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人造神兵 3

 朝、学園に向かおうと玄関を出たら出雲東華が待っていた。


 「おはようございます」


 「おはよう」


 俺は反射的に挨拶を返してしまったが、思えば横にいる白と時雨は今日会うのが初めてだ。


 出雲東華とは昨日隣に引っ越してきたので挨拶に来た少女の名前だ。


 「あ、後ろのお二人は初めましてですね。隣に3日前に隣に引っ越してきました出雲東華です。これからよろしくお願いします。どうぞ東華と呼んでください」


 東華は改めて俺達は三人に向かってそう言った。

 そういえば昨日俺は名乗ってなかった。こっちも名前くらいは言わなきゃな。


 「わかった。俺は川上鬼龍よろしく」


 「私は時雨です」


 「白」


 だんだん自己紹介が短くなってはいたが東華は頷きながら聞いていた。


 そういえば今日の東華の服装は昨日と同じセーラー服。

 この制服は俺たちが通っている学園の物とは違う。いったいどこの学生なんだろう。


 まさか同じなんてことは無いよな。


 心の中でそんな事を考えていたら、周りが無言なことに気が付いた。

 さすがに無言のままなのは空気が悪いので話す話題を見つける。


 「見ない制服だけど、どこの学校に通ってるんだ?」


 やはり訊くのはこの事からだろう。


 「あ、えっと国立双神学園です。今日から魔術科中等部の二年に編入しました。この制服は、まだこの学園の制服が用意されていないので、用意されるまでの間だけこの制服を着ているわけです」


 東華はハキハキとそう言った。


 やっぱり同じ学園だった。

 学生が越してきたら普通は通う学校の近くに引っ越すから、そうだと少し思っていた。


 「魔術科二年ってことは私と同じだね」


 東華の会話に食いついた。

 時雨も魔術科二年の生徒だ。隣に引っ越してきた人がまさかの同級生だったのだから、会話に入ってこないわけがない。



 「え!? えっと時雨さんでしたっけ?」


 「そうだよ。時雨でいいよ、同級生でさん付けは変な感じがするから」


 という風に時雨と東華は意気投合していった。

 この後聞かされたがクラスまで同じだったらしい。







 一方その頃屋敷では陽月が愚図る凛那を慰めていた。

 寝ている凛那を起こさないでこっそり屋敷に置いてきた鬼龍もまさか、ここまで凛那が懐いているとは思って居なかった。


 一度凛那を起こして私に預けたのなら結果も変わっていたのかもしれない。

 ただ幸せそうに横で寝ていた凛那を起こす事を鬼龍は出来なかった。


 「あら寝てしまいましたか」


 ちょうど疲れて凛那が寝たタイミングで寧々がお菓子を持ってやって来た。

 きっとお菓子で機嫌を直してもらおうと思ったに違いない。


 「なら机の上にでも置いといて、起きたらお腹がすいてるはずだから」


 私は近くにある机を指差して寧々にそう言った。


 「陽月様の分も御座いますが召し上がりますか?」


 寧々がお菓子を私に見せて誘ってくる。

 そういえば少し小腹が空いてきた、寧々と一緒に少しのんびりとお菓子でも食べようかな。


 「縁側で一緒に食べましょう」


 私は寧々の手をとり、寝ている凛那を起こさないように部屋を出た。

 そして縁側へと向かった。


 「強引なんですから」


 そんな私を寧々は優しい笑顔で見ている。

 もしも寧々が私と一緒にお菓子を食べるのが嫌でも無理にでも付き合ってもらう。


 だって二人で食べた方が楽しいから。






 私たちは日当たりのいい縁側で、二人並んでお菓子を食べている。

 ポカポカとお日様の心地よい光と程よい微風、そして隣にいる寧々とおやつを食べれて気分は最高。


 久々にのんびりしている気がする。

 この一週間は龍那と凛那のために鬼龍があっちこっち外出をしていたので少しのんびりしていなかった。


 龍那と凛那。二人の娘が出来てから私の周りは少し賑やかになってきた。

 別に賑やかなのが嫌いではないがたまには静かに過ごしたいものだ。

 あの二人ともゆっくりこうしてお菓子を食べてみたいかも。


 でも、凛那は今部屋で寝てるから今すぐには無理かな。

 そういえば龍那はどこに居るんだろう。朝見たきり見かけていない。


 もしかしたら寧々が知ってるかも。



 「寧々、龍那どこに居るか知ってる?」


 私は横でお菓子をつまんでいる寧々に龍那の居場所を訊いた。

 寧々はお菓子を一噛りしてこっちを向く。


 「龍那様でしたら黄守様の元へ行きましたよ」


 寧々はそういうと手に持っている食べかけのお菓子を口に持っていった。


 黄守、鬼龍が従えている龍の一体。今は鬼龍から黄守の名前をもらって人の姿でこの屋敷に住んでいる。

七千年以上も生きている黄龍であり、四神のまとめ役でもある。

 龍は長くいきるほど強くなる生物。

 七千年以上も生きているため相当な強さであることは間違えないだろう。


 だけどなぜ龍那は黄守の所に行ったのだろう。


 「鬼龍様の事を聞きたがってました」


 寧々がお菓子を食べながらそう話す。

 娘である龍那が親である鬼龍にたいして興味を持つのはたいして変でもないか。


 私は勝手に小さい疑問を心の中で自己完結させた。





 場所は変わってビルの地下深く。

 そこには神格を得た者達がうごめいていた。


 そしてその者たちの先頭に立つ人物が居る。

 名前をケイスローザーリーと言う。


 ケイスはこの大陸の人の王。国民から選ばれた人々の代表だ。

 そんな彼がなぜビルの地下に人々を集めたのか。

 それは簡単だった。


 「我々は明日の早朝、午前五時に各王達を討つ。神格を得た我らなら容易いだろう。そして全ての王達を倒した暁には我ら人族がこの大陸の主権を握り、世界を統一するのだ」


 ケイスがここに集まった人達にそういう。


 「「「「「おぉー!!!!!!」」」」」


 ケイスの声に反応するように人々が雄叫びを上げる。

 その声は地響きを起こすほど強大だった。


 「では各自作戦開始場所に行け」


 ケイスのその言葉を最後にここに居る人々が移動を開始する。


 この事件はこの大陸始めって以来最初のクーデターとなる。

今回も読んでいただきありがとうございました。

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