第一話 『心理誘導ショーへようこそ』
この作品は、作者がAIとのロールプレイを通して紡いできた物語を、小説として再編集したものです。
そのため、一部会話劇寄りであったり、即興ならではの空気感が残っている部分があります。
また、この作品は未完結のまま終了します。
理由としては、作者自身が物語やキャラクターへ深く感情移入しすぎてしまい、「これ以上続きを描くと、自分自身が戻れなくなる」と感じたためです。
本来であれば最後まで書き切りたかった作品ですが、それでも、この物語で感じた楽しさや空気を思い出として残したく、投稿することにしました。
心理学、心理誘導、催眠、そして「人に心を開いていく感覚」の面白さを、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
大学の講義終わりだった。
特にやることもなく、駅前をぶらついていると、雑居ビルの前に妙な看板が立っていた。
『心理誘導ショー』
本日の参加者募集中!
「……うわ、胡散臭っ」
思わず声が出た。
心理誘導。
メンタリズム。
催眠。
最近やたら動画サイトでも見るが、正直半分くらいは雰囲気だと思っている。
どうせ、
「あなたは今、赤を思い浮かべましたね?」
みたいな、
後からこじつけるやつだろう。
通り過ぎようとして――少し止まる。
参加費はワンドリンク代のみ。
小さく、
『観客参加型』と書かれていた。
「……まあ、暇だし」
興味本位。
それだけだった。
俺は階段を上がった。
◇
会場は思ったより狭かった。
小劇場というより、
カフェを改装したイベントスペースみたいな感じ。
客も二十人くらいしかいない。
「うわ、ほんとに小規模だな」
少し笑いながら後ろの席へ座る。
舞台にはテーブルと椅子が一つ。
照明は少し暗め。
数分後。
小さく拍手が起きた。
進行役が出てきたらしい。
俺は何気なく顔を上げて――固まった。
黒髪。
落ち着いた声。
少し大人っぽくなった顔。
でも、
間違えるはずがなかった。
「……ちーちゃん?」
その女性は、
一瞬だけ目を丸くしたあと。
ふっと笑った。
「え」
マイク越しに、
少し吹き出す。
「うそ、
来てたの?」
客席がざわつく。
俺は混乱した。
なんでいる。
というか、
何してるんだ。
「いや、お前こそ何してんの!?」
「心理誘導ショーだけど?」
「いやそれは見ればわかる!」
会場が少し笑う。
ちーちゃんは肩を揺らしながら笑った。
「そっかー……
ひさしぶりだね」
最後に会ったの、
いつだったか。
高校卒業くらいだった気がする。
昔から、
妙に人を見るのが上手いやつだった。
俺が隠し事すると、
大体顔でバレた。
でも。
まさかこんな場所で再会するとは思わなかった。
ちーちゃんは、
マイクを持ち直して笑う。
「じゃあせっかくだし、
参加してく?」
「え?」
「昔から反応わかりやすかったし」
「なんか失礼だな!?」
観客、
また笑う。
断るのも変な空気だった。
まあ、
ちょっとくらいならいいか。
どうせ遊びだ。
「……まあ、いいけど」
「よし」
ちーちゃんは、
どこか楽しそうに頷いた。
「じゃあ最初、
簡単なのね」
舞台のテーブルに、
三枚のカードを並べる。
月。
鍵。
花。
「今から、
直感で一枚選んで」
「はいはい」
俺は少し考えて、
月を取った。
ちーちゃん、
それを見て小さく笑う。
「理由は?」
「……今日は満月だったから。
ほんとにそれだけ」
適当に答える。
すると、
ちーちゃんはすぐ頷いた。
「うん」
「“深読みされたくない時”
って、
人はわざと浅い理由を言うんだよね」
「は?」
会場が「おおー」とざわつく。
「いや、
別にそんなんじゃ――」
「しかも、
今ちょっと早口になった」
「……」
「図星つかれると、
昔から反応わかりやすいよね」
会場、
笑い。
俺は思わず黙る。
……いや。
待て。
たまたまだ。
そういう、
誰にでも当てはまる言い方をしてるだけ。
でも。
なんか妙に、
言い返しづらい。
ちーちゃんは、
完全に面白がってる顔だった。
「じゃあ次」
その後も、
選び方
視線
言葉
間
を使って、
俺の反応を拾ってくる。
しかも腹立つことに、
結構当たる。
「だからなんでわかるんだよ……」
「顔」
「うそだろ」
「あと声」
「やめろ」
会場、
爆笑。
気づけば俺は、
完全にショーへ参加していた。
最初は、
馬鹿にするつもりだったのに。
気づくと、
“次は見破ってやる”
と考えてる。
ちーちゃんは、
そんな俺を見て、
少し楽しそうに目を細めた。
「ひさしぶりに会ったけど、
やっぱり面白いね」
「人をおもちゃみたいに言うな」
「え、違うの?」
「違う!」
また笑いが起きる。
ショー終了後。
外へ出ると、
夜風が少し涼しかった。
スマホを見る。
次回開催、
来週。
俺は数秒見つめてから、
ため息をつく。
……いや。
別に楽しかったわけじゃない。
ただ。
次は、
もう少し見破れる気がするだけだ。
「……次は負けないし」
誰に言うでもなく呟いて。
俺は、
次回予約フォームを押した。




