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AnsweRer ~アンサラー~  作者: 著者不明
Answer-1 『ガーディアン』
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エピローグ

 

 宏治はやれやれと首を振ってため息を吐いた。


「一瞬の隙も与えてはいけないと分かっているつもりだったのだがな」


「そんな考えじゃ逆転されて当然だな。本当に脅威だと思ってたなら最初に捕まえた時点で殺しとくべきだった」


「私の負け……だな。撃て」


 宏治は眼を閉じた。


「なら遠慮なく。じゃあな、宏治」


 ドギャウン!

 一発の銃声。

 宏治の体がビクッと震える。

 だが、いつまで経ってもこない痛みを疑問に思ったのか宏治はゆっくりと眼を開けた。


「や~い! 引っかかった、引っかかった~!」


 俺は宏治を指差してカッカと笑う。

 宏治は俺の左手に持ったPCを見ると眼をぱちくりとさせた。

 俺がPCを操作するとPCから『ドギャウン!』と再び銃声がする。


「何してんのよ、アンタ! さっさとトドメを刺しなさいよ!」


「ガーディアンの言うとおりだ。今のうちに殺しておかなければ私はお前たちの脅威になるぞ」


「俺がお前を撃てるわけねーじゃん。

 それにこの銃、さっきので壊れちまったみたいだしな。やっぱハンドガンじゃダメだわ」


 言いながら俺はハンドガンを見下ろす。金属のトリガーが変な方向に曲がってしまっていて、トリガーを引けないような状態になってしまっていた。

 おそらく俺の早撃ちに耐えられなかったのだろう。


「はっはっは! まったく君ってやつは……。

 だがいつかそれが君の命とりになるぞ」


 忠告のつもりなのか、真面目な表情をする宏治。


「かもな。それじゃあ、俺は今からホテルでイチャつかないと――

 って、あああああ!? 試験勉強、結局できてねぇ!」


「いつまで言ってんのよ、アンタは」


 俺が肩を落としてとぼとぼと出口へ向かうと、エリもため息を吐いてついてくる。

 と、その時だ。


「樹」


 宏治に呼ばれ振り返る。


「持っていけ」


 宏治がひゅっと何かを投げた。

 それを俺は片手でキャッチし、確認する。

 それはデータチップだった。


「そこに“コード:A”の一部が入ってる。それを見ればお前の探している企業が何を“つくっている”のかが分かる。

 止めるんだ、絶対に」


 俺は少し驚いてしまいデータチップを眺めていたが、すぐにニヤリと笑った。


「ありがとな……相棒」


 俺のその言葉に宏治は眼を丸くして驚く。

 そして懐かしそうにフと顔を綻ばせるとザっと振り返り背中を見せた。


「“元”……な」


 青いローブを翻し、傷を負ったストレンジャーを引き連れて宏治は闇の中へ消えて行った。

 その青いローブの背中にはストレンジャーの雄雄しいエンブレムが刻まれているのだった。


 

 ◇◇◇


 


「あー! 朝日が眩しいー!」


 山のてっぺんから降り注ぐ光に樹は眼を細める。

 私たちは街へと戻ってきていた。

 朝の光を抱くように両手を広げている樹を背後からじっと見つめる。

 思い浮かぶのは一瞬でストレンジャーたちを無力化したあのクイックショット。

 あんな芸当、トップクラスのアンサラーでもできない。

 できるとすれば――

 私は聞いたことがあった。

 銃器類を思いのままに操る一人の男の話を。

 それは“Nobady Knows”に所属する一人の男。

 NK史上最悪の殺し屋。

 その男は銃の軌道の総てを知り尽くしているという。どんな狙いも外すことはない。その命中率もさることながら、彼の真骨頂はその早撃ちにあるという。

 信じられない話だが、その男はマガジンに詰められた弾全弾を瞬間で放つらしい。

 あまりにも早すぎてその銃声は一発に聞こえるのだとか。

 正直言って人間とは思えない。化け物だ。

 その男はNKでも尊敬と畏怖の念を込められてこう呼ばれているらしい――

 樹が立ち止まっている私に気付いて振り返る。

 朝の光を浴びて、私には彼の笑顔が輝いているように見えた。


「何してんだよ、早く帰ろうぜ」

 


 ――“エース”と。

 


 私は大きくかぶりを振った。

 …………。何考えてんだろ、私。こんなセクハラ男が……? まさかね……。

 そもそも“エース”は三年も前に死亡したという記録が残っているじゃないのよ。

 私は彼の後を追って歩き出した。


「あー、お腹減ったー。

 ねえ、樹。どうせなら朝ご飯食べていかない?」


 私のその言葉に樹は驚いた表情になる。


「なによ? 私があんたを誘うのがそんなにおかしい?」


「……いや」


 と微笑むと、樹は空手家のように両手をビュっとばってんにきった。


「ゴチになります!」


「誰が奢るって言ったのよ!」


「お金がないんです」


「はあ!? 前金でがっぽり貰ったはずでしょ!?」


「その金が入るはずだったキャッシュカード。この前、貧民街にいた可愛らしい女の子に渡しちゃった。てへっ☆」


 …………。バカだ。信じられないバカがここにいる。


「あんたって奴は……! だいたいあれだけの早撃ちができるなら最初から――」


 あーだ、こーだ。

 私は樹に文句をぶつけながら、朝の光に照らされた道路を二人して歩いて行くのだった。

 誰にも平等に降り注ぐ朝日の中を――


 

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