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学園生活と異変の始まり2

 俺たちは今第一演習場に居る、ここにいるのは俺、白、時雨、朱里、紗那の五人だ。

 俺たちは時雨と合流した後にここに来た。普通は演習場を生徒が使うのは学園へ申請が必要だが、紗那がここまで先読みをしていて貸し切りにしていた。

 紗那になんで俺の事を朱里に話したのか聞いたら「私をこき使った仕返しだ」と言われてしまった。

 こき使った覚えなんてないんだけどな。理不尽だ。


「決闘のルールをおさらいするぞ、相手を戦闘不能にするか、相手に負けを認めさた時点で勝敗を決める。無論相手を殺すのは論外だからな」


 このルールは先ほど俺と朱里が決めたものだ、手足の欠損ぐらいなら紗那が直せるということでこのルールになった。

 まあ、ルールで決めたが無論手足をもぐつもりは、少なくとも俺にはない。

 ちなみに、時雨は少し離れたところにある結界の中で見ている。


 「それでは勝負開始」


 この戦いに参加しているのは俺と白、そして朱里だ。

 正直この状況についていけてない。


 「我が呼び声に答えよサラマンダー」


 朱里がサラマンダーを呼び出す。

 サラマンダーは炎の精霊の中でも最上位の存在だ、それを呼び出しただけでも朱里は相当な実力者であることがわかるだろう。

 サラマンダーがこの場に現れたことにより気温が上昇する。この場にいるだけで世界に影響を与えることができる。これが炎の最上位精霊も力だ。


 「サラマンダーすべてを焼き払え」


 朱里がサラマンダーに命令する、サラマンダーが炎を吐く。

 これが召喚士の戦い方、自分より強い使い魔と契約することで人知を超えた力を手にすることができる。

 基本的に契約獣は召喚士の実力に影響される。契約者の魔力が大きいほど使い魔も強くなるのだ。


 「白」


 俺は白の名前を呼んだ、その意味を白は理解し俺の前に立った。


 「消えて」


 白が短くそれだけ言うと炎が消えた。白の言霊だ。

 白、白虎は神獣。その中でも獣の王として君臨している種族である。そのため言霊でも十分に戦える。

 つまり、そこのサラマンダーはその程度の存在ということだ。


 「うそ! サラマンダーの炎が」


 朱里は今の状況を理解できずに棒立ちになっている。

 おそらく朱里は、あまり劣勢になったことがないのだろう。その証拠に想定外の事態に対処が遅れているどころか、棒立ち状態だ。


 「次はこっちから行くぞ」


 俺は朱里に親切にそう言うと白に命令をした。

 命令、召喚獣と召喚士の関係は上司と部下みたいな関係だ。だからお願いではなく命令するのだ。


 「白蹂躙してやれ」


 俺はそれだけしか言わない。それしか言わなくても白は理解して行動してくれるからだ。


 「わかった」


 白もそれしか言わない、だが明らかに先ほどとは雰囲気が違う。空気が震えているのがわかる。

 これが、神獣白虎の。獣王の覇気。


 「サラマンダー本気で行くわよ」


 朱里がそう言うとサラマンダーの姿がだんだんと大きく成っていく、大きさはおよそ二メートル。

 白がサラマンダーの真正面に立つその距離は三メートルしかない、その光景は子供がドラゴンに立ち向かっているようにも見える。だが、実際には白が格上の存在だと朱里も理解しているのだろう。


 「サラマンダーその子を倒して」


 朱里は躊躇なくそう言った、白の放つ不気味なオーラがそうさせたのかもしれない。


 「ガガォォォー」


 サラマンダーが吠え白に炎の牙を剥く、だが、サラマンダーの攻撃が白に届くことは無かった。

 白がサラマンダーの顎に神速の蹴りをしたからだ。


 「え⁉」


 サラマンダーは今の一撃で気絶した。

 巨体が地面に崩れ落ちる。

 朱里はその光景に絶句していた。小学生くらいの半獣人の少女に炎の最上位精霊であるサラマンダーが倒されたのだから無理もない。

 それも、ただの蹴りの一撃でだ。

 いや、朱里には今の蹴りは見えてはいなかった。朱里は白の神速の蹴りの後の空中の姿を見て蹴りだと判断したのだ。


 「次はあなた」


 朱里はその言葉の意味を悟った。つぎは私がサラマンダーのようになると。

 ルールでは怪我をさせてもよいことになっている。それを決めたのは鬼龍だ。その時は何も考えなかったが、今考えればあの時拒否しとけばよかったかもしれない。

 なぜなら、「次はあなた」すなわちサラマンダーに入れた攻撃が私にも来るということ、炎の最上位精霊であるサラマンダーをたったの一撃で沈めた攻撃が人間である彼女に来るということ。

