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三【イラ】

空を見上げると羽ばたく何かがネウラを鷲掴みにして強風と同じ方向に飛んでいった。

「リボルバーだ!リボルバーで届くか?」

俺はリボルバーを構え、発射した。

『バンッ』

流石に、リボルバーでは届かなかった。

それと、リボルバーの残弾数が四発になってしまった……弾薬の仕組みは知っているが、恐らく材料が揃わない。


呆然と立ち尽くす俺の背後で草を踏み潰す重い足音がした。

振り向くと、防護外套を着た男が立っていた。

「あのここら辺に大きなドラゴンみたいなの飛んできませんでした?」

男は外套を脱いで話した。金髪で、顔の整った青年だ。


話を聞くにこの男は、さっきの空飛ぶ化け物を追っているらしい。俺と状況が似てるちゃ似てる。だから一緒に化け物を倒しに行くことにした。


「あの化け物は東北の……山の影が見える方に飛んでいった」

俺は羅針盤を見ながら化け物の飛んでいった方向を伝えた。

「……そうか。明日行こう、今日は暗いから危険だ。おそらく君の仲間は明後日の飯になるだろう」

「そうか。ところでお前の名前は?」

「え?あぁ、イラだ。君と同じ探検家だ。

君は?」

「俺はレーズ」


その後、他愛のない話をし、就寝した。

焚き火の音が、良い子守唄となった。


翌朝。


鳥の囀りと共に目が覚めた。初めて、間近で見る朝日は凄まじいものだ。


「これが光合成かぁ」

心の中で呟いたつもりが、声に出てしまっていたらしい。

「基本、人間は光合成ができないぞ」


奥の方からイラが鍋を持ってやって来た。

「朝飯だ、これ食ったら行くぞ」

鍋の中には、青緑色の液体に、無駄に刻まれた謎肉が浮かんでいた。

「これは人の食う物なのか?色からして怪しいが……」

イラは何も言わずにボウルへよそい、俺へ渡して来た。


匂いは申し分ない。が、見た目があまりにも酷い。食欲がそそられない。

「いいから食えよ」

イラはなんの躊躇もなく、そのスープを口へ運んでいた。

「な、なあ……どんな味か教えてくれないか?」

「……まあ、スープって味だな。栄養はたっぷりだぞ。それに、生命力のツュスタ呪文を掛けたから、効果は抜群なはずだ!」

スープって味……わからん。それにツュスタ呪文とはなんだ?まあいい、食うか……これしかなさそうだし。

味は……青臭い。


「よっしゃ行くぞ!ドラゴンの元へ」

イラはあの怪物のことをドラゴンと呼んでいるが、本当にドラゴンなのだろうか……俺はあの時暗過ぎてよく見えなかった。

「あ、そういえばイラ。今朝言ってたツュスタ呪文ってなんなんだ?」

行き道は暇だし、少しでも話題を出さなければ。それと、この事は少し興味がある。


「ツュスタ?いいよ、説明する。

ツュスタは、状態って意味。何かしらの状態効果を付与できる。操作呪文の一種で、基礎中の基礎なんだけど……」

そうだ、イミテへくる探検家は、皆魔法訓練を受けているのか……

「あぁ、その、俺は少し違って……」

言い掛けたところで、どうやらドラゴンと言う化け物の場所へ到着してしまった。


「ほら、ここで合ってるだろう」

「多分、合ってる。」


山には人が作ったであろう道が二つに枝分かれしていた。

「この山の山頂にある小さな洞窟に居る」

「じゃあ、どっちに行けばいいの?」


少しの葛藤の末


「じゃあ俺は行き慣れた右に行くわ!」

イラが意気揚々と右のちょいとばかし荒れた道を進んだ。

俺は左の最近整備されたであろう道を進んだ。

「綺麗な道だな、地下洞付近のイミテはもう整備がされているのか……」


整備されていて歩き易いが、所々に棘が生えた植物がある。

妙な臭いもする。鼻にくる、強烈な臭い。嗅ぐと頭痛がする。毒だろうか。

だとしても、この毒の根源は何処に在るんだ。


特に何事もなく、山頂に到着した。


「お、この洞窟かな」

ひっそりと洞窟をチラッと見渡した。奥にはドラゴンが寝ていて、ネウラはその横で横たわっている。

ドラゴンというのは本当だったのか。少し疑っていたことに、申し訳なく感じた。

「さて、どう救出したらいいのか。普通にドラゴンを撃つべきなのか……?」


考えながら、右往左往していたら……


『バキッ』


小枝を踏んでしまった。

その音に反応して、ドラゴンの耳がピクリと、その後、ゆっくり瞳が開いた。

運悪く、ドラゴンの黄色い縦長の瞳孔と目が合ってしまった。


「やばいバレたぞこれ」

ドラゴンの咆哮が鳴り響き、洞窟の空気が震えた。

慌ててドラゴンの頭部をリボルバーで撃った。

『ボスッ』

あと二発……

サイレンサーが付いているにも関わらず、銃声が洞窟の壁に響いていつもの数倍うるさく聴こえた。


しかし、ドラゴンには傷ひとつなく、生き生きとしていた。

「うわマジか……」

ドラゴンの炎による攻撃が来た。咄嗟に横転し回避をするが、服の端が炎に触れ、焦げてしまった。

「アッツぃ!」

炎の先にあった鍾乳石がドロドロに溶けてた。すごい高温だ。

逃げ回りながら周囲を見渡すと、岩や骨、焼けた死骸。

そして天井には割れかけの巨大な鍾乳石。

「あれ落ちたら痛そうだなぁ」

リボルバーの照準をヒビの入った部分に合わせた。ニヤニヤが止まらない。


『ダァンッ』


『ピキ……ビキッ!』


鍾乳石の根元の亀裂が大きく広がった。

「よし、もう一発だ。って…」

ドラゴンが物凄い速度で突進してくる。

「危なッ!」

間一髪の所で回避ができた。

ドラゴンが後頭部を壁に打ちつけた。ドラゴンが怯むのと同時に、洞窟の壁が崩れた。

危うく死ぬところだった……

「やっぱり、後頭部が弱点だな」

改めて、最後の一発……さっきの鍾乳石へ

『ドゥンッ』


途轍もない轟音と共に、ついに巨大な鍾乳石が落下し、ドラゴンの頭部を直撃した。鈍い音が洞窟中で鳴り響いた。

「おお!当たったぞ!倒したのか?」


辺りを見渡してネウラを探した。

洞窟の端っこに、ドラゴンの風圧で飛ばされたネウラを見つけた。

「おーい、生きてるかー」

「んん、また食われちゃったよ……」

俺は、無意識に渋い顔でネウラを見つめていた。

「よく生きてるね……」

ネウラが元気そうで良かった。

ようやく肩の力が抜けた。


取り残した物はもうない。そして、洞窟を出た。

もう夕暮れ時……ドラゴンと対峙している間、体感では数分だったが……日が暮れるまで、時間が経っていたとは。

今日の夕焼けは、昨日より一段と綺麗だ。


『トン』


突然、足元の感触が消えた。風が体を持ち上げる感覚を感じた。

「……?」

視界がひっくり返った……声を出す余地もなく、思考が止まった。

不定期

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