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青春ギャラクティカ  作者: 灰色ぎつね
56/193

case.レイナ #2『白と黒のあいだに、熱』



白い雪。

吐く息が、風にちぎれて消える。

ゲレンデって、静かなのにうるさい。

音が少ないぶん、心の声が響く。


——ミナミが、こっちを見てた。

リフトの上、風に髪が揺れて。

金のピアスが陽を受けて光った瞬間、

あの人がちょっとだけ笑ったの、覚えてる。


「……落ちるよ、それ」

言おうとしたときには、もう遅かった。

ピアスは雪の上に落ちて、

細いチェーンが冷たく光った。


でも私は拾わなかった。

「ま、誰かが拾うっしょ」

そう言って滑り出した。

たぶん、拾うのは“あのバカ”だから。



夜。

ロッジでミナミがココアを飲んでた。

湯気の向こうで、指先を見つめてる。

「……一本、ないの」

って小さく言った。

それだけで、胸がキュッとなった。


「てかさ、ピアスなんてまた買えばいいじゃん」

「そういう問題じゃない。」

「うわ、出た。哲学ギャル。」

「……意味のあるモノって、失くしたときの静けさが違うの。」


その言葉が、雪より冷たくて、

でもなぜか暖かかった。



数日後。放課後の部室。

ユウが机の下から、あのピアスを見つけたって聞いた。

偶然なのか、運命なのか。

……たぶん、あの人なら、拾うと思ってた。


「雪の中で光ってたんで、ってさ」

カズが笑って話す。

私も笑ったけど、

(あー、やっぱりそうなるんだ)って思った。



放課後のギャル神社。

ミナミは珍しく口数が少なかった。

レイナ「ねぇ、それって……恋?」

ミナミ「……観測中。」

アイカ「データ異常発生中。」

レイナ「じゃ、発熱だね。」


三人の笑い声が雪に溶けた。

でもその笑いの奥、

誰も知らない“温度”がひとつ増えてた。



夜道。

白と黒の世界の中、

ミナミのピアスが月に光る。


私は空を見上げながら、

自分の指先を見た。

ほんの少し赤いのは、

寒さのせいか、熱のせいか。


——たぶん、どっちも。


【end:case.レイナ #2「白と黒のあいだに、熱」】


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