 それは確実な死だ。

 ルールでは殺したら負け、そんなことすら思考になかったのだろう。


 「私の負けです」


 朱里自ら負けを認めた。

 当然だ、普通の人は死にたくないものだ。本能で死を覚悟したのだから。


 「勝者鬼龍」


 勝者は鬼龍、それは当然の結果だった。





 決闘が終わりなぜか喫茶店に俺たちは居る。

 実は朱里が話をしたいと言い無理矢理鬼龍たちを連れてきたのだ。


 「その子って神格だったんだね」


 朱里は白を見ながらそう言った。


 「ああ、そうだよ」

 鬼龍は朱里の言葉を肯定した。

 実は鬼龍は白の正体がバレている事を前提に戦っていたのだが、実は知られていたのは鬼龍の事だけだったらしい。

 まさか白の正体がばれていなかったとは思わなかったな

ちなみに、その白は俺の横で苺の乗ったショートケーキを時雨と仲良く食べている。


「神格と契約しているとか凄すぎ」


 いや、朱里も人のこと言えないと思うけど、炎の最上位精霊のサラマンダーと契約している時点で反則みたいなものだろ。

 普通の人は上位精霊にすら勝てないかのだから。


 「朱里だってサラマンダーと契約してるじゃん」


 最上位精霊は本来なら竜とだって互角に戦える存在、今回負けた理由は簡単、朱里の実力不足だ。

 実力がないのなら特訓すれば補うことができる。


 「もっと訓練すればさらに強くなれると思うよ」


 俺は本心を朱里に言った。


 「ありがとう、でもサラマンダーと訓練する場所も方法もわからないんだよね」


 朱里は諦めたような表情で笑った。


 「訓練する場所ならさっき戦った場所じゃダメなのか?」


 俺は朱里に問いかけてみた。


 「訓練場はダメだよ、あそこは先生の許可が必要だし、さっきの模擬戦だって桜井先生の機嫌がよかったからだし」


 なるほど、基本は学校側の許可が必要なのか。紗那の機嫌がよかったのは俺への嫌がらせが出来るからか。


 「じゃあ、俺と取引してみないか?」


 俺は朱里に取引を持ち掛けた。

 理由は簡単、精霊魔法に興味を持ったから、それと、俺の秘密をばらされないためだ。


「取引ってなにを?」


 朱里が当然の質問をしてきた。


「訓練場所はどうにかしよう、訓練の相手もしてやる、だから俺の秘密を口外するな」


 「なるほど、取引ってこういうことね


 朱里は怪しい笑みを浮かべた。


 「いいよ、その取引うけるよ」


 「場所は明日までにどうにかするから」


 俺はそう言い会計を済ませて店を出て行った。





 結城朱里は一人で商店街を歩いていた。


 ああ、やっぱり勝てなかったな。

 私は鬼龍たちと別れた後商店街をぶらついていた。

 白ちゃん強かったな、本気で死ぬかもって思っちゃった。でも、鬼龍君はもっと強いはず、白ちゃんも本気は出していなかったと思うけど、鬼龍君はもっと強いと、本能がそう言っている。

 私は鍵を開けて家に入る。

 ただいまは言わない、言っても私以外誰もいないからだ。

 私の両親は出張で日本に行っている。

 私はベッドに身を投げる

 龍神家、最強の龍の一族。幻竜姉妹より格上の存在、その龍神家の人間にいい勝負ができれば幻竜姉妹にも勝てるかも。

 私はそんなことを考えながら眠ってしまった、魔力を使いすぎたせいだ。


 



 「今日はどうだった?」


 俺は時雨に中等部の様子を聞いてみた


 「いっぱい人と話した、でも、名前が全然覚えられない」

 時雨が残念そうな顔をしながらそう言った。

 まあ、はじめはそんな感じだろうな。


 「大丈夫だよ、そのうち覚えられるよ」


 「うん、鬼龍はどうだった?」


 今度は時雨が俺に訊いてきた。

 どうだったか、今日は色々あったな、特に印象的なのは朱里の事か。


 「まあ、驚くような一日だったよ」


 俺は料理をしながらそう言った、なぜ俺が料理をしているかというと、家事をできるのが俺だけだからである。

 普段は料理なんていないが、昔料理にはまったことがあって、数年間、料理を猛勉強したことがあった。


 「そうなんだ、白ちゃんは?」


 「ドキドキだった」


 白はそれしか言わなかったが、何を言いたいかは俺と時雨にはわかった。

 白は人見知りで知らない人だらけの学校はドキドキしまくっていたらしい。


 「大丈夫だ、しばらくしたらなれるよ」


 「うん」


 白は俺の言葉を聞いてコクリと頷いた。






 私は夢を見ている、夢じゃなくちゃおかしい。

 私が見ている光景はおかしかった、巨大な体にタコの様な頭、コウモリの翼、そんな怪物が私を呼んでいるのだ。


 「あなたはいったい何?」


 私は恐る恐るその怪物に訊いてみた。

 今思えば怪物が言葉を喋れるのかという疑問は無かった。


 『我が名はクトゥルフ』


 その後は覚えていない。



 後日談だが、同じような夢を見た人はこの国では四万人以上いたらしい。


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