人造神兵 1
龍那と凛那の誕生会から一週間がたった。
この一週間はとても平和で何事もなかった。正直なにか物足りなさを感じることもあった。
いや、龍那と凛那を海や山などに連れていき遊んでたっけ。
この一週間で俺と二人の距離は凄く縮まったと思う。
個人的にはとても有意義な一週間だった。
だが、やはり物足りない。
学園では模擬戦をやったり放課後は朱里や雫の特訓に付き合ったりしていたが、やはり手加減をしているのでたまには暴れたくなる。
一回だけ白や時雨と手合わせをしたが、一回やってからそれ以降二人は満足したのか戦わなくなった。
「あぁ~ 戦いて~」
俺はついに心の叫びを声に出してしまった。
俺のすぐそばにいた時雨はビクッと少し体が浮き上がっていた。
「びっくりした。どうしたの?」
読書をしていた時雨が、手を止めて俺の方を見る。
言ったら戦ってくれるかな?
俺は微かな望みをいだいて訊いてみることにした。
「俺と戦わない?」
「嫌だ。鬼龍強すぎるも」
時雨にうんざりとした顔で拒否された。
「手加減してくれたらいいけど、そんなの鬼龍が楽しくないでしょ」
時雨がそう続ける。
確かにそうだ。
手加減しながらじゃ楽しくないし逆に不完全燃焼でさらにモヤモヤするだろう。
「そうだよな」
そもそも時雨と本気で戦おうとは俺は思ってない。そもそも無意識で手加減をしてしまうと思う。
他の身内も同じだ。
そう考えたら、俺が無意識に手加減をしないで全力で殺し合える相手なんてこの大陸には居ないかもしれないな。
いや、龍鬼だけは手加減抜きで本気で殺し合っても大丈夫だ。
龍鬼も俺と同じで不死身の肉体を持っている鬼神だ。
だけど、龍鬼は俺と違って急がしい身だ。
普段はこの国の王らしく政治をしている。そんな奴に遊ぶ感覚で誘っても迷惑なだけだよな。
しょうがない、寝るか。
二時間の昼寝をした俺は屋敷に来ていた。
なぜ屋敷に来たかというと、陽月に会うためだ。
実は昼寝から目覚めた俺はあることを思い付いたんだ。
それは、全知全能を封印する事。
今の俺は全知全能の最強の龍王。
ならば自分の全知全能で全知全能を封印すればいいと思たんのだ。
だが、自分で封印すれば必ず封印が勝手に解かれる時が訪れる。
なら、陽月に封印の鍵を渡そうと思ったんだ。
今でも陽月には俺の力の一部が封印されている。そこにまた俺の力を陽月に封印したら、さすがの陽月でも体が持たない。
そこで考え付いたのが鍵だ。
俺は自分の全知全能で全知全能を封印し、擬似的概念でその封印の鍵を作り出す。そしてその擬似的概念の鍵を陽月に宿す。という考えだ。
これも全て戦いを楽しくするためだ。
今戦いが楽しくない理由は相手との実力差だ。
俺は無意識的に全知で相手の動きを先読みする事もでき、全能でその攻撃を対処、または相手を倒すことができる。
まあ。実際大陸に戻ってから全知全能を使ったのは片手で数えるくらいしかないが、封印すれば多少は変わるだろ。
「あ! 鬼龍なんで居るの?」
陽月の部屋を開けた俺が陽月から最初にかけられた言葉がそれだった。
元々ここは俺の家なのにひどい言われようだ。
「なんでって、まあいいや。実は少し用件があって」
俺は陽月に用件を話した。
そしたら以外な答えが返ってきた。
「知ってる、鬼龍らしい考えだもの。そろそろだと思ってた」
と陽月には全てお見通しのようだったみたいで。
陽月に鍵を託した。
大陸の東に位置する巨大なビル。
その地下では数千匹以上の猫や犬、猪などの動物が用意されていた。
そこにはどこからか買ったのか人間の奴隷も居る。
この大陸では奴隷制度は一切認めていない。
そのためこの奴隷達はこの大陸の外から来たことがわかる。
この大陸に入るには一般的には二種類しかない。
一つは船で大陸に入ること、もう一つは飛行機で空から来ることだ。
そして、海や空の両方の警備体勢は十分で入国する人物は全て把握している。
そにため奴隷が他国から購入された場合、間違いなく国が気付くはずだ。
だが、実際ここには奴隷が居る、しかも他国からの奴隷がだ。
なぜそんな事が起きたのかはこのビルの所有者の名前を聞けばわかるだろう。
その人物とはケイスローザーリー。この国の人間王。
ケイスは他国から秘密裏に奴隷を購入し、王である権利を使い空港や船での検査をしないで多くの奴隷や動物を自分のビルに持ち込んだのだ。
そしてこのビルの更に地下には人造の神を作り出す研究が進められていた研究所があった。
そう、ここに集められた動物や人間は全て、その研究実験台にされていたのだ。
そして研究が完成した今、ケイスは残った全ての動物や人間を人造の神にして、自分の軍隊を作ろうとしていた。
理由は簡単。
この大陸の主権を自分の物にするためだ。
だが、そんな事を龍王や鬼王が許すわけはない。
だからそのために産み出した人造の神だ。数は約一万。
一万の人造神の軍隊だ。これだけの数が居れば勝てるだろう。
と、ケイスは思っている。
事実、普通の国なら落とせるくらいの戦力はある。
だが、それは普通の場合だ。
この大陸には国どころか地球すら簡単に滅亡させるほどの戦力ほ持っている龍王がいることをケイスは知らなかった。
いや、信じては居なかったのだ。
今回も読んでいただきありがとうございました。