第34話 "永遠の繋がり"を意味するのです
所有者の契約の儀を終え、一日の終わりが近づいてきたこと、ヴェルヘルムに一言挨拶をと守も王座まで共にすることとし、アディリシアを宮殿まで送ることとする
契約の際は二人以外に誰もおらず、アディリシアにカッコつけた守であったが、宮殿までの道中に同じ指に嵌めている色違いの指輪に注目した人々の視線に手汗が止まらない
「(さっきはあんなにかっこつけたものもアディリシアの崩れることのない笑顔&露骨にアピールしている右手は俺の心臓を確実に抉ってきているぞ…)な、なぁ…嬉しいのはわかるのだが、街ではもう少しその指輪を隠さないか?」
「この国の王女様に誓うとおっしゃったあの言葉は嘘だったのです…か?」
「くっ…痛いところを…それも上目遣いで…少し意地悪になってないか?」
「守様、女の子という生き物はみんな意地悪なんですよ?それも意中のお方がいる人は尚更なんです」
「アディリシアまであいつらよりに回られると俺がもたない」
「フフフ…ご安心してください。意図的に困らせるのは今日だけです。明日からはこの国の姫として、学園では守様の学友としてのアディリシア=アストンに戻りますので」
「ただし、俺の所有物のという箔がつくんだろ?」
「私から世には広めません。守様をこれ以上困らせてしまってはいつポイされてしまうかわかりませんので」
「(この状況が既に世に広まっているんですが…)やっぱり今日は意地悪なようだな」
少し小悪魔なアディリシアと同じようなやり取りを繰り返しながら宮殿へたどり着く
宮中では、街の人々以上に二人のことを知る人間しかいないため、雰囲気の違うアディリシアにひそひそ話が絶えることがなかった
その中でも今朝門番を勤めていた騎士は指輪をつけているアディリシアを見て、小声で「良かったですね…姫様」と涙ながらに呟いていた
「おぉ!!二人とも戻ったか。今日の感想を聞きたくてウズウズしてたぞ」
「アディリシアは満足したようなので、見送りがてらヴェルヘルムさんに挨拶に伺いました」
「ただいまもどりましたお父様。本日はとても有意義な時を過ごせました」
「そうかそうか…それはよかった。何やらとても嬉しそうにしておるが、どうしたのじゃ?」
終始笑顔を崩さなかったアディリシアを隣で見ていた守は王座に入る前に覚悟こそは決めていたものも、逃げ出すこともできないプレッシャーに思わず生唾を飲み込む
そんな緊張しきっている守とは相まって嬉しさで隣が見えていないアディリシアは指輪をヴェルヘルムに見せるべく右手を掲げる
「お父様!!こちらの指をご覧ください」
「(いきなり物から見せるのですかっ!?)」
「ほほぅ。とうとうやったのじゃな。数年越しの思いが叶ったのじゃ、良かったじゃのぅ」
「あ、あれ〜?思っていたのと何か違う。ヴェルヘルムさん、いいんですか?」
「守くんも同じ指にリングを嵌めておるのじゃ。契りを結んだんじゃろ?」
「この魔法具をご存知なのですか?」
「魔法具なのか、その指輪は!!これはめでたいのぅ」
「…どうゆうことだ、アディリシア?」
「この国では左薬指のリングは"婚約"を意味するのですが、右の人差し指のリングは"永遠の繋がり"を意味するのです。普通の指輪と違い、魔法具の指輪を魔法力で高められますので効力がそれだけ深いということです」
「…やられたぜ。おかしな場所だと思っていたが、日本基準で考えていた。この国の異性関連の風習は全くわからん」
「そのおかげでこうしてすんなり事が運べました」
「いいんですかヴェルヘルムさん?アストン皇国の王女が、この国出身ですらない異世界人と一生ものの契約したんですよ?」
「その異世界人とやらが得体の知れぬ者じゃったら国家権力を駆使して排除も考えるのじゃが、それが他でもない守くんではないじゃないか。何の問題があるのじゃ?」
