case.ミナミ #9『神隠しフィット:静寂のランウェイ』
午前十一時。
鳥居の朱が、冬の光で鈍く光っていた。
人混みのざわめき、屋台の匂い、賽銭の音。
そしてその中に——あのバカたちの声。
杏仁豆腐。
相変わらず、賑やかで、うるさくて、笑っていた。
……でも、なぜか見ちゃう。
レイナ「ねぇ、あの参道、映えすぎじゃね?」
アイカ「完全にランウェイだね」
ミナミ「……ふふ。なら歩いちゃおっか。初詣ランウェイ。」
足音が揃う。
朱の鳥居をくぐると、空気が変わった。
視線が集まるのがわかる。
でも、気持ちは不思議と静かだった。
「……今年も、ちゃんと熱く生きられますように。」
口の中で小さく願って、鈴を鳴らした。
その時だった。視界の端で——
ユウがこっちを見てた。
ほんの一瞬、ぶつかった視線。
(……やめて。見ないで。)
そう思ったのに、胸の奥が熱くなる。
⸻
数分後。
甘酒スタンドのあたりで、ざわめき。
ダイキの笑い声、タクミの叫び。
そして——ユウの姿が消えた。
レイナ「ちょ、待って!今なんか“ズボッ”って音しなかった!?」
ミナミ「……したね。」
アイカ「まさか……」
参道の脇。
人混みの下、細い側溝の中から、あの声がした。
「……ミラクルエンジェルフィットしてるぅぅぅぅ!!」
その瞬間、呼吸が止まって、
次の瞬間、笑いがこみあげてきた。
(……あー、もう、バカすぎ。)
なのに、なんで。
こんなに愛しいと思ってるんだろ。
⸻
救出作戦。
レイナとアイカが手を貸して、杏仁豆腐たちが引っ張る。
泥、笑い、混乱。
まるで神様がこの参道を笑わせたみたいだった。
ユウ「……寒い!痛い!でもちょっと包まれてる感じ!!」
ミナミ(吹き出しながら)「……ほんと、バカ。」
でも、目が離せなかった。
側溝から引き上げられるとき、
彼の笑顔は——本気で楽しそうだった。
何も考えてない、まっすぐな顔。
それを見たら、こっちまで暖かくなった。
⸻
帰り道。
鳥居の向こうで、みんながまだ騒いでいた。
「#初詣神隠し」「#青春ギャラクティカ」「#エンジェルフィット」
タグが生まれて、笑い声が残る。
アイカ「青春って、重力に逆らうバカのことだよね」
レイナ「ギャル神、今日も奇跡を見届けちゃったね〜!」
ミナミ「……うん。
ほんと、バカで。いい。」
冬の空に息が溶けていく。
神様も、たぶん笑ってた。
それなら、それでいい。
——奇跡なんて、きっと全部、笑いの中にある。
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【end:case.ミナミ #9『神隠しフィット:静寂のランウェイ』】




