チエナ魔術師視点 連れ子を攫う準備が整いました
最近、急にチエナの秘密のアジトにガサ入れされることが増えてきたようだ。
王女の救出以来、本来治外法権だった大使館は帝国の騎士に占拠され、多くの大使館員が束縛された。
騎士達は必死にホンファ殿下を探していた。
でも、見つかるわけはないのだ。
殿下はとっくにチエナ国に帰っているのだから……
本当に馬鹿だ。
今も必死に帝都の中を探っているようだ。おかげで、俺たちの行動もなかなか思うようには動けなくなりつつあった。
チエナの上層部は協力者として、マブリー王国の王女であり今は連れ子の侍女を無理矢理させられているライーサ元王女に当たったみたいだが、うまく接触できなかったようだ。
代わりに今度は元王女に罪を着せて宮殿内を疑心暗鬼にさせたかったようだ。それもうまくいかなかったみたいだが。代わりにアジトのガサ入れが増えたのは、アプローチの仕方が雑だったからではないのか?
俺から言わせてもらえば上層部も馬鹿だ。
そもそも、人質で派遣されていた元王女に罪に着せたとて、やっぱりそうだったんだ、と思われて終わりではないか。
元々人質で送られてきた王女なんて、その国が反逆を起こせば殺されて当然だったのだ。
それが生かされているだけで温情だ。
その女を更に自分の侍女で使うなんて本当に連れ子はもの好きだ。
一部ではとても慈悲深いとか言われているみたいだが、俺から言わせれば本当のお人よしだ。
実の父を殺された元王女が毒を盛らないとも限らないではないか。
チエナの上層部もそこをついて元王女を引き込みたかったみたいだが、うまくいかなかったみたいだ。
でも、何度も言うようにその連れ子も変だ。
チエナの暗部の偽装工作で、チエナの暗部の手先だと疑いがかかった侍女を守るために、一緒にしょっ引かれるなんて気がおかしいんじゃないかと俺は疑ったくらいだ。
それだけ、自分の配下に愛情深いのか、それとも単なるもの好きなのか、馬鹿なのか。
俺は一番後者であって欲しい。
帝国の一部の者達の間では、次の皇太子の婚約者は恐竜皇子と違ってとても慈悲深いお方だと噂され始めたが、それを狙ってやったのだろか?
狙ってそれをやれたなら、凄い奴だ。帝国の今後は安泰だろう。
自分の好き勝手にやってこの成果が出たのならそれも凄い。何も考えずに欲望のまま動いて、それが自分の評判を高めるならば、聖なる心しか持たない聖女もかくやという存在だ。
まあ、この連れ子が皇太子の妻になる事はもうないが……
何しろ、俺に攫われてチエナに連れて行かれるのだ。
チエナに着けば、連れ子はホンファ殿下とズバン皇太后に碌な事はされないだろう。
二度と満足に太陽も見られないに違いない。
馬鹿を送り込むだけならば良心の呵責を感じずに済む。
チエナにつけば、帝国を脅す材料にされるだろう。
恐竜皇子を脅して好きに使えるようになるのだ。
これほどチエナに有利になることはないだろう。
恐竜皇子が我々共の命に従うわけは無いって?
チエナを舐めてもらってはいけない。
なにしろ歴史は長いのだ。当然血まみれの歴史が長く、その為の薬物についても研究は他国を凌駕していた。
他国では想像もつかない薬があるのだ。
薬漬けにされた戦士を俺も実際に見た事があった。
その男は死ぬまで暴れまくったのだ。
手足を切り取られても敵に噛みついて抵抗しようとしたその男は生命力まで高められていた。
恐竜皇子をそのようにして、ターゲットの国に送り込めば、その国はこの世から消滅するはずだ。
いざとなれば連れ子を餌に恐竜皇子を呼び出して、薬づけにすればいいだけの話だった。
恐竜皇子のいなくなった帝国など、百戦錬磨のチエナにとっては赤子の手をひねるようなものだ。
内から支配するのは容易かろう。
最悪、恐竜皇子に攻め込ませてもよい。
恐竜皇子も連れ子も皇帝も馬鹿な事をしたものだ。
恐竜皇子に気が合ったホンファ王女を娶るだけで良かったのに。
それをせずに何のメリットもない連れ子を娶るとは。
チエナの怒りに触れて無事だった国は今まで無いのだ。
俺は連れ子のサンタル王国時代の友人の従者に潜り込むのに成功した。
なあに、チエナの配下を使ってその女を襲わせて、俺が助けたのだ。
女を騙すのはいちころだった。
本当に容易い。
少しは身分をいろいろと調べられるかと思い準備までしたのに、全く調べられずに、従者になることに成功したのだ。
「これだけしか払えなくてごめんなさい」
確かに給与の額はとても少なかった。
「出世払いで結構です」
なあに、連れ子の前まで連れ行ってくれるだけで良いのだ。
そんな工作員に給与まで出すなんてこの女も本当に馬鹿だ。
後で帝国の騎士等に取り調べを受けられるんだろうなと思うと、この単純そうな令嬢が少し可哀そうにまでなってきた。
そして、今日、その女は俺を従者にして宮殿に連れて行ってくれるそうだ。
準備は万端整っていた。
後はいかにして連れ子に近付くかだけだ。
賽は投げられたのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
エリーゼの運命や如何に
明後日、8月26日についにこの話の電子書籍がコミックシーモア様よりリベラノベルで先行配信されます。
本文にエリーゼとお義兄様の小さい頃の大冒険の二万字超の新規書下ろし プラス シーモア特典として3千字超のssつけてます。
9月20日(金)kindleなど他書店でも配信予定です。
素晴らしい表紙絵はおだやか先生に描いて頂きました。
詳しくは下記。
是非とも読んで頂ければ幸いです。
毎日更新中の『傭兵バスターズ』も宜しく。
リンクはこれも下記にあります。








