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第51話 とても愉悦でしたわ

大魔法剣士、吸血王女、吸血王女代理、四大精霊のうちの二人を前にしても臆することなく邪を纏い立つ少女に生唾を飲みながら守は問う


「…お前が裏で糸を引いていたのか?」


「うふふ…糸を引いているだなんて大層なものではありませんよ。ただ、そちらの子が使えそうでしたので、利用させてもらいました」


「守、気をつけて。この子私たちと同じ匂いがするわ」


「…とても強い気配がします(ボソッ」


「我らが揃っておってもこの余裕。只者じゃないのじゃ」


少女はいつ戦闘が起こっても良いように構えるウンディーネとノームを見ても平然とし、話を続ける


「英雄様。本日の私は、予定こそ狂いましたが、見ているだけの影。戦う気など毛頭ないので安心してください」


「ホロを利用して守さんに毒を盛ろうとしておいて、その言い分は如何なのでしょうか?」


「まぁ〜怒りで牙がむき出しになっていますわよ。利害が一致致しましたのでこの毒をその子に渡したにすぎません。尤も私は英雄様を殺す気などありませんが」


「殺す気がない?何が目的なんだ?」


「今はまだ判断している最中ですので、お答えできませんね。ただ、こうして姿をお見せしたことですし、これからは表立って行動させて頂きましょう」


「一体何を言ってるんだ…?」


「うふふ…一つだけ分かりやすくお教えして差し上げますね。私の当面の目的は大魔法剣士(あなた)です。ですので、また近々お会いすることでしょう。それでは本日はこの辺で…」


「待てっ!!」


守の引き止めの声が終わる頃には闇にその姿が消えていくのであった


「久々に背筋が凍るような気配だった。少女(あれ)は人ではないよな?」


「ええ。精霊や妖精といった類のものよ。それも四大精霊(わたしたち)クラスの。私とノームを見ても物怖じしなかったどころか顔色一つ変えなかったことを考えるとひょっとしたら私たちよりも強力な存在かもしれないわね」


「まさか四大精霊クラスのものがこの世にまだおったとは…数百年に生きておっても、この状況であんなに平然と構えている輩など初めて見たのじゃ」


「守さんが感じた違和感以外ですと誰も感知できていなかった訳ですからね…よほどの強者と考えて良さそうですね」


「俺が目的と言っていたが、何なんだ…?」


「さぁ〜ね。けれども一つはっきりしたことがあるんじゃない、ノーム?」


「…そうですね。守さんを常に守る役目ができました(ボソッ」


「それで、ホロ説明してくれるのですよね?」


先の件から怒りで牙をむき出したままのカリンが実行犯であるホロに怒りながら問い詰める


「お、お姉様がそこの英雄様と親しくしているのが許せなかったのデス…」


「レズの嫉妬は醜いものね」


「お前も守が絡むと嫉妬がひどいくせによく言うのじゃ」


「言ったわね、ロリ巨乳」


「話が進まんからやめなさい」


「守さんクラスの大魔法剣士だから事前に察知して防ぐことができたのです。最悪の場合、英雄を殺した件で人族以外の種族からも全面戦争を仕掛けられる。そんな未来になっていたかもしれないことをわかっているのですか?」


「浅慮でした…。申し訳ないデス」


「一族の代表として、何より姉の想い人にこのような仕打ちをしてしまったこと、本当に申し訳ございません」


「まぁまぁ、カリンちゃん。大ごとになったのは俺が少し乗っかった部分もあるんだし。これくらいで許してやってな」


「はぁ〜…相変わらずお優しいこと。いいですか、ホロ。守さんに免じて今回は許しますが、罰としてしばらくは雑用に戻しますからね」


「わかったのデス…」


守が許したこと、ホロの役職を雑用に下げたことでそれ以上のお咎めはなしとしてこの件は終わりになるのであった

集まった重鎮たちには全て余興だったと説明し、再び歓迎会へと戻っていく

せっかくだからとジルたちから離れ、自由行動を取っている守の元へダンディな男性が一人駆け寄り声を掛ける


「なかなか盛大な余興だったね、守くん」


「ヴラドさん!!」


守に寄ったのはヴラド=ノスフェラトゥという吸血族の重鎮の中でも戦争時代初期から聖騎士団に好意的に接しているジルやカリンに次ぐ権力者である


「ジャンヌくんとのことは我々も聞いているよ。とても残念なことであるが、申し訳ないことに我らのジル姫にも希望ができたことに少し感謝もしている」


「自分で蒔いた種だから強く言えないのですが、ジャンヌとの件ってそんなに広まっているんですね…」


「世界を救った英雄が吹っかけた喧嘩なのだから当たり前だろうに。もしこの先の未来で行動を起こした結果、人族の環境に居づらくなったのならば是非ウチに来るといい。ノスフェラトゥ家は君を歓迎するよ」