「はぁ〜…ヴェルヘルムさんまでこうじゃもう何も言えないですよ」
「それにじゃな。アディリシアは守くんに伏せていたようじゃが…アディリシアにはじゃな、ここ数年お見合いの話が多数来ておってのう。本人は話が来る度に自分は大魔法剣士様の所有物ですのでと断っておったのじゃが、そろそろその言い分が限界だったのじゃ。そもそも貴族の間では大魔法剣士様は勇者様とできていると話が広まっておったし、最近その正体が認知されたことで守くんとアディリシアを監視している連中は所有物ということ自体に疑問を抱いておる。今日こうして形となったことで今後見合いの話は来なくなるじゃろうよ」
「アディリシアと結ばれれば国の重鎮になりますもんね。そりゃあ俺との話が真ではなければ、貴族連中もぐいぐい来るでしょうね」
「ま、その重鎮にお前が来て欲しいとアストン家一同は常々願っていたわけだがな」
そう言いながら王座にアキレウスが今までの話を聞いていたのか、ニヤニヤしながら入ってくる
入ってくるなり、一見魔術書と思えるような分厚い本を守に渡し、その中を見るよう催促する
「これは?」
「アディリシアの元に来ていた今までのお見合いのリストだ」
「いくらなんでも分厚すぎないか?この国にはこんなに貴族がいたっけか?」
「粘着しているお家もあれば、一家につき数人というパターンもあったからな。ま、そのリストも今日で必要なくなるわけだが。守に楯突いてハワード家のように家ごと潰されたらお終いだからな」
「それにしてもだいぶ大事になってきたな…」
「お前としては、貴族なんかよりも別の方面が怖いしな。明日からのジャンヌやメイたちのリアクションが楽しみだ」
「他人事だと思いやがって…アナト姉にもいじられるぞこれ」
「まぁ〜そう言うなって。俺もお前ならって昔から思っていたわけだしな戦友」
「学園に入ってから正体はバレるわ、一国の姫の所有者になるわ、まだ半年も経ってないんだけどな…」
「それはお前、ジルが言ってただろ?守には騒乱という言葉がプレゼント付きで送られてくるような体質だってな」
「ま、この世界に召喚されている段階からそれは否定できないしな。今回のことが何よりもアディリシアであったことに良かったと思っておくよ」
ヴェルヘルムへの報告の件についてはこれでと一息つきたい守は、先日自身が提案したMVP獲得の権利で保留とされていた件についての進捗を尋ねることとする
「ヴェルヘルムさん、先日尋ねました件についてはどうでしょうか?」
「戦死者の墓参りの件についての問題はアナトくんをつければよいと許可がおりた。しかし、向こう側はあの件でやはり守くんを歓迎できないとのことなのじゃが…」
「そこはお互い様なので大丈夫です。許可をだしただけてもだいぶ譲歩したのでしょう。何よりアナト姉がいれば向こうも下手なことはできない筈でしょうし」
「アナトだけでなくアディリシアの確かな加護までついたからな。そういう意味では無敵の存在だよお前は」
「ハハハ…確かにそうだな」
「もう片方はもう少し待ってくれないじゃろうか?」
「時間はいくらでもありますから、大丈夫ですよ」
「それでは、戦死者の墓参りの方は確実な日程を割れるようにしておく。アディリシアを通して守くんには連絡をいれるように致す」
「ありがとうございます」
アディリシア、アキレウス、ヴェルヘルムの三人と別れた守は王宮を後にし、寮へ戻っていく
翌日以降のジャンヌ、メイ、アナトの対応について頭を回していたが、自室へ入るや否や守の右人差し指に嵌っている指輪を見て発狂したニースに朝まで問い詰められるのだった
MVPアディリシア編がこれでおしまいとなり、MVP権利関連の話も残り三パートとなりました。残りの順番としてはエリカ、ジル、守の順で書いていくつもりでいます。なお、ニースの過去話を間に挟んだように時系列関連のために途中で過去話を入れるとおもいます。




