【第3巻シーモア先行配信記念】お義兄様の婚約者選定に私は邪魔だと噂されてお義兄様から離れようとしたのに、お義兄様が戦場に行くと聞いて嫌だと泣きついて駄々をこねました
私が10歳の時だ。
その時は私は前世の記憶もなく、絶好調で怖い物知らずだった。
お母様がお義父様と結婚して5年経って、お義兄様が16歳、ローレンツお義兄様が14歳、マルクスお義兄様が13歳、弟のシスが4歳だった。
私は相変わらず、お義兄様大好きっ子だった。
でも、そんな時に私は侍女たちが立ち話しているのを聞いてしまったのだ。
「エリーゼ様にも困ったものね」
「いつもレオンハルト様を独占しようとして」
「そろそろレオンハルト様も婚約者を決めなければいけないのに」
「レオンハルト様にしても、エリーゼ様の子守よりは同じくらいの年の令嬢と仲良くなりたいと思われるのも無理ないわ」
「いつもエリーゼ様が一緒にいたら、婚約者の方も困ってしまうに違いないしね」
私は侍女たちの言葉に驚いて固まってしまった。
その日は丁度、お義兄様が学園祭の模擬店の買い出しに帝都の下町に行くとのことで、私も連れて行ってほしいとお願いして、断られたところだった。
そうか、お義兄様もそろそろ婚約者を選ばなければいけないんだ。
それには私みたいなこぶがついていてはいけないのだ。
いつもなら、右から左に流すのだが、その日は侍女たちの言葉がやけに胸にズキズキと響いた。
その日の夕食の時だった。
夕食の時の座席はお父様の横がお母様、その横がシスで、お父様の斜め向かいがマルクスお義兄様、ローレンツお義兄様、お義兄様、そして私という変則的な並びだった。
「おい、エリ、どうしたんだ? 全然食事が進んでいないじゃないか」
お義兄様が心配して聞いてきた。
「ん、なんでもない」
私は首を振った。
「本当だ。エリが肉を食べていない。これは明日、隕石が落ちてくるかもしれない」
素っ頓狂な声を上げてマルクスお義兄様が言ってくれるんだけど……
「どうしたの? エリ、何かあったの?」
お母様まで驚いて聞いてきた。
「ううん、なんでもない」
「いや、なんでもないわけないじゃないか。おやつでも自棄食いしたのか」
お義兄様がとても失礼なことを言ってくれるんだけど……
「私も悩むことくらいあるわよ」
私はむっとしてお義兄様を睨みつけると、
「おい、どう思う?」
「うーん、エリが肉を食べていないって余程のことだよ」
「やはり兄上においていかれたことが余程ショックなんじゃないか」
「いや、昨日、兄上が、エリに内緒で自分のアイスクリーム食べたのがバレたんじゃない」
最後の一言は聞き捨てならない言葉だった。
お義兄様はいつもアイスクリームは私にくれたのに……
「えっ、何なのそれ?」
「おい、マルクス、お前余計なことを」
「ふんっ、良いもん。お義兄様のケチ!」
私はそう言うと立ち上がったのだ。
「ごちそうさま」
そう言うと部屋に向かったのだ。
「えっ、エリ、まだデザートが来ていないぞ」
「おい、どうした?」
「エリがデザート食べないなんて天地異変の前触れに違いない」
皆が騒いでいるんだけど、私は無視して、自分の部屋に帰ったのだ。
私は完全なお義兄様っ子だったけれど、そろそろそれも止めないといけないんだ。
私は子供心にそう決心した。
私は無言で自分の部屋に来るとベッドに潜り込んだのだ。
いつもお義兄様には寝る前にご本を読んでもらっていたけれど、それも今日からやめようと私は思ったのだ。
でも、それは少し悲しかった。
「エリ、どうしたんだ?」
その日も当然の如くお義兄様はノックもせずに入ってきたのだ。
「お義兄様、ノックくらいして入ってきてよ」
私がムッとして言うと
「すまんすまん。いつものことで忘れてしまった」
「ふんっデリカシーがないんだから、そんなんだったら婚約者が出来てもすぐに愛想をつかされるわよ」
「えっ、何だその婚約者っていうのは?」
お義兄様が驚いて聞いてきた。
「そろそろ、お義兄様も婚約者を決めるんでしょ」
「んなわけ無いだろう。俺はやることがあるからな。婚約者を決めるのはそれが終わってからだ」
「えっ、でも侍女たちがそろそろ婚約者を決める時だって言っていたわ」
「そんな訳ないだろう。俺は心に決めているんだよ。東方10カ国を征伐するまでは婚約者は取らないとな」
お義兄様が驚きの事を言ってくれた。
「えっ、お義兄様、東方10カ国に攻め入るの?」
「そうだ。そして、エリの父の仇を取ってやるからな」
お義兄様はとても自信を持って言ってくれるんだけど、東方10カ国はお父様が戦死した相手国だ。
お父様は帝国最強だったのに、戦死してしまったのだ。
そんな危険な国とお義兄様が戦いに行くのは嫌だ。
「嫌、お義兄様、行かないで!」
私は叫んでいた。
「えっ、エリ、何言っているんだ?」
「私、お義兄様がお父様みたいに帰ってこなかったら嫌だ。だから、行かないでお義兄様」
私はお義兄様に必死にお願いしたのだった。
「いや、エリ……」
「イヤダイヤダ。絶対に嫌だ。お義兄様が戦場に行って帰ってこなかったら嫌だもの。だから絶対に行かないで」
私はお義兄様の胸に飛び込んで抱きついて泣き叫んだのだった。
お義兄様がお父様みたいに行ったきり帰ってこなかったら絶対に嫌だった。
結局、お義兄様と距離を置くというのはお義兄様の一言で吹っ飛んでしまった。
私は泣きつかれて眠ってしまうまで、お義兄様にしがみついて泣いていたのだった。
ここまで読んでいただいて有難うございました。
8年前のエリーゼとお義兄様の一コマでした
本日、10月24日木曜日の24時、明日25日金曜日の御前0時第3巻シーモア様にて先行配信します。
『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました』
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/3/
2万字の書き下ろしはエリーゼとお義兄様の学園祭の幽霊退治です。
シーモア特典SSは護衛騎士の独り言です。
とても面白いのでぜひともお読みください。
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