第55話 ここがあの女のハウスね
吸血族の里から戻り、宮殿を訪れた翌日
屋敷の場所を案内するというアディリシアの提案により、守は朝からニース、ジル、ウンディーネ、ノームを連れ、宮殿へて向かう
「はぁ〜…他の方々との唯一のリードポイントであった同棲生活も終わってしまうのですね…」
「今まで散々良い思いをしてきたのじゃろ?」
「それでしたらこんなにため息もつかないですよ…」
「思えば守との生活に屋敷とメイドがつくんですもの。いい待遇だわ」
「…こ、これからよろしくお願いいたします(ボソッ」
「はぁ〜…どうしてこんなことに…」
「ま、まぁ昨日説明した通り、これから得体の知れない存在と戦わなければないかもしれないからな。ウンディーネやノーム、ジルがいるのは心強いのは確かだよ」
「戦闘力がない私の馬鹿野郎〜」
「いや、戦闘力があっても生活力がない俺にはニースの存在はありがたいけどな」
自身の力の無さに落ち込むニースを一生懸命励ましながら向かっていく守の前に、アキレウスとアディリシアが待っていたと言わんばかりに出迎える
「お、来たようだな。守には内緒だと言われたが、あの後の妹のニヤケ顔ったら半端なかったぞ」
「それを本人がいる前で守様に言ってしまうとは…。お兄様、後で覚えていてくださいね?」
「相変わらずのアホだ…。ところで今回の件で一つ気になったことがあったんだが、アディリシアが屋敷に住むとなるとこの宮殿から離れるってことだろ?ヴェルヘルムさんはよく何も言わなかったな」
「あ〜それなら簡単なことだ。ま、百聞は一見に如かずだっけか?ついて来れば、わかるさ」
「…??ところでロベルタさんは?」
「昨日の件でな…」
「あっ」
行けばわかると、アキレウスがそう言うと宮殿の裏の森を抜けた土地に案内される
その場所は嘗て、守が修行をしていた時によく訪れていた思い出の地であり、守がその場所に足を踏み入れるのは旅に出る前以来となる
「ヴェルヘルムさんが心配してなかったのは、すぐ隣が宮殿だからということか…」
「あまり遠方に構えようとすると父上が号泣するからな」
「一国の姫という意味でも宮殿から離れた場所にとなるのは難しいのじゃ」
「守様との生活にお父様のことは考えなくてもよかったのですが…」
「姫様、何気に毒を吐きますよね…」
「へぇ〜久々にここに来たって…いやいや…流石に色々おかしくないですかね…」
二人に案内された思い出の場所へ行くと、そこには庭園や池が配備され、その中央には既に完成された屋敷とおかしな光景が守の目の中へと入ってくるのだった
「昨日の今日で何故屋敷がすでに存在しているんですかね…」
「ま、こっち側に守が来るのは旅に出る前の話だしな。知らないのも無理はない」
「どういうことだ?」
「申し訳ありません、守様。先日は屋敷を建てましょうと話していたのですが、守様が恩賞を断ったあたりから、いつかこういう日が来るだろうと思い、事前に建てていたのです。ですので、先日のお話の時点では屋敷内を掃除するのみだったのです」
「何ぃっ!?」
「も、もちろんこうならなかった時はこのまま記念として残しておこうと考えていたのですが…」
「…これまで見せられるともはや今までの流れが、この姫様に踊らされていたようにすら感じるわね」
「うむ。やはり最大の障害は姫さんなのじゃ」
「…きょ、強敵です(ボソッ」
「ちょっと鳥肌が立ちましたよ」
「…一つ新たに疑問が生まれたぞ。この修行場に屋敷を建てたということは、ロベルタさんだけじゃなく…」
「ああ。アナトも知っているぞ」
「なん…だと」
驚愕な顔をしている守の元に噂をすれば影がさすと言わんばかりにアナトが現れる
「ふふふ…ここがあの女のハウスねっと言った感じかしら?」
「アナト姉!?どこから現れた」
「あらやだ。人を害虫が出た時みたいな顔で見ないでちょうだい」
「守の初めてにはお姉さんが同伴しないとね♪」
「うげぇ〜…一番…いや、二番目くらいに知られちゃいけない人が既知だとは…もしかして、ジャンヌもか?」
「時期が時期だったからな。ジャンヌには言っていないから安心しな」
「ま、あのジャンヌが知っていれば、今日が来る前に守に問い詰めていたじゃろ」
「たしかに…」
「ま、いつまでもここで喋っていてもしょうがないし、そろそろ中に入ってみないか?」
