第1話 言葉通りの意味ですよー
「聖女アルメナ!!!神力が減少した貴様に用はない!!!貴様との婚姻を破棄し、国を出て行ってもらおう!!!!!!
聖女デイジー!!鏡の加護などと言う何の役にも立たない力を持つ貴様もだ!!」
「加護も弱くなった聖女など不要でしょう?私の魔法がありますので、聖女の座はご安心を」
あらー。これはいけませんねー。
取りあえず、顔面蒼白のアルメナさんは抱きしめておきましょう。
よしよし、お姉さんに任せなさい。
そもそも、聖女一人に酷使させたのはそちらでしょうに。
国の瘴気問題を一人に任せたら過労で死にますって。
神力減少を理由に神官たち全員で聖女を酷使するとか、終わっていますねぇ。
「聖女気取りのゴシップ屋!!平民風情の貴様も早く国を出ていけ!!王命だ!!」
いや、貴方王太子でしょう?
いつから王命執行できるようになったんでしょう。
その国王陛下は魔障痕の傷で療養中なんですよねー。
どもっ、新聞記者兼聖女のデイジーです。
鏡の加護の聖女でして。
本来は行った場所を水鏡などの反射物を介して、遠くに居てもその場所を見られる能力らしいんですけど。
魔道具を応用したり、人体の血や眼球なども能力の範囲内と解釈したら面白いくらい有用な力になりました。
ですが、王太子的には役に立たないそうですね。
ああ、聖女と言ってもこの大陸には聖女が500人以上いるんですけどねー。
はてさて、何で500人聖女に覚醒したかと言うと。
人類がやらかしにやらかした結果、世界が終りかけたからです。
世界終焉の戦いに備えて、それはもう、大勢。聖女に覚醒したんですよ。
世界終焉の辺は何とか乗り切りましたね。ちょっと蝉りましたけど。
魔王が召喚されるくらいの人類のやらかしは多岐です。魔女狩り、偽勇者、歪な運命の番、戦争等々。
正直、各国の中枢にお馬鹿さんが多いので、問題は山積みです。
真面目な王族貴族は暗殺されたり呪い殺されたりと散々ですし。
筆頭聖女その①曰く。お馬鹿さんが発生するたびに、『愚か者の国は要らない。滅べ』。
自領を公国にして滅ぼす気満々です。
その辺りは隣国の筆頭聖女その②が国を潰すのは待ったをかけていますね。
『現状で国を割れば民に混乱の余波が向く。俺や義兄上も自国の解体も視野に入れているが、魔王鎮圧してまだ数年。現状維持が最善だろう』
それでも、淡々と国に必要な人材は書き出していますけどね。隣国も戦後の交渉や人質生活でかなり疲弊しているので、どの段階で踏み切るか悩みに悩んでいるとか。
筆頭聖女その③曰く、『神の系統や王族が筆頭聖女を担っている時点で、聖女の在り様に偏りが生じている。お前らが天寿を全うするまでに改善なければ、悪意あるものを皆殺しにする』。
ブラックジョークなんでしょうけど本気でやりかねないので、その①その②は後進の聖女育成に力を入れています。
それもう、人類諸々やらかしていますから。
こう云った馬鹿王子や貴族がちょくちょく湧いています。
今回の発生源は、カロトロピス国。うちの王国より南の国ですね。
世界危機の際にそんなに被害がないとはいえ、魔障の影響もあり聖女の加護は必要です。
そんな訳で、ここの聖女の支援に来ているんですけど…。
駄目ですね。これ。
アルメナさんは15歳の孤児と言う事も在って、神殿でかなり冷遇されていますね。
ついでに、物凄くこき使われる日々です。
それで、聖女の力を欲しがって婚約したヤルム王太子に、ボロクソ言われているんですよね。
聖女の癖に貧相だとか、手や肌が荒れているとかオシャレしていないとか。
何ですか?貧乳の平民聖女よりも、魔法の心得のあるボンキュッボンの貴族令嬢が良いんですか?寄付金多そうですものね。
知っていますよ?私の鏡の加護の能力で見聞きしていますから。
新聖女に取り立てた貴族令嬢のハーレム持ちたいんでしたっけ。
そんで、貴族の支援を受けてウハウハな生活を送る予定なんでしたっけ?
その新聖女ハーレムの件で、私にも言ってきましたし。
『金髪だから声を掛けてみれば、平民だと?
