第6話 浮気は程々にな
オリビア家が抱えていたハワード家との問題を解決した次の日、エリカが学園で守にベタベタしている様子を見た者達は皆、昨日までとの態度が180度違うことに唖然としていた
現場で態度が変わる理由を見ていた守のことを慕っている女性陣はエリカが守にご執心な様子が面白くないようで特にジャンヌはずっとむくれているのであった
「むぅ〜〜!!!」
「なんでお前がそんなに拗ねているのかがわからん。昔はともかく今は彼女でもなんでもなく、ただの同級生だろ?」
「確かにそうですけど!!守のことが好きな身としては、その一言は辛いです…」
「す、好きとかそう言うの反則だからやめてもらえませんかねぇ…」
「でも本当のことだから。好きだから嫉妬くらいは当然の権利なんだよっ!」
「じゃがそのジャンヌも代表挨拶の場で守の唇を奪っておるではないか!!我からしたらジャンヌもずっこいのじゃ!!」
「側で見ていて面白くはありませんが、守さんに助けられたという点では私も同じなのでエリカさんの惚れてしまう理由も理解できます」
「むっ、そういう風に言われてしまうと我も人のこと言えぬのじゃ…」
「皆さんの嫉妬もわかりますが、何より私は今日一日の姫様の笑顔が怖くて怖くて仕方ありませんでした…」
「そ、そんなに怖かったですか?」
「ええ、それはもう…。エリカさんが守さんに腕組みした瞬間とか笑顔なのに後ろに悪魔が見えましたよ」
「わ、私はそんな嫉妬深くはないですからね、守様」
「アディリシアがこんなに慌てふためく様子は初めて見た気がする。なんだか新鮮だな」
「こ、こんなはしたない姿見せたくなかったのですが…。ニースのバカっ」
「と に か く じゃ!!せっかく学園に入ったのだから我ももっとこう…守と何かしたいのじゃっ!!」
「ジルさんばかりではなく、私とも何かしてくれてもいいんですよ?」
「ニースは守様と一緒の部屋で生活している時点で発言権はないと思いますけど?」
「姫様、先ほどの件、根に持っているのですね…。言葉が刺々しいです」
下校時に校門前で守を巡り女性陣が言い争っているところにニヤニヤしながらアキレウスがやってくる
「いつでもどこでも人気者は辛いな、守さんよぉ〜」
「アキレウス、いいところにきた。助けてくれ」
「このまま修羅場っている光景を見ている方が俺的には面白いが、女性陣よ。悪いが守は今日は俺との先約があるんだ。ここはこの俺の顔を立てて我慢してくれ」
「くたばっちゃえアキレウス!!」
「相変わらず空気の読めない男じゃ。じゃからナンパも成功しないと理解できんのじゃな」
「お兄様、後で覚えておいてくださいね」
「さようならアキレウス様…」
「ひ、酷すぎる…。一応アストン皇国の王子なのに…そろいもそろって…」
「日頃の行いだろ?だが、悪いが先約があるのは本当のことだ。アキレウスがダメなら俺の顔を立ててくれ」
守がアキレウスとの先約のことを皆に説明すると、とりあえずはと諦めて引き返した女性陣一行を見送った後に、アキレウスは先日の件で、その後の貴族の動向を守に伝える
「先日の件でお前さんがハワード家のいわばシンボルを葬ったおかげでハワード家は三大貴族から外れる勢いになっている。ラーズもお前に植え付けられたトラウマから屋敷にこもっているそうだ。ラーズだけでなく、今頃ハワード家は大魔法剣士を明確に敵に回したことに衰えながら表に出ることができずにビクビクしているだろうさ」
「いい様だな。ハワード家にはあの頃苦渋を味あわされたんだ、本来なら家ごと潰してやりたいところだが…」
「実質潰したようなもんだろ…。オリビア家は大魔法剣士様の助力により衰退から序列二位にまで返り咲いたわけだ」
「それは恩返しとしての結果だからな。俺は助力したつもりはない。それにあの森をこれから維持できるかはエリカの腕次第だ。それでハワード家の後任はどこの家になるんだ?」
「ガルト家が後任として三大貴族に上がるのではないかと噂されている」
