第8話 部屋中に飾っております
守とジャンヌが謎の女性の要請で悪漢たちから少女を救っている頃、王宮ではヴェルヘルムに召集をかけられたアキレウス、アディリシア、ニースの三名が今回の茶番について聞かされるのであった
とある少女が守と再会する為にアナトに願い、それを叶える為にアナトがヴェルヘルムに守周りの人間を極力減らすよう脅は…お願いし、三人は王座に召集をかけられたというものだ
「…呆れた。父上は一応国王なのですから、アナトのやつに屈しないでくださいよ…」
「そういうお前もアナトにネタを握られているんじゃろ?お互い様ではないか!」
「ヴェルヘルム様もアキレウス様もどっちもどっちです…。私はてっきり守さんの専属メイドを下されるのではないかとヒヤヒヤしましたよ。はぁ〜…」
「そこは心配せんでよいよ、ニース。他にも希望者はおったが、大魔法剣士のメイドが務まるような者などニースをおいて他におらんからのぅ」
「お父様にお兄様?あの方が今回のことを仕向けているのでしたら、今頃守様とジャンヌ様は大騒ぎになっているのではありませんか?」
「………儂は何も知らないもーん。アナトが全て悪い!」
「「「はぁ〜………」」」
王様らしからぬ姿に息子、娘、メイドは呆れのため息をつくほかない
場面は変わり、固まるジャンヌと抱きつく少女を振り払おうと必死になる守
「おいっ!マジで離せ!くっそ、完全に油断していたっ」
「い〜や〜で〜す〜わ〜!!あ〜守様〜お久しぶりです〜(クンカクンカ」
「ジャ、ジャンヌっ!!見てないでこいつを振り払うのを手伝ってくれ!デートでも何でもしてやるからっ!」
「ん?今、何でもって…。じゃない!守から離れてっ!」
「うるせぇ!この泥棒猫が!なに、私を出しにつかってデートしようとしてんだ、あぁん?久しぶりに守様の匂いを…じゃなかった、ぬくもりを感じてんだから邪魔すんじゃねぇよっ!」
「怖っ!しかも匂いって!嗅ぐなっ!!」
「あら、ほんの冗談ですわ〜。久々に守様分を補充致しましたので、とりあえずは離しましょう」
「(突然のことで戸惑ってしまったがこいつはメイ=ファントムだ。三大貴族の一つであるファントム家の次期当主にして自称俺のおっかけ(ストーカー)らしい。魔王討伐時代基本的にはローブで素顔を隠していた俺だが、なぜかこいつにだけは正体がバレていた。会うたびに過度な密着をしてきては「守様分補充」とか言ってくる俺にとってはある意味最も会いたくない人物だ)」
「守様が姿を消されてから探しても探しても探しても探しても…行方が分からなかったのに、守様がご自身でハワード家をほぼ壊滅状態にしてくださったおかげでこうしてまた会う事ができました。まさかアストン皇国に息を潜めていらしたなんて…」
「くそっ!自業自得ってことか。エリカを救ったことに後悔はしていないが、ハワード家というワードの怒りでその後のことはあまり考えていなかったな…。俺の馬鹿野郎」
「エリカ?あぁオリビア家のですか。守様が名前を呼ぶほどに親密になられて?」
「名前どころか、唇を奪われていたよね〜守」
「なんですって!私の守様を汚しやがって!あの女、殺してやろうかしら?」
「唇を奪ったのはジャンヌもだろ」
「この権力者の犬がっ!お前から殺ってやろうかしら?守様と恋仲になったかと思えば、自分の都合を守様に全部押し付けやがって!私は毎夜毎夜、守様の絵を見ながら血涙をながしていましたのにっ!!」
「うっ!かなり痛いところを突かれちゃった…」
「その話はもう終わったからどうでもいい。それより、俺の絵ってなんだ…?初めて聞いたぞ」
「毎日毎日守様を見たくて見たくて、気づきましたら似顔絵が増えたのです。全て部屋中に飾っておりますわ。それだけではありません。守様が使用した物はどんなに貨幣を叩いてもできるだけ手にいれて毎夜の楽しみにしてますの」
「…なぁジャンヌ。何でこんな変態が三大貴族のトップなんだろな」
