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第19話 何もできないのではお話になりません

守が自クラスの女性陣を労っている間に運営は綱引きのMVP発表に移行しようとし、アキレウスが壇上に上がる


「え〜綱引きのMVPなんだが…クレームが殺到することを覚悟で言わせてもらう。今回は該当者なしだ!!」


「「え〜〜〜〜!!」」


「な、なんでなのじゃっ!!」


運営側(こちら)で審議をしたんだが、審議するほどの内容がなかったのが理由だ。というかジャンヌとジルがほぼ一瞬で勝負を終わらせるせいで想定していた時間が余っているくらいなんだよ。お前らもっと手加減しろよ!!」


「ぶ〜ぶ〜っ!!一生懸命片手(ハンデ)でこなしたのにそれはないよ!!」


「もうちょっと見ごたえのある戦いを期待してたのに、お前ら強すぎなんだよ!!」


その後もアキレウスとジャンヌ&ジルの口論が少しの間続くも、綱引きのMVPは該当者なしということで第三種目の幕が閉じるのであった


「先の種目を除いて現在のMVP獲得者は三名ということですわね」


「次の種目も守さんかジャンヌさんの二強のような気がしますが…」


「私は最初から魔法コンテスト一点狙いですので、参加しない次の種目は守様が獲ってくれた方がいいです」


「じゃあ、次の種目でMVP獲得したらメイのストーキング行動をヴェルヘルムさんに全力でやめさせるように願ってみようかな」


「そ、そんなことされましたら私の生きる意味がっ!?」


「生きがいにされちゃっていますね…。姫様も次の種目に参加するのですよね?」


「守様やジャンヌ様の足元にも及びませんが、私もいつまでも守られているだけの王女様じゃないってところをみなさまに見せたいと思います」


第四種目である風船割りは今までの競技と異なり、個人参加種目でトーナメント方式で行われる

参加者は目で見える範囲で体のどこかに小型の風船をつけ、模造刀を持ち競技に出る

対戦者の風船を割ることができれば勝利するといったシンプルな内容だ

俺とジャンヌ(ジルは剣を扱ったことがないので該当しない)に課せられたハンデは、利き手ではない方で紙の剣(ペーパーソード)を扱うことと体に五箇所の風船をつけ、一つでも割られたら負けという内容である

それでも勝利し続けるだろうというアキレウスの判断で、準決勝までのシード枠での参戦となる


「そろそろ第四種目の方に入りたいと思います。参加者は待機場所まで集まってください」


「今回は全員が敵だが、お互いの健闘を祈ろう」


「ま、私か守のどっちかが勝つだろうけどね」


「フフフ…我がハンデの該当なしということを忘れてもらっては困るのじゃ」


「「でも剣を扱かったことないじゃん」」


「うぅ…痛いところを突かれたのじゃ。じゃが、戦争を知らぬ学生程度には負けぬのじゃ」


雑談をしていると実況のアナウンスが入る

今回の解説は二人と今までにないパターンで行われる


「今回の解説は少し異例ですが、アキレウス王子とロベルタ様のお二方にお願いします」


「ま、剣を扱う種目ってなると俺ら二人が解説にならざる負えんよな」


「この種目はアキレウス王子考案という意味でも妥当だと言える」


「よろしくお願いいたします。今回はなんでも事前に告知していなかった特別ルールを設けていると伺ったのですが?」


「公表してたら守に何を言われるかわかったもんじゃないからな。発表しよう。ジャンヌか守が決勝を勝ってしまった場合の特別ルールとしてジャンヌの場合は俺と、守の場合はロベルタとエキシビジョンマッチを行うこととする」


「「はぁ〜〜〜!?」」


「久しぶりに守と剣を交えることができるかもしれないって訳か。これは楽しみだ」


「もちろん俺たちと戦う場合はハンデはなしでとなるが、負担がかかるだろうからな。エキシビジョンマッチに勝った場合は即MVPという条件付きだ」


「あいつ…話し合うのが面倒になっただけじゃないのか?」


「多分自分が考案した種目くらい参加したいからそれっぽい理由をつけてるだけなんだよ」


「相変わらず脳筋な男じゃな」


「情けないお兄様です…」


「そこっ!全部聞こえてるぞ!!ええーい、そうだよ。俺だって、俺だってな…体を動かしたいんだよ。一番勝ち上がりそうなジャンヌに俺自身をぶつけてるんだから必ず決勝を勝ち抜けよ」