「とてもありがたい話です。そういってくれるお家がいっぱいあるのですから」


「既に声が多数かけられていたか。だが、候補として入れてくれるのならば、そんな名誉なこともないだろう。ところで守くんに見せたい物があってな…」


「見せたい物?一体なんでしょうか…?」


「うむ。実はつい先日、探索をしていた帰りによくわからない物を見つけてな。()()()()()()()()()()をしておってな。魔法具(マジックアイテム)の類ではないようなのだが、常に魔気を放っておるのでな…」


「魔気を…?とても気になる物ですが、今はどちらに?」


「我がお家で厳重に保管してある。この後見に来るかね?」


「行きたいのは山々なのですが、この後に探し物の手伝いがありまして…。その後に伺ってもよろしいでしょうか?」


「それであれば、我がノスフェラトゥ家も協力いたそう。使用人達に話をつけておく。それではまた後ほど」


ヴラドと別れた守は今度は入れ違いにやってきた赤いドレスの女性に声をかけられる


「先ほどの余興はとても愉悦でしたわ、守ちゃん」


「カーミラさん、ご機嫌麗しゅう」


女性はカーミラ=リャナンシーといい、吸血王女であるジルとその妹カリン以外の女性吸血鬼を束ねる重鎮である

かなり大人めいた女性で、ジルやカリンよりも長く生きている吸血鬼と言われている

普段は温厚な性格であるが、怒ると誰よりも狂人へと変化するため、絶対に怒らせない掟が裏で設定されているとかないとか


「吸血族相手にあんなに盛大に嘘でも血を流すなんて行為はよくないわよ?」


「今後の教訓として心に留めておきます。といっても吸血族の皆が俺を襲ってくることはないでしょうけど」


「襲ったところで返り討ちにされるでしょ?ところでアキレウスくんは元気にしているのかしら?」


「あいつはいつも元気ですよ。なんせ元気だけが取り柄の男ですから」


「また会いたいものね。なんだったら求婚してくれてもいいのに…」


「(カーミラさんも趣味が悪いなぁ〜…)ハハハ」


吸血族から基本的に好意的な扱いをされないアキレウスもこのカーミラだけはむしろ好意的である

それもその筈で、戦争時代力尽きそうになり、魔族に討たれかけたカーミラを直前で助けたのがアキレウスであり、それからカーミラはアキレウス一筋なのだ

しかし、女性から男性にアプローチはするものでないというカーミラのポリシーからいつかアキレウスから声をかけてくれないかと会う時はそれとなくアタックをしているのだった

ちなみにアキレウスがカリンにナンパした話を聞いた時は、お家が半壊するほど暴れまわっていたとかいないとか


「先ほどのヴラド公爵との話を少し聞いていたのですけど、何やら探し物があるとか?」


「ええ。今カリンちゃんが裏で情報を集めさせているようなので、それを元に動くことになっているのですが…」


「それでしたら、我がリャナンシー家も力を貸しましょう。代理の元で話を通せばいいのかしら?」


「ありがとうございます。おそらくそれで問題ないかと」


「では、行ってくるわ。また後で」


ノスフェラトゥ家とリャナンシー家の重鎮の中でも強力なお家の協力を約束でき、その後すぐにカリンの方から情報がやってくるのであった

冒頭での話ですが、ウンディーネが言った通り、不穏な影の正体は精霊や妖精の類になります。目的は守とだけ告げて去りましたが、去り際の言い方通り、今後のイベントで度々絡ませる予定です。


吸血族サイドの新キャラヴラドとカーミラの登場回です。両者共ジル、カリンに次ぐ実力と権力の持ち主で守たちに好意的な吸血鬼になります。これで吸血族サイドの名ありは概ね登場し、次回からウンディーネの目的サイドの話に移行いたします。少し重要な要素があったり、なかったりもします。

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