「守、この世界では力を持っている者がすべてなんだよ…」
「(このアストン皇国の三大貴族はそれぞれの支配者がもつ土地の霊脈の強さで選ばれる。エリカのオリビア家は風を司る家柄で、あの森を復活させたことで地脈が強化され、次の貴族会議では貴族内の序列が二番目に上がることが確約されている。こないだまで粋がっていたラーズのハワード家は水を司る家柄で、俺が水源を枯渇させたことで三大はおろか貴族から消される可能性まである。次に三大貴族入りするといわれているガルト家は火を司る家柄である。そして、今目の前にいるメイのファントム家は闇を司る家柄で、何で強化されているか公にはされていないが一番力を持っている。貴族たちの有する魔法は独特で、俺やアナト姉の扱う魔法には劣るが、それ以外の人間で貴族たちに勝ることはまずないだろう)」
「まぁ!力だなんて汚らわしい。私は守様が好きすぎるだけなか弱い女の子ですことよ」
「か弱い女の子がこんな計画性のあることなんかするかっ!!」
「しくしく…ハワード家並みにめんどくさいガルト家の相手をしなければなりません私に少しくらいの我が儘も許していただけないのですか?」
「うぐっ!それを言われると申しひらきが…」
「いや、そこは流されちゃだめだよ、守」
「……お嬢様、お楽しみのところ申し訳ございません」
「(そう言って現れたのはメイのお付きのアイシェさん。幼少期からメイに仕え、メイのどんな願いも叶える苦労人だ。今回ピンポイントに俺たちの前に現れたあの助けを請うた人はこの人の変装と演技だろう)」
「変装の腕をあげましたね、アイシェさん」
「…大魔法剣士様にお褒めに預かり、光栄にございます」
「アイシェ、もうお時間なの?」
「…ガルト家とオリビア家の次期当主様がお嬢様をお待ちになっております」
「…まぁいいですわ。守様、今日は挨拶代わりに私の余興に付き合っていただきましたが、この会議が終わりましたら、私も学園の方に入りますので、よろしくお願い致しますわ」
「うげぇっ…着々と最悪な流れになっていく…」
「…よろしくお願いいたします。守様、ジャンヌ様」
名残惜しそうに貴族会議へ向かっていくメイとアイシェの姿が見えなくなるのを確認し、守は言う
「またしてやられたよ。学園に入っても知っている人間ばっか寄ってくるじゃないか」
「私も含め、皆欲望に忠実なんだよっ!」
「ない胸張って言われても全くトキめかないぞ」
「ひどいですっ!」
「…それでいつまで隠れているんだ、アナト姉?」
「あらあら〜♪バレていたのね〜。潜伏魔法で隠れていたのだけれど、衰えていないわね」
「魔法を見破らなくても、アナト姉ほどの人なら面白がって近場にいると読んだまでさ」
「失礼しちゃうわ。"守の"じゃないとわざわざ足を運んだりはしないわよ」
「余計ひどいわっ!で、どこまでがアナト姉の仕業なんだ?」
「アキレウス、アディリシア様、ニースの三人は動かしたけど、それ以外は私も知らないわよ」
「ということは…」
「ジル…つくづく運がないんだね…」
「それにしても守、魔法の次は剣も使ったわね。これでいよいよ正体がバレるまでに王手といったところかしら♪」
「全てはアナト姉のシナリオ通りってところですか。恐ろしい…」
「あはは〜♩大魔法剣士様の学園生活が愉快になるといいわねっ♪」
アナトの陰謀により、アストン皇国内にいることをある意味一番バレたくなかった人物にまで知られてしまった守は、次の学園を全力で休みたいと思うほど憂鬱になるのであった
三大貴族代表かつ変態ヒロイン枠を登場させました。ほぼほぼヤンデレと認識していただいて問題ありません。
作中でのヒエラルキー的な話になりますが、基本的には王様等の弱みを握っているアナトがある意味でトップと思ってもらって構いません。使えるものを使って守の嫌がることをしていますが、すべては愛ゆえにと捉えていただければと思います。




