学園生活と異変の始まり9
今回はグロイ描写があります
俺たちは今深夜の森の洞窟に来ている。その洞窟の奥には神殿のような場所があった。
建物は大理石できており、ギリシャの神殿にも似ている。
だが、ひとつだけ別のものでできているものがあった。それは、黒曜石でできていた。
黒曜石でできている像は、あるものを象っていた。
頭はタコかイカのようで、背中にはコウモリのような翼に鋭い爪をもち、体はには鱗が象られていた。
これは、邪神クトゥルフと呼ばれているものに酷似していた。
「ここで間違いないようだね~」
シルフィーがクトゥルフの像を見ながらそう言った。
シルフィーとは風の精霊王で、髪と瞳がエメラルドグリーン色で俺の横に浮いている少女のことだ。今は、俺と契約をしている。
「そうだな。この奥に何人か人が居るから話を聞くか」
俺は神殿の奥を見てそう言った。
俺が洞窟の中でも行動ができるのは、目だけを龍神化しているからだ。
龍の目は闇の中でも昼と同じように見える。
「キリュー、あれ本当に人間?」
シルフィーが俺に訊いてきた。
確かに純血の人間ではないけど。
「なんか人間と言うよりは、半魚人見たいな見た目だよ?」
シルフィーは大気の感覚で相手の形もわかる。
俺とシルフィーが神殿の建物に入るとそこには、光があった。
俺たちの気配を感じたのか、一人と目があった。
まあ、気配を隠すつもりも全く無いんだけどな。
あいつらの見た目は、魚やカエルに似ていて、肌は青白くてがに股だ。いわゆるインスマス面と呼ばれる姿だ。
俺の頭のなかにイメージが浮かぶ。
俺の目の能力の一つ未来視だ。
この能力には二種類の発動方法がある。一つ目は任意での発動だ。こちらは複数ある未来をすべて見ることができるというものだ。
二つ目は無意識での発動だ。こちらは見る未来が一つだけ。すなわち未来が確定している状態だ。両方に共通することは、どんなに遠い未来でも見ることができるという点だ。
ちなみに、今回は発動したのは後者のほうだ。
俺を殺そうと、大勢で向かってくるのが見えた。
今回の未来視はそこまで。すなわちその後の行動で未来が変わると言うことだ。
生かして捕まえればクトゥルフについて少しはわかるかもしれないが、残念ながら俺はそこまで優しくはない。
俺は死体からでも記憶を読み取ることもできるから、生かしておく必要もない。
「シルフィー、今から襲ってくるやつは全員殺せ。」
俺はシルフィーに命令した。
鬼龍は龍神化すると残忍になっていく。これは自分でも理解しているし、誰にでもという訳でもない。自分の家族や好意を寄せている知り合いには、甘過ぎるくらいだ。
だが鬼龍は気がついていなかった、残忍になりきれていない自分を。
「わかった。ワタシの力見せてあげる」
シルフィーは自信満々にそう言った。
シルフィーは残忍というわけではない、シルフィーは精霊、あいつらは人間? 要するに種族が違うため、可哀想という感情を抱かないのだ。人間が害虫を殺すのと対してかわらないだろう。
まあ、例外はあるけど。
俺が一歩部屋に入ると、奴らが襲ってきた。
数はおよそ三十人。強さは魔力を持たない人々より少し強いくらいだろう。
全員素手で走ってくる、言葉は話せるのだろうか?
俺がそんなことを考えていたら、シルフィーの膨大な魔力が暴風に変わる。暴風は風の刃になる。不可視の暴風の刃は回避不可能。
室内なのに、風が荒れ狂う。その事に異形のもの達は驚いているのだろうか?