「開き直りやがった。理由まで含めて最低だな」


「こんなお兄様で申し訳ございません…」


「ちょっと待ってもらおうアキレウス王子。弟子(うち)のだって凄い腕なんだ、このハンデ下なら守が勝ち上がるに決まっている。私だって久々に弟子と剣を交えたいのだぞ?」


「ロベルタさん…話をややこしくしないでくれ」


「え〜と…すいません。進まないのでそろそろ競技の方へ移りたいと思います。では第一対決から…」


解説が言い合っている間に勝手に進める実況により、試合が開始される

今回の参加者がシード枠含め二十二人と多く、また、戦場経験のない学生は模造刀とはいえ刀の扱いには長けていないために一試合におけるグダグダ感が会場の盛り上がりに欠けるのであった

対戦が進む中で守側の人物の中からジルがトップバッターで試合に挑み、持ち前のスピードを生かした打ち込みで対戦相手を瞬殺したことで少しは盛り上がりを見せる


「やるじゃん、ジル」


「そう簡単にやられるわけにはいかんのじゃ。今までの試合と実際にやってみて思ったのじゃが、刀を握ったことすらない学生はやはり隙だらけなのじゃ。これなら姫さんでも勝てると思うのじゃ」


「ありがとうございます、ジル様。精一杯頑張ります」


「アディリシア、お前もどちらかといえば学生よりだろ?無理だけはするなよ」


「私のために心配していただき、ありがとうございます。ですが、先に言わせていただいた通り、いつまでも守られているだけの王女じゃないところを証明いたします」


守に息込んだアディリシアは刀を取り、対戦場へ上がる

対戦相手は同じ学年の男子生徒と刀が扱えないもの同士なら少し不利な状況の筈だが…


「グヘヘ…。ぼ、ぼきの相手はお、王女さまか。グヘヘ…」


「よろしくお願いいたしますね」


「あの対戦相手…!モブのくせにすごいオーラだよっ!!」


「モブとかいってやるなよ…」


「はっきり言って気持ち悪いのじゃ」


「ひでぇ…」


「この対戦はアディリシア様が行われるようですが、アキレウス王子はどういう風に見ますか?」


「勝負は一瞬で終わるだろうな」


「どういう意味でしょうか?…って言ってる間に試合終了!?」


「なっ!?」「うそっ!?」「びっくりなのじゃ…」


アキレウスの言う通り試合は一瞬でアディリシアの勝利で終わるのだった


「アディリシアは守をこの世界に召喚したこと、その守に魔族との戦争をさせていることに常に負い目を感じ、皆の影に隠れてロベルタに指南を受けていたんだ」


「最初の頃はそれこそ一皇国の王女様だけあって言い方は悪いが、守よりも剣の才能はなかった。私も何度か辞めさせよとしたのだが、"守様は死地で頑張っていますから"と諦めずに腕を磨いていたのだ」


「アディリシア、お前…」


「守様、隠していて申し訳ありません。ですが、守様の物になろうとしているのに何もできないのではお話になりません。せめてその後ろを追いかけることだけはしたいと思いまして…」


「よく隠し通したものじゃ。怪我とかもあったじゃろうに」


「聖騎士団にはとても優秀な回復役(ヒーラー)がいらっしゃるではありませんか」


「だから遠征帰りの際に最初に会っていたのが守でもなくてアナトだったのか!!なるほどね」


「うん?ちょっと待て。特訓していたのなら"力"もついたんじゃないのか?さっきの綱引きは演技か何かか?」


「私が身につけたのは主に剣技の方になります。剣を扱う最低限の力は身につけたのですが、パワーという意味の力は身につきませんでした」


「それでもまさかの出来事だったよ。これは私たちも油断できないね」


「この種目は全力で獲りにいきますので、皆様にも負けませんよ?」


"アディリシアが剣を扱える"というまさかの伏兵によりグダグダ感が強かったこの種目も盛り上がりを見せようとしていくのであった


「ま、まさかの一行でセリフが終わりだったのだな…」


どの世界(さくひん)でもモブの扱いはこんなものである

ただ物ですと言い張るだけの王女ではなく影で努力するタイプと今回で判明したアディリシア。守に対する負い目が剣を始めた動機ですが、後を追いかける理由もどこかの話で触れたいと思います。

今回は剣の実力的な話がチラチラ出ていましたので、扱った者内での強さに触れますが、

ジャンヌ>ロベルタ≧守>>アキレウス>>>>アディリシア>ジル

といった感じになります。

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