昨日の敵は今日の友
「あ」
入ってきたのは、山本夕那だった。
俺は、山本のことは好きになれない。
そう思っていたが、実際にまた会うと、そうでもなかった。
「お、おぉ。
久しぶりだなぁ」
気まずい感じなのに、山本に声を掛ける敦也。
「ぅん・・・・。
あのっ・・・柳瀬!」
「何?」
山本は、俺に向かって土下座をした。
「・・・・は?」
「えぇぇぇ?!
山本ぉ?!」
これには俺も敦也も驚いた。
「アタシ、あの時はホントに狂ってた」
頭を上げずに山本が言った。
「いろんな人から告白されて、調子に乗ってた。
そんな時・・・柳瀬、あんたのこと好きになったの」
俺と敦也は黙って聞いていた。
「どんなにチヤホヤされても、誰にも笑顔を向けなかった。
だからかな?
笑顔が見たいって思ってたの」
そうなのか?
俺は、敦也を見た。
でも敦也は、山本をじっと見ていた。
「だから、ずっと見てた。
それで、気づいたの。
泉川のこと、好きなんだろうなって」
気づかれてたのかよ。
「なんかよくわかんないけど・・・。
独占欲とか、嫉妬心っていうのかな?
そういうのがどんどんここに溜まってきたの」
山本は、頭の前に添えていた白い手を自分の胸に当てた。
「それで告白した。
でも振られた」
ごめん・・・。
「それで、おかしくなった。
人生初の告白で、振られるとは思ってなかったし。
OKもらえるって思ってた。
舞い上がってた。
それから・・・おかしくなった」
人生初告白だったのかよ・・・。
申し訳ない気持ちが込み上げてきた。
「担任に近づいて、泉川のこと聞き出した。
それから柳瀬達に声を掛けた。
藍川のことも・・・ごめん」
未だに一言もしゃべらない敦也。
「本当に・・・すみませんでした」
俺は、もう山本を怒ろう何て思わなかった。
「頭上げろよ」
「・・・」
反省の色しかない山本の瞳。
俺は、山本を立ち上がらせて、握手した。
「昨日の敵は、今日の友・・・だな」
芽衣。
俺は山本を許してはいけなかったのか?
許さなければ・・・
君は俺のそばを離れていかなかったのか?




