第30話 ジャンヌ、愛してるぞ
契約妖精'sのお披露目でのごたごたから数日が経過した学園の休日
体育祭でMVPを獲得した権利者の中で、二人三脚でMVPを獲得したジャンヌ&ジルの利用日が訪れる
「(フフフ…王宮側が全力でサポートするという話ですが、守様が異性とデートされるのをただただ見逃すわけには行きません。前回は負けましたが、今回は絶対に邪魔してやります)」
「…」
不敵に笑いながら、全力を持って邪魔することを画策するメイは従者のアイシェを連れ、誰にも見つからぬように行動を始めるのだった
一方、今回の主役である、ジャンヌとジルは"誰にも邪魔されない"デートが行えることに気分を良くしながら待ち合わせ場所へ向かう
「皇国が全力で邪魔者を阻止してくれるのは頼もしいよね〜」
「そうは言うても、我はそこまでこの皇国に詳しくないからの。嫌な予感はぷんぷんなのじゃ」
「大丈夫だって〜。あ、守が来たよっ!!こっち、こっち!!」
二人が来てから少し遅れて、今回望んだ景品が苦笑いしながら二人の元へやってくる
「そんなに大声で呼ぶなよ、恥ずかしい…」
「いいじゃん!!今回は誰にも邪魔されないんだからっ!!」
「我らの勝利の特権なのじゃ。他の連中には見せつけるだけ見せつけて、我らが守の女ということを知らしめるのじゃ」
このやり取りを見ていた者たちは「アレだけアピールしてるんだから…今更でしょ」と誰もが声を出すことはなく心の中でつっこむのだった
「それで?今日はどうすればいいんだ?俺はノープランだぞ?」
「フフフ〜!!ちゃんと考えてありますよっ!!」
「守は我らのプランに沿ってくれればいいのじゃ」
「そうか…。周りの注目がしんどいからちゃっちゃと連れてってくださいな」
「はいっ!はいっ!!最初はあの劇場に行きます」
「へぇ〜あの劇団の公演を見るのか。存在は知っていたけど、この世界に来てからお芝居なんて見たことないからちょっと楽しみだ。ところで演目は何なんだ?」
「それは着いてからの楽しみということじゃ」
守に腕組んだ二人が最初に連れて行くのは、ジャンヌの案のアストン皇国で唯一の劇団"タイム・プレイ"の公演を見に行くことである
「(ムムム…。さっそく守様と腕組みなんて羨ま…けしかりませんね。アイシェ)」
「…ここに」
「(声をいつもよりも控えなさい。タイム・プレイの公演を見に行くとあの泥棒勇者が言っていました。先回りします)」
「…承知いたしました」
劇場へ先回りするメイとアイシェは受付で入場希望をするも、拒否される
「ごめんなさいね。今日の公演は貸切になっているの」
「なぁんですってっ!!お金ならいくらでも出しますので、公演を見せてくださいっ!!」
「とても嬉しい提案なんですけど…ヴェルヘルム様からの禁則条が出されちゃいまして…これ破るとアストン皇国から追い出されてしまいます」
「ぐぬぬ…邪魔させないとはこういうことですか…!!国王からの書状がある以上、とりあえずここは引かざるおえないですね」
「…やけに素直に引きましたね、お嬢様」
「お芝居を見ている間はイチャイチャなんてできないでしょう。周辺でずっと張っていますよ、アイシェ」
「…お嬢様がよいのならばいいのですが…」
入場することしか考えておらず、演目を確認していなかったメイはこの数時間後にアイシェから演目の内容を聞かされ、後悔することとなる
一方守達は、守の感触を少しでも堪能したい二人により、ゆっくり劇場へ訪れる
「こんにちわ。ジャンヌ様、守様、ジル様ですね。本日は貸切になっています。ささ、どうぞ」
「あ、ちょっと演目を確認したいんですけど…まぁいいか」
受付の迅速な案内により、演目を確認できずに三人は舞台の特等席へ案内される
そして、すぐに団長が挨拶をするために、登壇するのだった
「本日はタイム・プレイの公演を見に来て頂きましてありがとうございます。我々の劇団のコンセプトはその時の流行りの話を演じることにあります。本日皆様方にお見せいたします"トラヴェリング・ブレイブ"は勇者ジャンヌ様が率いた聖騎士団の活躍を題材とした恋愛物語になります。是非楽しんでいってください」