「そうだな。いつまでも現実から目を背けてられない。中の案内をお願いしてもいいか?」
「それでは、せっかくですので、守様がはじめの一歩をお願いいたします」
アディリシアに催促をされた守は屋敷の扉を開ける
すると目に広がる景色は、宮殿のような煌びやかな雰囲気ではなく、どちらかといえばノスフェラトゥ家寄りといった感じの少し地味目な作りがしてあるのだった
「なんだか安心したよ…」
「守様ならきっとこういった雰囲気の方が良いと言うのに違いないと思いましたので…」
「…さすが永遠の契約を結んでいるだけはあるのじゃ」
「それに宮殿と同等の作りにしたら流石に父上の面目が立たないからな」
「どちらにしても面目なんてないようなものだけどね♪」
「アナト姉が言うと冗談に聞こえない…」
「この女はいつ見てもやばいのね…」
「なんてたってアナト姉には弱点という弱点がないからな」
「あら、人をそんな化け物みたいに言わないで。私にだって弱点の一つくらいあるわよ?」
「え、何それ気になる」
守だよと当人以外の全てが心の中で突っ込むも誰一人としてそれを声に出すものはいないのだった
その後、各フロア、部屋の案内されている最中、二階のとある部屋を案内されている時に事件は起こる
「お、この部屋いいな」
「あちゃ〜…お前なぁ…」
「絶対に!!」
「負けられません」
「戦いが」
「…こ、ここに(ボソッ」
「あるのじゃ!!」
「あれ?これなんて、デジャビュ?というか本当に仲良いなきみたち」
「そりゃあ、お前がこの部屋がいいなんて言い出せば、両隣の部屋の確保で戦争が起きるだろ」
「ちなみにニースは、使用人ですので一階の使用人室ですよ?」
「ま、まさかの勝負すらさせてもらえないなんて…」
「あ、そうか。今まで一緒の部屋で暮らしていたが、ここに住むのならニースに一室が与えられるわけだな」
「だ か ら、嫌だったのですよ!!くぅ〜…」
「さて…一人脱落は確定したようじゃが…」
「では、私は右隣の部屋を頂きますね」
「いやいや、ちょっと待つのじゃ」
「そうよ。なんであんたは平然と決めているわけ?」
「なんでと申されましても…。皆様、お一つ忘れているのではないでしょうか?」
「なんだっていうのよ?言っとくけどちょっとやそっとじゃ…」
「ここの屋敷の名義人は私だと言うことを」
「「あっ」」
アディリシアの一言が留めとなったのかアホな顔を晒しているジルとウンディーネがその場で固まる
その固まっている二人に追い打ちをかけるかのようにアナトが口を開く
「二人とも普段は頭が回るはずなのに、守が絡むと考えが至ってない時あるわよね♪」
「さ、さて…気を取り直して。左隣は譲らないわよ?」
「こっちの台詞なのじゃ」
「…ま、守さん。そ、その…安心できる方が近くにいないと(ボソッ」
「確かに人見知りの激しいノームのそばにいてあげることも契約の一つだったもんな。じゃあ左隣は…」
「ちょっとちょっとちょっと!!何抜け駆けしようとしているのよ!!あんた、守がいなくても私でも大丈夫だったじゃない」
「今一瞬勝利のニヤケが隠しきれてなかったのじゃ。いじいじしているだけかと思ったら腹黒いところまで持っておるなんて!!」
「ひ…人聞きの悪いことを言わないでください!!(ボソッ」
「こうなったら…左の部屋をかけた勝負よ!!」
「望むどころなのじゃ」
「ま…負けません!!(ボソッ」
「え〜…穏便に終わらないのかよ…」
「うふふ。面白くなってきたわね♪勝負内容は私に一任してちょうだい」
「「「任せる(のじゃ)(ます)」」」
「うわっ!!これ絶対俺が損するパターンだ」
「挑戦権すらないのでどうでもいいですよ〜だ」
「完全に拗ねちゃってたな…」
こうして守の左隣の部屋をかけたジル、ウンディーネ、ノームの女の戦いが今はじまろうとするのだった
冒頭ら辺のとおり、ロベルタはお説教を受けた関係で今回は出番なしです。次回には出します。
ジャンヌやエリカ、メイなどの今回に関わってない女性陣について疑問に思うかもしれませんが、それはおいおい回収していきます。
こちらを予約投稿する際に、誤字脱字の報告が!!大変助かりました。ありがとうございました。(どなたか表示はされないようですので、ここでお礼を)




