お義兄様が助けに来てくれました
私は暇だった。
というか、いい加減に後ろ手に縛られるのが疲れてきた。
手が痛い。
いい加減に手を縛るのだけでも外してほしい。
というか、外したい。
でも外したら二度と結べないし……
捕らわれのお姫様も疲れるのだ。
ローレンツお義兄様も私を後ろ手に縛るなんてことをしてくれたことはあれ以来無かったし……
お義兄様も遅い……
私が思うに残り8日くらいかかるみたいだし。
それまで、耐えられるんだろうか?
私はだんだん心配になってきた。
でも、捕らわれの私、お姫様は王子様の助けをけなげに待つのだ。
悪逆非道の大司教に捕まった可憐な姫、エリーゼ姫、うーん、でも単に皇后の連れ子だし、無位無官、いや、どこかの伯爵位をくれるってお義父様は言っていたから、伯爵様を助けに来る?
でも、伯爵を王子様が助けに来るって、なんか変だよね。
まあ、無視しよう。
そうだ。異国の姫にしたらいいんだ。
サンタルの姫、いや、そこは子爵だった……それも変だし
新大陸の姫君にしよう。教会は新大陸の純粋な姫君を騙して奴隷として連れて来たって事にすればいいか……教会が騙して異国の姫を奴隷にするってさすがにそこまではしないか?
「エリーゼ」
いやいや、前世の歴史では教会は結構えげつない事を平気でしていたそうだし、日本でも騙して日本人を奴隷として海外に売りさばく片棒を担いでいたらしいし……現実に私もここに囚われているから、良いよね。
「エリーゼ」
そこに白馬の王子様が、いや待てよ、レッドは神馬で赤兎馬だから赤馬?の王子様、うーん、なんか今一つじゃない?
ダン
私は背中に衝撃を受けた。
思いっ切り背中を蹴り飛ばされたのだ。
「エリーゼ、いい加減にしな!」
見上げた先には怒髪天のセリーヌが仁王立ちしていた。
しまった。想像に夢中になってセリーヌが来たのを知らなかった。この様子じゃ何回か私に話しかけてきたらしい。
しかし、いきなり蹴り飛ばすことは無いだろうに。
背中も痛いし……
私は涙目になった。
「ほううう、これが、恐竜皇子が執着している娘か」
初めて見る緑髪の男が話しかけてきた。
「こんなガキの娘のどこがいいか判らないけれど、そうよ」
セリーヌがむかつく事を言ってくれた。
「ガキと言っても出るところは少しは出ているし、俺としてはこれくらいの女が好みなんだが」
厭らしい笑みを男がしてくれた。
ええええ! ひょっとしてこれは私の貞操の危機?
こんな時に囚われの姫様はどうするんだろう?
普通は白馬の王子様に助けを呼ぶのだ。
悲鳴を上げたら駆けつけてくれるはずだ。
でも、お義兄様はおそらく今は東方十か国にいるはずだ。
いくら急いでもあと8日はかかる。
としたらセッシー直伝の金なんちゃらつぶしか……
一度マルクスお義兄様がムカつくことを言ったから思いっきってやってみたのだ。
マルクスお義兄様は悶絶していた。
それ以来、私の頼みは尽く聞いてくれるようになったんだけど……
お義兄様がセッシーと婚約したのは私と違ってセッシーがお淑やかだからとかいうとんでもない理由だったけれど……金なんちゃら潰しはセッシー直伝の必殺技なんだけど……セッシーはどれだけマルクスお義兄様の前では猫被っているんだろう?
マルクスお義兄様からは「セッシーを見習ってエリーゼももっとお淑やかになれ」とか散々言われているんだけど……絶対に私の方がお淑やかだと思う。
バラしてお義兄様との婚約が破棄されたら兄弟の中で誰一人婚約者がいなくなる状態になるからばらさないけれど……
5人もいるのに、1人も婚約者がいない状態は流石にまずいだろう。まあ、私は連れ子だから関係ないと言えばそうだけど……
「おい、女聞いているのか!」
男が叫んできた。
いけない、また想像の世界に入るところだった。
「ふんっ、その馬鹿顔もいいぜ! 俺様は頭の悪い女も好みだ。ここで俺様がお前を抱いてやるぜ」
男はニヤけた顔をしてゆっくりと私に近づいて来たのだ。馬鹿とか、本当にムカつく。こうなればやってやるのみだ。
私は立ち上がろうとしたのだ。
「きゃっ」
でも、しばらく同じ姿勢だったからか足がしびれて、盛大に転けてしまった。
「ギャーーーー」
そして、私の頭がその変態男の股間に直撃したのだ。
必殺金なんちゃらつぶし頭突きになってしまった。
私は石頭なのだ。一度何かの拍子にローレンツお義兄様と頭をぶつけてしまい、私はびくともしなかったのに、お義兄様は脳震盪を起こしてしまったのだ。
男は泡吹いてぶっ倒れてしまった。
「エリーゼ、あなた何してくれるのよ」
セリーヌが私の胸ぐらを掴んで睨んでくれた。
その手を振り上げて叩こうとしてくれた時だ。
ドカーーーーーン
破壊音がして、天井が崩れてきた。
そして、そこには赤兎馬のレッドに乗った凛々しいお義兄様がいたのだ
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続きは今夜です。
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