第31話 あの休憩所でしっぽりと
自身らの旅を題材とした劇を見て、色々な感情を抱いた三人はその足でジルのプランニング地へ向かおうとするのだった
「…でジルさんよぉ?どこに向かおうっていうんだ?」
「ふふふ…よく聞いたのじゃ。そろそろ夜も更けてきたのでな、やはりここはあの休憩所でしっぽりと…」
「アホかっ!?ジャンヌと三人で事を構える気かよ」
「じょ、冗談なのじゃ。さすがに初めては二人っきりが良いのでな…」
「だ、だよね〜。さすがに私も初めては二人だけがいいなぁ。も、もちろん相手は守だよ?」
「いや、そこじゃないだろ…。というか、ジル、その歳で初めてって…」
「う、うるさいのじゃ!!我は誰にでも気を許すような野良吸血鬼じゃないのでな。守以外の者に純血を捧げる気は毛頭ないのじゃ」
「嬉しいのやら、嬉しくないのやら…。それで本当はどこに行くんだ?」
「巷で噂のカースミュージアムとやらに行こうと思ってのう。なんでも守の世界のお化け屋敷?とやらがモチーフになっているのじゃろ?」
「あ〜…以前アキレウスに常時公開できる愉快な施設はないのかとせがまれた時に、出した案の中にそんなのもあったな」
「お化けってなんなの?」
「この世界でいうと魔族の中にアンデットがいただろ?あれが近いんじゃないかな」
「ひぃっ!?私アンデットが唯一苦手なんだよね…。ジ、ジル別のところにしない?」
「勇者のくせに情けないのじゃ。ジャンヌの行きたいところに行って我の行きたいところは変えろというのは横暴なのじゃ。暗い世界で守といられる幸せを譲歩するわけにはいかんのじゃ」
「ま、案を出した身としても気になると言えば気になるし、行こうぜカースミュージアム」
「こういう時の守は好きじゃないです〜」
ビクビク怯えるジャンヌをよそ目に守とジルはワクワクしながらカースミュージアムへ足を進める
一方、その様子を離れた陰で聞いていたあの二人はというと
「フフフ〜いいことを聞きました。守様考案の施設に向かうこと。そしてあの泥棒猫がアンデットが苦手だということ。こんなにも闇魔法を扱えるお家に生まれたことを喜ばしいと思った日はありません。すぐに行きますよアイシェ」
「…お嬢様の日々のストーキングスキルの向上には脱帽ばかりです」
タイム・プレイの時の失態はおかさまいと早々にカースミュージアムへ向かう
ジャンヌが鈍行のために先回りに成功した二人は責任者に話をつけるのであった
「おや?ファントム家の方々ではございませんか。今日は英雄様達がご利用されるため、ご利用は遠慮して頂きたいのですが…」
「今日来たのは見学したいからではありません。このカースミュージアムにこの闇魔法使いのメイ=ファントムを使ってみませんか?」
「大変魅力的なお話ですが…雇うほどの資金がですね…」
「今回に限りですので、お金は入りません。この世界を平和にしてくださった皆様(守様)に少しでも楽しんでいただきたいと、微力ながら私の得意な分野で貢献させていただきたと思っているのです」
「さすが三大貴族筆頭のお家柄ですね!!それではもうそろそろ皆様がおいでになると思いますので、少し急ぎ目でよろしくお願いいたします」
「(フフフ…許可が下りたらこっちのものです)」
スタッフ用の館の中へ案内される二人はすぐに妨害作戦の準備に入るのだった
そして、それと入れ違いに守達三人はカースミュージアムの入り口へとたどり着く
「ここがその場所か。漂う雰囲気が懐かしい感じもするな」
「うむ。ワクワクしてきたのじゃ」
「や、やっぱりやめようよ〜」
「怖いのなら入らなくてもいいぞ」
「その分守とイチャイチャさせてもらうから、ジャンヌは待機していてもいいのじゃ」
「それだけは絶対ダメです!こ、怖いけどがんばるもん」
「お待ちしておりました皆様方!アキレウス王子から聞いております。この館を考案されたのは他でもない守様とか。お陰様で大変盛況しております」
「考案とかそんな仰々しいものではありませんよ。俺の世界にあった人気スポットを以前あいつに話しただけですよ」