団長の話が終わり、下がったタイミングで真顔の守の第一声「よし。帰ろう」と共に立ち上がるが、両サイドの全力の腕掴みにより叶わぬ願いとなるのだった
演目の内容は勇者・ジャンヌが大魔法剣士・聖守と出会う話から始まり、剣聖・アキレウスと大魔法師・アナトと共に聖騎士団を結成し、魔王討伐を果たすところで物語は終わる
この話の中でもジャンヌと守が恋仲になるところが特に大衆には人気で、ジャンヌは以前から自身がその場面を見たかったのと守に見せつけたい二つの思いがあり、この機会に劇場へ連れてきたのである
「…ジ、ジャンヌ、愛してるぞ」
「守っ!?ありがとう…。わ、私もね、初めてあった時からずっと守のこと気になっていたの」
「(ぶっ!?あの時の場面そのまんま再現かよっ!!)」
「(アハハ…ちょっとキョドッてるところも当時っぽいね)」
問題の場面に差し掛かると少し恥ずかしくて赤面しているジャンヌと恥ずかしいものから目を逸らそうと必死の守をジルは面白おかしく見ているのだった
そして、恋仲になったあとも二人の物語は続いて行き、いよいよ、物語は魔王討伐後の終盤に向かう
「…この世界に召喚されて長かったが、ようやく召喚された意味を果たせたな」
「ああ。長きに渡る魔族との抗争もこれで終わりだ。ジャンヌ、守、アナト、王子として感謝する」
「これからは平和な世の中なんだから二人は幸せにね。お姉さんとの約束よ♪」
「うん。幸せになろうね、守っ!!」
ジャンヌ役と守役の演者が抱き合い、残りの二人の団員がそれを見守りながら舞台は幕を閉じるのだった
再び幕が上がると各演者達が挨拶をし、団長が緊張しながらも当人達に感想を求める
「ご本人様たちに見せるのは大変緊張いたしましたが、どうでしたか?」
「少し脚色されてる部分はありましたが、概ねその通りでびっくりしました。よくあそこまで真似れましたね」
「少しでも聖騎士団の皆様の活躍を世に広めたくてですね、アナト様に細部に渡るお話を聞かせていただいたのです」
「やっぱり、あの人の仕業か。本人としては恥ずかしい意味でもうお腹いっぱいなんですが、語り継いでいく意味ではこの演目はよいのではないかと思います」
「守と私の仲のところも人気らしいからねっ♪私も満足だよ」
「ちょっと待つのじゃ!!聖騎士団と共に戦った我は一切出てこんかったのじゃ!!恋愛物語というのなら、我も出して三角関係を描くべきじゃないのか!!」
「え〜守と私の純愛だけでいいじゃんっ!!」
「アナト様にお話を尋ねた際に、吸血族は扱いがデリケートという話を伺いまして…私たちとしても吸血族が人間と共に戦った真実を語り継ぎたいのですが…」
「吸血王女の我が許すのじゃ。演目に加えておくのじゃ!!」
「それは我々としても嬉しい限りです。さっそくお話の中に入れさせていただきます」
「うむ。近々また見に来てやるから、その時までに頼むのじゃ」
「ありがとうございます」
劇場を後にした三人は、三者三様に思うところをうちに秘めていたが、三人共が概ね満足していた
しかし、守は語り継ぐものに恋愛物語が強めの部分に引っかかっていた
「恋愛物語が強くなければ俺としてはいい内容だったな」
「守、私と恋仲だったのが嫌だったの?」
「いやいや、あの時は確かにジャンヌが好きだったからそれを否定はしないが、俺たちの活躍を知ってもらう内容なら恋愛要素を強める必要はないって思っただけだ」
「物語なのじゃから多少の楽しみ要素があってもいいのじゃ。散っていった者達に配慮しているのであるならば、我達だけでも散っていった者達のことを留めておけば、少しは浮かばれよう」
「そうなのかもな。…さて、色々疲れたし、これで終わりか?」
「何を言ってるのじゃ。さっきはジャンヌのプランで次は我のプランなのじゃ」
「え〜まだあるのか…」
「むしろこれからなのじゃ!」
ジルに強く手を引かれる守は次の目的地へ足を進めさせられるのであった
ジャンヌ&ジルデート編前編でした。そこまで仰々しいものではないのですが、勇者、大魔法剣士以外の肩書きが初出しになります。
ところどころでメイやアイシェを出していますが、主に次回絡む予定です。




