人造神兵 7
雨が降り続く中でディーネが水の鎖で敵五人を捕らえていた。
訊きたいことはそんなに多くはない。
しかしなぜ俺を龍王だと知っていたのか。なぜ俺の家を知っていたのか。なぜ俺達を狙ったのか。は訊かなくてはいけない。
俺は尋問をするために男たちに近づく。
近付いてやっとわかったが、炎の剣を持っている男以外は焦点も合わない状態で、意識があるのかすら怪しい状態だった。
それどころか息をしていないように見える。
なんだか死んでいるように見えるな。
「やりましたね先輩、でも少し様子がおかしいですね」
後ろから東華が近づいてきた。
様子がおかしい?
「なにがだ?」
俺にはおかしなところがわからなかったので東華に訊いてみた。
「抵抗をしてる様子がないんですよ。普通なら抵抗するはずです」
確かに。
確かに拘束されてる相手を見ると誰一人として抵抗どころか身動きすらしていない。
「キリュウー、あの後ろの四人から体温を感じ取れないわ」
続いてディーネがそう言う。
体温がない?
少なくとも腐敗臭はしないけど、もしかして本当に屍なんじゃないだろうな。
確かめるしかないか。
「東華、ディーネ、少し試したいことがあるから、気を抜くなよ」
「え!?」
「わかったわ」
東華は驚いているがディーネは大丈夫なようだ。
正直めんどくさいので東華には説明はしない。
俺は手に持っている黒い太刀で、右端にいる黒いコートを羽織っている男らしき人物の腕に斬りかかる。
手を抜いているとはいえ、龍神である俺の動きについてこれるはずもなく無抵抗の状態で男の腕は切り飛んだ。
やはり無反応。
切り飛ばした腕が地面に落ち、乾いた音を立てて転がる。
明らかに人体の音ではない。そしてその傷口からも出血が見られない。
「人形使いか」
俺は自分の中で相手の正体を予想していた。
俺の中での答えは人形使いと呼ばれる者の事だった。
人形使いは人形に魂や精霊を魔術で人形に宿して人形を操る者達のことだ。
人形使いは基本的には情報収集など戦闘向きではないはずなのだ。
まあ囮くらいには使えないこともないが。
「貴様!! よくも俺の仲間を!!」
一番先頭の炎の剣を持っている男が、物凄い怒気を含ませた言葉を俺に吐いてきた。
その怒り凄まじく大地が小刻みに揺れる程だった。
おそらくディーネの水の鎖がなければ俺に斬りかかって来てるだろう。
なぜ人形を壊されただけで怒るんだ? だが、まあいい。これは使えるな。
「俺の質問に答えろ。答えなかったり俺が嘘だと判断したら、そこの人形どもを解体するからな」
俺は炎の剣を持っている男をそう脅した。
普通の人形使いならばこんな脅しは通用しない、だがこの男の場合は効果的だろう。
「わかった」
男の怒気は少し和らいだように見える。
今の状況をやっと理解したのだろう。
「じゃあまず一つ目の質問だ。なぜ俺達を狙った?」
俺は一番気になっていた事を最初に訊いた。
「命令だったからだ」
男はそれしか言わなかった。
命令ということはこいつの意思ではなく上の意思と言うことか。
まあそれでもこいつを許すな訳はないけど。
「その命令は誰からだ?」
俺は二つ目の質問をした。
もしも知っている奴の名前が出たならば、すぐにでも対処は可能だ。
知らない名前でも龍鬼に訊けば大体はわかるから問題はない。
居場所がわかればすぐにでも、狙う相手を間違わせたことを後悔させてやる。
「………」
男が質問に答えない。
「おい」
「………」
俺がそう言っても男は無視を続ける。
ならばしょうがない。
俺は右手に持っている黒い太刀で無事な者達の首を跳ねる。
先程と同じように乾いた音をたてて首が転がる。
やはり他三人も人形だったか。
首を落とした人形達は糸が切れたように地面に倒れていった。
「やめろ!!!」
「やめろと言われてもな、立場がわからない奴には教えないといけないよな。次はその隻腕になった人形でもバラバラに切り刻んでやろうか?」
俺がそう言うと男の顔から血の気が引いていく。
余程堪えているらしいな。
「……わかった、話す。俺達に命令をしたのはケイスローサーリーだ」
男はケイスローサーリーと言う名を口にした。
ケイスローサーリー? 知らない名前だな。龍鬼に訊くことになりそうだな。
「ローサーリー王?!」
男の出した名前に聞き覚えがあったのか東華が驚いていた。
その東華の声に男もうなずいていた。
王?
「知ってるのか? てか、王?」
俺はその名前を知っていると思われる東華に訊いてみた。
「え!? 先輩ローサーリー王を知らないんですか? 嘘ですよね?」
東華が物凄く驚いているが俺には聞き覚えが全くない。
「知らん、誰だ?」
俺は全く知らなかったので知っている東華に訊いてみた。
「この国の、人族の代表ですよ」
なるほど、あまりピンと来ないな。詳しくは龍鬼から聞く必要がありそうだな。
だが、状況はなんとなくだが理解した。
今すぐにでも龍鬼の所に行くか。いや一旦戻って時雨と白にも状況を話しておくか。
「なるほど多少は理解した。とりあえず一旦帰ろう」
「わかりました」
話が終わり一旦戻ろうとした時だった。突如風が吹いてきてつむじ風が形成されていった。
「キリュウー 今よくわかんない人たちと、キリュウーの屋敷の近くでヒツキ達が戦ってるけど、どうしたらいい?」
つむじ風の中から姿を現したのは風の精霊王のシルフィー だった。
そして姿を現した直後に今の事を言った。
戦ってる? 陽月が?
なんでこのタイミングなんだよ。
まさかケイスローサーリーとかいう奴が同時に仕掛けたのか。
とりあえず助けに行かないと。
「ディーネ魔法陣を描いて全員を時雨達が居るところに転移させろ」
「わかったわ」
雨が上がり気が付けば地面には水の魔法陣が浮かび上がっていた。
完成の速度が上がってるな。
そして俺たちは一旦時雨の所に戻っていった。
今回も読んでいただきありがとうございました。