「その人気スポットと対比して頂き、感想も伺いたいものです。ではではどうぞどうぞ」
案内された三人はスタッフの説明を受け、小さな光を手に翳しながらルートを進んでいく
中には無数の手が出てくる仕掛けや怪人や化け物に扮した人が追いかけてくるなど概ね守がアキレウスに話していたような内容であった
怖がりなジャンヌは涙目になり、叫びながら本気で破壊活動を行おうとするもその度に守とジルに止められることとなる
「作り物なんだから、本気で壊しに行くなよ…」
「だって怖いんだもん。レヴィを構えてないと粗相をしちゃいそう」
「子供じゃあるまい…うん?守にジャンヌよ。どうやらここからは愛剣を握っていた方がいいようじゃ」
「仕掛けや人が扮している者じゃない。雰囲気が変わったな。何が来るっ!?」
「ごくりっ」
軽い臨戦態勢に入る三人の周囲からゾンビのようなものが無造作に出てくる
そして、大量のそれは三人に向かい突撃し、それぞれが撃破していく
「二人とも大丈夫か!?」
「大したことはないが、なんなんじゃこいつらは!!」
「斬っても斬っても暗闇に消えていくよ。まさか魔族ってわけじゃないと思うけど…」
「まだまだ増えてきてるからな。油断だけはするなよ」
「フフフ…今のようですねっ」
「うん!?」
「なっ!?」
「これはっ!?」
三人が分断したその瞬間にゾンビのようなものたちは一斉に守へと変化する
暗闇の中、大量の守の発生に三人の手は止まるのだった
「おい!メイだろ。出てこい」
「さすが守様です。これが私の仕業だって即座に見抜いてくださるなんて、日々の求愛の賜物です」
「…皆様、お邪魔いたします」
「いや、つい最近体育祭で似たようなことしてたじゃねぇか」
「それより何故お主がここにいるのじゃ。国王が邪魔者を排除してくれるはずじゃ」
「私の守様愛はたとえどんな障害があろうとも諦めることはありません。タイム・プレイでの邪魔は失敗に終わりましたが、作戦を変えたらこの通りです」
「暗いから識別が難しいだけ。それならこの空間を明るくすればいいんだよ!!」
言い放つジャンヌは上空に光魔法を放つ、すると部屋は明るくなるが、部屋中にミラーが置かれており、反射から視認が困難になるのだった
「部屋を明るくして、私の守様'sを排除しようなんてものは想定済みです。あなた達の愛が本物であるならば、本物の守様を当ててみるがいいです」
「ぐぬぬ…これは少し面倒なのじゃ」
「愛の試練ってことだね。ホラーよりマシだけど」
「盛り上がっているところ悪いが、ジャンヌやジルが消さないなら、ようは本物が全部倒せばいいんだろ?」
困惑し不動の二人をよそに言い出す守は自身の偽物を次々と斬り消していく
「えっ!私の守様'sが〜…」
「いや、何よりコピー元の俺が嫌なわけだし」
「辛辣ですけど、そんな辛辣な守様もやっぱり好きです〜」
「み、皆さん、ここにおられましたか…って館内が滅茶苦茶だっ!?」
「「「こいつがやりました」」」
「息ぴったりっ!?」
「…お嬢様が大変申し訳ございません」
帰ってくるのが遅いと心配したスタッフが現場に駆けつけると自身たちの知ってる光景との違いに唖然とし、守達三人はすぐさまメイを指し、声を揃えて元凶だと言うのだった
その後カースミュージアム内を勝手にいじったメイは弄った部分の賠償を支払い、アイシェと共に後日ヴェルヘルムにより永久出禁となるのだった
なお、カースミュージアムは守が考案したということで集客は元よりあったが、三人が実際に訪れたことにより箔がつき、以前よりも一層人気スポットとなるのであった
ジャンヌ&ジルMVP編の後編でした。ジル、エリカ、アディリシア単体の話もその内に入れていきます。守の部分についてはもう少し三人が終わったあたりに書く予定です。
以前に心眼の話があったと思いますが、ジャンヌが心眼を扱うのはアンデットをその目で見たくないなんてものも理由にあったりします。ただし精度は守の方が上だったりします。




