

 ……好きだって言ってくれた。オレを離さないって、離れ離れになっても絶対見つけるって。

 でも――結婚?

 ぽんと頭の上に何かが乗った。ナオトの手だ。


「まあ、ゆっくり考えなさい。とにかくこれに着替えて」

「あ、うん……」


 ナオトに渡されたのは遊人が作ってくれたワンピースによく似た、ひざ下丈の黄色いワンピースだ。いつもみたいなシャツとズボンでよかったのに。


「残りの服はアンタの部屋に運んでおくから。……今日はちゃんと一人で寝るのよ?」


 ナオトはテーブルの上に乗ってた服を抱えて出て行った。

 どうしたいかだって?

 そんなの、聞かれなくてもわかってる。

 オレは、遊人と一緒に行くって決めたんだ。

 オレは覚悟を決めて遊人に借りたTシャツに手をかける。


 でもさ。……ちょっとぐらいなら、遊人のところに行ってもいいよな?

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