「あのクレイジーな娘がいると噂のガルト家か…。ヴェルヘルムさんには迷惑をかけるな…」
「父上は事情を把握しているから問題ない、そこはなんとかなるだろう。それにこれらの件については守の好きなようにすればいいとおっしゃていたからな」
「ありがたい限りだな。力を解放した結果正体バレを覚悟していたが、バラす気力すらないのか、幸いなことに他の生徒達にはまだ俺の正体がバレてないようだし、今回は力を使ったが、今後はもう使うことはないだろう」
「そうだといいな。ま、アナトやジルが以前言っていたようにこの調子ですぐにお前の正体はバレると思うがな」
「不穏なことをいう…。さては、まだ隠し玉があるというのか?」
「さぁ〜てね。俺の勘が告げているだけさ」
「はぁ〜…。平和な世界になっても気が抜けないとはな。俺はただゆっくり暮らしたいだけなのに…」
「女たちを侍らせてるやつが何言ってるんだか…。そういえば、今日はお前にお客がいるのだが、あれは何をどうしたらああなったんだ?さすがの俺でもキツイ…」
「…何を言ってるんだ?」
「ビビるぞ…。後ろを向いてみろよ」
「今更驚くことなんてな…」
「おーいっ!!まーもーるっ!!漸くアキレウス王子との会話が終わったかっ!!私は待ちわびたぞ!!」
そこには普段は剣を振るい、部下に号令を出しているかっこいい女性からは想像できない女の子女の子らしい服装をしているロベルタの姿があった
「ロ、ロベルタさん…どうしたんですか?その服装は…」
「"さん"付けなんて他人行儀なことはもうしなくていいんだぞ?私とお前の仲じゃないか!私は今日珍しく休みだからな!守にデートを申し込みにきたのだっ!この服は似合わないか?」
「ハハハ…に、似合ってますよ?なあ、アキレウスっていねぇし!!」
「アキレウス王子なら守が私と喋り出した瞬間に走っていったぞ」
「(あの野郎…関わりたくないのか、逃げやがったな…。次会った時覚えていろよ…マジで)」
「私は今まで剣術に磨きをかけてきたが、女性らしさというものはまるでわからぬものでな…。アナトに泣きつ…頼んだらこの服装でいけばいいと言われたので着てみたのだが…。やはりダメだろうか?」
「アナト姉の仕業か…(ボソッ。ぜ、全然ダメじゃないですよ?(アナト姉絶対面白がっているよ…おもちゃにされて、ロベルタさんかわいそうに…)」
「じゃあ、せっかくですので、今日はロベルタさんに似合う服を探しに街へ出ましょうか?」
「う、うむ。"夫"との初デート。私はどこまでもついていきます」
「oh…」
「(い、いつの間にか夫にまでレベルアップしちゃっているよ…。これもう修復不可能なんじゃないのか…)」
「そういえば、守よ。ジャンヌの公開告白&キスに続いて、オリビア家の娘を助けて唇を奪われたらしいじゃないかっ!!この世界を救った英雄だから多少は許すが、浮気は程々になっ♪」
「う、浮気って…」
「(俺関連の情報の広がりの速さが尋常じゃないんですけどっ!!…どうせアナト姉の仕業だろ。この人が暴走したら止めるの大変なんだぞ!!)」
「姫様がいるからしょうがないが、あまり妻は増やさずに遊びだけに留めるんだぞ?」
「ハハハ…」
このあと死んだ目をした守と初デートにテンションがあがっているロベルタはロべルタが私服で使える服を二人で買いに街へ出るのだが、それぞれ守と行動しようと提案するも断られたジャンヌ、アディリシア、ニース、ジルが二人の行動を偶々見てしまい、また、ロベルタが宮殿で守とのデートを嬉しそうに語ってしまったために後日守はこのことで皆から責められるのであった
学園関連ではほとんど登場しないため、ロベルタの扱いがこんな感じになってしまいます。学園でのイベントごとを書く時には絡めると思うので、それまではこんな感じです。
この作品内の三大貴族の設定については現三大貴族最後のやつを出すときに説明を詳しくしていくつもりですが、そんなに大したものではありません。