おい、貧乳。王族に相応しい聖女を連れてこい。貴様の国にいるだろう、お姫様が』って。
そのお姫様、とっくに既婚者なんですが。何なら、元聖女なのですが。
筆頭聖女その①に殺されますよ?
あの人、実弟の嫁…義妹さん可愛がっていますから。
聖女を娶って掌握しようとしたり、お見合いみたいに品定めしたり。
挙句に見目や出自でこき下ろす。
ほんっっっとうに、こういう案件多いですね。
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ここの神殿の神官たちもウムウム馬鹿王子に同意していますし、もういいでしょう。
「分かりました、出ていきます」
アルメナさんが身体を硬直させますが、大丈夫ですよー。
「その代わり、王太子殿下がご所望の『おひめさま』な聖女たちに引継ぎをしても良いですか?」
複数形のワードに王太子は前のめりです。
「何だと?それはいいっ!平民風情の最後の仕事としては充分な仕事だなっ。
姫君は私のハーレムに加わるといいッ」
王太子殿下は鼻息荒く言い放ちました。
隣にいる貴族令嬢たちも、まるで自分こそが次期聖女に内定したかのような得意満面の表情です。
その表情には『隣国の王女風情に負けるもんですか』とでも書いてありそうでした。
はい、言質取りました。
良いですか?私は『おひめさま』って言いましたからね。文字通りですから。
解釈違いとかは知りませんから。
その為に多数の国から厳選しましたからね。
「ありがとうございます。では早速ご紹介しますね」
私はにっこりと微笑むと、窓に手をかざしました。
「雄姫様方、全員集合―――――!!!!!!」
私の片目が金色に輝きます。
現在、私は死の聖女から付与された邪視の発動中です。
と、言っても攻撃の為ではありません。
死の聖女の『領域』と諸々の付与魔法の効果で、雄姫様方をご招待しました。
こればかりは、他の方の協力ありきです。私は生活魔法くらいしか使えないので。
ですが、うーん。
……まあ、何とかなるでしょう。
次の瞬間――
ズドンッ!!
天蓋の窓から召喚致しました、地響きと共に現れたのは、……ええと、確かに『姫』『王族』と呼ぶに相応しい威厳を誇る方々でした。
一人は月光のような銀髪を優雅に編み込んでいる方。もう一人は太陽の如き燃えるような赤毛を高く結い上げた方。
蒼い髪を持つ小柄ながら可憐な出で立ちの…方?
それは美しいドレスに身を包ん……ではいますが。
「四大筆頭聖女デイジーに召集されました、ヤルム王太子殿下のハーレムに入る事になった、イデア神道の『おひめさま』な聖女にございます(澄んだテノールの声)」
あ。私は筆頭聖女なんですよね。何故か他の聖女さんに多数決で選ばれたんですよ。
まあ、何時でも鏡の加護で救助要請聞けますし、私。
「ひぃっ!?」
「な、何じゃこりゃああぁぁぁ!?」
王太子殿下と神官たちの悲鳴がシンクロしました。
無理もありません。
ドレス越しにもわかるほどの……ええ、それはもう立派な筋肉の鎧を纏った……。
雄姫様達ですから。
いやー。500人の聖女ですから。結構な人数の男性もいるんですよ。
男性は聖女ではなく、聖人って呼ぶのが…まあ通例なんでしょうけど。
『名称は聖女で問題ない。忌まわしい負の歴史を忘れぬ教訓でもある』
『聖人にすると、他の聖女の呼称も種族ごとで変えないといけないしなあ。聖竜、聖獣、聖魔女、聖魔王…。ただでさえ人数多いし、下手に派閥を作るのも聖女に選定され不慣れな者達への重圧となって問題だろう』
『身体は男、心が女の聖女はどちらに区分する?
逆の者も然り。そういった自身の本質を隠している者もいるだろう、そのままで良い。
何より。
クソ聖女の愚行を私は忘れてはいない』
筆頭聖女の方々の方針で、男女問わず『聖女』って括りなんですよね。
なので、呼びました。
高貴な血筋の聖女。
雄姫様が良いと王太子殿下も言っていましたからねぇ。
ちゃーんと、言葉通りの雄姫様の登場に泣いて喜んでくれるなんて、召喚の甲斐がありますよ。