おそらくは、驚きすら感じていないだろう。皆シルフィーの作り出した風の刃に切り刻まれてしまったのだから。
後に残ったのはひき肉と血液だけだった。
まるで、肉をミキサーにかけたみたいだった。
床はもちろん壁や天井にも肉片や血が飛び散ったのだから。
「ど~だ! これぐらいは朝飯前だよ」
シルフィーは子供のように自分を誉めてもらいたいみたいにそういってきた。
まあ、この程度は余裕だろうな。
「さすがだなシルフィー」
俺はそう言いながら、頭を撫でてほしそうなシルフィーの頭を撫でた。
まるで子供だな。なぜかなつかれているみたいだ、なんでだ?
「さあ、奥に行こうか」
俺はシルフィーにそういって神殿の奥に行こうとしたときだった。
俺の頭の中にある映像が浮かんだ。無意識の未来視だ。
最初に地震が起こり、高層ビルが倒れる。次に津波が押し寄せ、津波と共に大小様々な異形の怪物達が海より押し寄せてくる、後ろにはクトゥルフらしき巨大な影も見える。
俺が見たのはそこまでだった。
「クトゥルフが復活する」
俺はシルフィーにそう言った。
時間はおよそ二時間後、太陽が上り始める頃だ。
「クトゥルフってさっきの黒曜石で作られていた像のやつ」
シルフィーが訊いてくる。
「あぁ、後二時間後に大陸の東から南にかけて津波が襲う。津波にはクトゥルフに従うものが紛れてこの大陸を奪いに来るだろう。」
俺は未来視によってわかったことと、推測をシルフィーに伝える。
「そして、クトゥルフは東からここに向かって来る。早くこの神殿を調べないと。」
俺はそこまで言って口を閉ざした。
いや、ここまで来たら出し惜しみする必要はもうないか。
しょうがない。
俺は目だけではなく、手足、尻尾、翼まで龍神化した。
「キリューどうしたの? いや、なんでもない。これからどうするの?」
シルフィーは途中で言葉を訂正し別のことを訊いてきた。
シルフィーも俺の様子から察して緊急事態ということがわかったらしい。
「まずは時雨と白にこの事を伝えてから、実家にいってこの事をみんなに伝える。そして龍鬼にも伝えたら、俺はクトゥルフを討つ」
俺はシルフィーにそう言いながら、学園の近くの自宅に転移する。
クトゥルフの復活するきっかけになったのは、結局は俺だ。
俺は今四割が龍神だ。つまり本来の四割の力が使えるわけだ。俺の力の中に死体から情報を得ることができる能力が存在する。その能力からわかったことは二つ。
一つ目は、クトゥルフを復活させようとしたのは遥か昔からクトゥルフに使えてきた存在で、それを受け継いだのが地下の神殿にいたものたちだということ。
二つ目は、クトゥルフを復活させるためには生け贄が必要で、あの神殿は生け贄を捧げるための場所だったということで。
運悪くあそこいた奴らを殺したことによって、生け贄の数が揃ったということだ。
そして最後に、魔導書とこいつらは関係がなかった。
「何かあった?」
玄関に転移するとそこには白がいた。
おそらくは普段押さえている俺の力を感じたのだろう。
「ちょっとな。時雨を起こしてきてくれないか?」
俺が白にそううと。二回から足音が聞こえてきた。
「もう、起きてる。何があったの?」
俺が白に時雨を起こして来てもらうより早く、時雨が起きてきた。
「詳しく話すのを忘れていたが。クトゥルフが復活する、それに伴いクトゥルフの眷族も目覚める、そしてこの大陸を狙っている」
俺がここまで言うと二人は今の状況を理解したらしい。
「時間は後二時間だ。二人は戦う準備をしてここで待っててくれ。俺は刹那と龍鬼、龍家に伝えてくる」
俺はそういうとシルフィーの方を向いた。
「シルフィーもここで待っててくれ。もしもの時は各自の判断に任せるよ。」
前半はシルフィーに、後半は皆に言ったものだ。
俺はそれだけ言うと、実家の自分の部屋に転移した。
いよいよ、クトゥルフが登場します。
なかなか登場人物のキャラデザ決まりません。